実家に帰省した場合(十七)
「花火に行くからって、呼ばれたんでしょうよぉ」「誰にぃ」
言い返しながら明雄が辺りを見回す。犯人は明人、ではないらしい。妻の美晴は無視。だって表情が『あんた何言ってんの』だから。
弟達の前で『自分に都合の悪いことを認める』なんて、出来る訳がない。親だってそうして来たではないか。と、自分の親を見る。
「俺だ」「何だよ。今更自白したって、罪は軽くならねぇからな?」
親に対し何てことを言うのか。と、思う輩は何処にも居ない。
明人も明光も『そうだそうだ』と調子に乗ってるし、嫁連中も流石に慣れたもので『はいはい』で軽く流している。
さて、愛する夫と愛する我が子がいがみ合ったとき、胡桃婆さんはどちらの味方なのだろうか。見ればニコニコしっ放しではないか。
何せ、よちよち歩いて来た椛を、今受け止めた所なのだから。馬鹿な男共が騒ぎ立てた所で、そんなのはノイズにしかならぬ。
「あぁ椛ちゃんは良い子でちゅねぇ。あんな大人になっちゃいけませんよぉ」「ニャー」「ホラご一緒に。馬鹿共は滅んでしまえー」「にゃー」「はーい。滅んだぁ。良く出来ましたぁ」「ニャー」
抱えられて『ポカン顔』を見せられた椛である。胡桃婆さんが勝手に椛の腕を回すや否や、たちまち魔法に掛かったではないか。
大人達が『一斉に苦しむ姿』を見てキャッキャ笑っている。一歳にして『人の苦しむ様子を見て笑う』とは末恐ろしや。
まぁ、他の大人だって笑っているのだから、同罪か。
「お義父さん達が花火に行かないから」「お爺ちゃん行かないの?」「うん」「子供達の面倒を見に来てくれたんでしょうがぁ」「はぁ」
長男の嫁として、言わずにはいられなかったらしい。それを聞いた薫は上を見て明義爺さんに確認。返事を聞いて渋い顔になった。
しかしそれは加齢臭を嗅いだからで、別に不満だからではない。
だって明義爺さんと一緒に夜店を回ったとて、ちっとも面白くはないからだ。金魚すくいのポイは取られちゃうし、型抜きは直ぐ割っちゃうし、風船だって持たせてくれないし。
お爺ちゃん娘ではあるが、正直明恵『お姉ちゃん』と一緒に行った方が遥かに良いに決まっている。どうせ来るんだったら、去年みたいに『疲れたときに』で全然構わない。肩車してくれるから。
「悪影響の方が強いんじゃねぇの?」「悪い遊びを教えそうだなぁ」「おぉ、それは有り得るなぁ」「でしょぉ?」「悪い遊びって何?」「悪い遊びよ」「女遊びぃ?」「んな訳無いでしょっ!」『パシッ』
珍しく長男と次男の考えが一致したようだ。二人は長男の座を巡って争う『長男選挙』では互いに一歩も譲らないのだが、今は違う。
愛する家族のために、如何なる悪影響をも事前に察知し、排除するための努力を惜しまない。それが子を持つ親としての義務だと思っているからだ。ちょっと酒が入っているけれど。
因みにだが、三男の明光はニコニコ笑っているだけだ。明恵を見ながら『俺は何も言ってません』をアピールしながら。
「時間外保育料、覚悟しとけよぉ?」「あっ、すいませんでした」「よろしくお願いします」「知らねぇなぁ? 『一人頭』で請求すっからなぁ。ちびっ子も『込み』だぁ」「えぇ。電車はタダなのにぃ」「家は電車屋じゃねぇんだよっ! だったら線路引っ張って来なっ!」
何を言っても本職に一喝されて終わりである。昔からそう。
こうなることが判っているからこそ、明光は『黙って揉み手』だった訳だ。ニッコリ笑って『家は大丈夫ですよね?』をアピール。
「そっちはシュークリームで勘弁してやるよ。まぁまぁ腕上げたな」




