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第一章 不帰ノ森-在るべき場所へ還れと少年は言う-
月の明るい夜。
鏡水市を囲む4つの森の一つ、不帰ノ森の入り口で1人の男が立っていた。着ているのは鏡水市の中心にある鏡水学園中等部の制服。彼は持っていた学生鞄を開け、不適な笑みを浮かべた。鞄に入っていたのは、大量のスナック菓子。コンビニで買ったなら入れてくれる筈のビニール袋に入っていないので盗んだ品物だろう。理由は、男子中学生にも分からなかった。理由はなかったように思う。衝動に駆られて、という感じだった。
男子中学生は鞄のチャックを閉め、立ち上がった。そして暗い森に背を向け、家路に付こうとした。
「全く…金曜のゆっくり休みたいんだよ」
突然の声に驚き、男子中学生は振り向く。そこにいたのは、長い金髪の少年。服装はやはり制服。違う所はそれが高等部の制服で左腕に腕章があるということ。腕章には『生徒会長』と分かりやすく書いてある。
「だ、誰だ!?」
男子中学生は怯えた光を瞳に映し、後ずさる。少年は溜め息をつき、言った。
「鏡水学園高等部生徒会長、水鏡蓮」




