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実家に帰省した場合(二十一)

 生田家恒例の麻雀大会は、いつも通り明義爺さんの一人勝ちで幕を閉じた。本人が『一子相伝』と言われる技を、長男の明雄は『興味無ぇ』と断り、次男の明人は『じゃぁ俺も』と、これまたいつも通り兄に続く。となると三男の明光の動向が注目される訳だが、こちらもいつも通り『何のこと?』と、話しすら聞いていないとは。

 かくして明義爺さんが編み出した『イカサマ技』は、生田家の伝統にはなりそうにない。しかし『賭け』は成立している。


「おい、シュークリームでも食おうや」「毎度あり。そろそろ在庫整理の時間だな」「明人、お茶入れろ」「へーい」「明雄はそうだなぁ。肩揉め」「何で俺が肩揉まないといけないんだよ」「ウルセェな。子供が親の肩揉んだって罪にはならねぇんだよ。負けたんだからサッサと揉め」「ちっ。ついでに首絞めちまうか」「!」「!」

 指示通り行動し始めた次男と三男だが、長男の聞き取り易い独り言を耳にして、ピタッと止まる。実に不穏だ。お盆にご先祖様を迎えたばかりなのに、『お帰りは長老とご一緒に』であろうか。


「んな爺さんと一緒に逝くかってんだっ! ざけんなっ!」

 明義爺さんの『怒りの沸点』が良く判らない。まるで自分が殺されるのは構わないが、明義爺さんの父、つまり三兄弟の爺さんと一緒に召されるのは嫌らしい。一応は自分の父親なのにも関わらず。


「だろうな。まっ今日だけは勘弁してやっか」「何だ今日だけって」

 意外にも真っ先に理解を示したのは明雄である。

「じゃぁ明日? は無理だな。来週?」「お前、来週また来んの?」

 明人は目先のことを優先し、スケジュール管理が出来ないらしい。

「今日なら法事も纏めて出来るのになぁ」「纏めるの好きだなオィ」

 兄弟が子供の頃、明輝爺さん(当時)と明義父さん(当時)の仲は悪かった。胡桃母さんと明光はシュッといなくなって目糞と鼻糞の付けあいに夢中で、明雄と明人はワクワクして覗いたものだ。


「明雄を殺して俺も死ぬ!」「オヤジ一人で死ねっ!」

 明雄の『教育方針について』と聞けば真剣な議論にも思えるが、実際は『孫におやつを食べさせ過ぎるな』の苦情が発端である。

『兄ちゃん、また殺されるの?』『オメェだって先週殺されただろ』

 とまぁ、散々殺すの一人で死ね等、言い争いは絶えなかった。


 去年は曾爺さんと曾婆さんと婆さんのついでに、爺さんの法事を済ませたばかりだ。あれ逆か? まぁ良いや。盛大にやったから。

 三十三回忌にもなれば、孫さえ『黒服を着た宴会』としか思ってないし、その子らともなれば尚更只の『宴会』である。

 なのでここは心機一転。法事らしく『新メンバー追加』と、明義爺さんに白羽の矢がつっと刺さるのは致し方なしか。と、その前に、葬式やら何やら面倒なことが色々と待っている。一応の躊躇い。

 それに思い起こせば、あれだけ喧嘩していた明義爺さんでさえ、親の葬式では泣いていたのを兄弟は目の当りにしているのだ。心の奥底では『長生きして下さい』と願っている。ねっ。ねっ。ねぇ?


『ガラガラッ!』「ただいまーっ!」「シュークリーム食べるぅ!」「こら、シュークリーム食べに来たみたいに言わないのっ!」「アハハ。今丁度持って来る所ぉ、お茶淹れてるからどうぞ」『ドタドタドタ』「明利明則明保、靴ちゃんと揃えてっ! 手を洗うっ!」

 勝利者の特権である『麻雀牌の後片付け』を終え、明義爺さんが時計を見た瞬間であった。玄関の方が急に慌ただしく。

 お早いお帰りで。どうせ『甘い物はお家に有るでしょ』とか言い包められて、何も買わずに帰って来たに違いない。

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