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実家に帰省した場合(十九)

「きったねぇ。そんなとこツモるかよぉ」「知らねぇよ。ツモったんだからしょうがねぇだろぉ」「全く。イカれた仕様だぜ」「別にイカれてるのは、今日に始まった訳じゃネェだろうよ」「んだんだ」

 気持ちは判らんでもない。明人が引き当てたのは『五枚目の北』だったからだ。場に一枚、ポンで三枚『北』が見えてたら、五枚目はゴミ同然であるからにして。『安牌』であるハズなのに。


『北は緑が一枚、赤二枚、黄色二枚』『握ってるのを含め六枚か』

 いや『同一牌は四枚だろう』という指摘は判る。『普通』ならそうだろう。しかし生田家恒例の麻雀大会は、既に普通ではない。

 皆中学に上がる頃には、ありとあらゆる『イカサマ』を駆使し、使わなければ馬鹿を見る生き方をして来た。おおよそ『まともな考え』など、死に直結するだけなのだ。敗者には『農作業』という苦役が待っている。農業に休みは無い。いつ如何なるときも『苦役はそこにある』と畏怖し、実際恐怖したものだ。

 特に田植えと稲刈り前に繰り出される、明義爺さんの『天和八連荘』に。これが『真の親のすることか』と思い知らされてきた。


『ちっ飯食う前に中と北入れ替えたのに、更に増えてんなぁ。誰だ』

 そこで僅かでも勝利へ近付く道筋として、潰れた雀荘から譲り受けた『複数の牌』を混ぜ合わせている。お陰で卓上はカラフルな装いで、如何にも『お祭り気分』に。どのケースから何を幾つ出すかは完全にランダムで、時に萬子に偏る場合もあるが、そこは『萬子祭り』として受け入れられている。『何が何牌あるのか』を覚えるのも列記とした勝負の内。『文句は勝ってから言え』なのだ。


「今夜は星が出てるなぁ」「月もなぁ」「花火やる位だからなぁ」

 親が流れて、明義爺さんが親になった瞬間、緊張が走る。

 天和に協力する者は居ないが、一人ポヤッとしているのは『接待麻雀の鬼』こと、三男の明光だ。因みにだが、サイコロも複数のケースからランダムで取り出している。しかし問題は、全ての麻雀セットが『実家預かり』になっていること。明義爺さんの目が光った。


「所で、芋の収穫なんだが、人手が足りなくてなぁ」「んなモン、幼稚園に行って、園児をだまくらかして連れて来いよ」「芋掘りどぞーってかぁ?」「そうだよ。どうせ出荷する奴じゃなかんべ?」「あぁ。ちっと今年は植え過ぎてしまってよぉ」「どうせ薫ちゃんに『芋掘りしたーい』とか言われたんだべぇ?」「そう。良く判ったな」「判るよぉ。あれだ。芋きんとんにして『芋シュー』にすれば良いんでね?」「芋シューかぁ」「美味いのかぁ?」「芋は美味いんだろうけど、シューの方がなぁ……」「お前が言うな。あれ? 何か上がってるわ」「嘘っ天和。明光ぅオメェの山、何か仕込んでたんじゃネェだろうな?」「まだ何もしてねぇってっ!」「ちっ」

 どういう理由にせよ、牌を倒して『上がり』を晒されたら、麻雀は勝ちである。そこで性格やら性根について何を思い、何を言われようとも、それは『敗者の戯言』であり、嘲笑の的である。

 生田家の面々は、その程度で精神を病むことはない。


「じゃぁ『レインボーの黄色』は、芋餡で良いのか?」「はぁ? 黄色は最初から『カスタード』で良いんじゃね?」「そうかぁ? この際、どっちが美味いか決めてからの方が」「だからお前がそれを言うな」「それがさぁ、毎日食ってると、飽きてくんのよ」

 自分で作っておいて『飽きる』とは、パティシエの風上にも置けん奴だ。因みにだが、明光の本職は『パン職人』である。

「今度養鶏場のトミ爺騙してさぁ、レインボー鶏卵作ってみろよ」「そうすっか。今度話してみるよ」「だったら『色』考えないとな」

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