表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/25

実家に帰省した場合(六)

 子供のすることは大抵可愛い。薫がコタツに入らないで、明義爺さんに『早くしろ』と言っている。いや、口では何も言っていないが、コタツの天板を叩いている場所は『明義爺さんの指定席』だ。


「暑くないのかい?」「良いのっ! 早くっ!」「へいへい」

 ほらね? やっぱり。明義爺さんは嬉しいのを隠して指定席へ。

 薫の家にはコタツが無い。有るっちゃぁ有るが、『おじいちゃん家のコタツ』は掘り炬燵なのだ。珍しいったらありゃしない。


「おじいちゃんココッ」「どっこいしょぉ」

 しかしコタツの中に吸い込まれそうでちょっと怖い。

 だから明義爺さんの膝の上に陣取って、落ちないようにしているのだ。それに一緒にコタツに入っていると、背中まで暖かい。


「早くっ」「やっぱり暑いよぉ」「文句を言わないっ」「へいへい」

 明義爺さんが気持ちとは裏腹に、遠慮しようとするには訳がある。

 何故なら季節は『夏』であるからにして、本来なら掘り炬燵は押し入れのにでも放り込んで置くべきものだ。しかし何故か生田家では、布団だけが押し入れに放り込まれている。


「私が配ってあげるねっ!」「おぅぅ」

「ほら薫、ドンッて座ったら、おじいちゃん、壊れちゃうわよ?」

 何だか急に怒られて、薫は直ぐに明義爺さんの方を見た。


「大丈夫だよぉ」

 薫に向かってウインク。果たしてそれは『余裕余裕』なのか、それとも『痛みを堪えて』なのかは薫には判らない。

 しかし薫にとってそれは、『明確な答え』である。つまり『母親の指摘は誤りである』という結論だ。

 顎を上げて『壊れてないじゃん』をアピールだ。


「ほら、おじいちゃん『痛そう』にしてるじゃない」

 腕を振り笑いながら明義爺さんを指さす美雪に、薫は『また嘘を付いている』と思うのみ。しかしその後ろでは、明義爺さんが『物凄く痛そうな顔』をしていた。薫がパッと振り返る。


「大丈夫じゃん。笑ってるよっ!」

 見えた爺さんの顔は、打って変わって『満面の笑み』である。

 そして薫が美雪の方を向けば、再び『痛そうな顔』へと変わった。


「痛そうにしてるじゃない」

 再びの指摘に、薫は思いっきり反り返った。頭が後ろへ。

「おぅっ」

 胸を『ドン!』とされて、明義爺さんは驚く。今度は本当に痛かったらしい。しかし薫は涼しい顔をしている。


「おばあちゃん、お茶出してっ!」「はいはい。少々お待ちを」

 全てを無かったことにしている。これは良い子に育ちそうだ。

 いつも通りじゃれ合っている内に一同が席に付く。美雪は椛を抱えているので、お手伝いは胡桃婆さんが拒否。明人と一緒に座った。


「おじいちゃん、どれにするぅ?」

 早速蓋を開けてみるが、中身は全部シュークリームである。

「一番おっきい奴が良いなぁ」「んんー。どれぇ?」

「じゃぁ、コレ頂戴」「おじいちゃん、コレね」「ありがとっ」

 薫が配ったのは違う奴だ。一番大きいのは『薫用』らしい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ