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奥様はエリート文官【ネトコン12入賞・コミカライズ予定】  作者: 神田柊子
第二章 「奥様は……?」「エリート文官!」

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アニエスと管理官

 王都から呼び寄せた元部下のジル・パエリメは、五日後にペルトボール辺境伯領にやってきた。

 彼を待つ間に、アニエスは採用計画をまとめ、フィリップの了承をとって領内に募集をかけた。今は書類選考の段階だ。マルゴの後任は、コレットの希望で彼女が侍女と家政婦長を兼任することになった。主寝室の改装も同時進行で進んでいる。

 これで監査にも手を付けられる、と意気込んでアニエスはフィリップと一緒にジルを出迎えた。

「ジルさん。お久しぶりですね」

「アニエスさん、……じゃなくて、アニエス様? ……でもなくて、え? 奥様、ですか?」

 ジルはアニエスの後ろに立つフィリップの顔を見ながら、何度か呼び直した。

 アニエスは、

「どれでもいいですよ」

「いえ、奥様で。この度はお声がけいただきありがとうございます。お土産がいくつもありますので、先にお渡ししても?」

「ええ、もちろん。楽しみにしていました」

 そこでアニエスはフィリップを紹介する。

「ペルトボール辺境伯のフィリップ様です」

「アニエスの夫のフィリップだ」

「元王太子補佐官のジル・パエリメです。監査官の立場で赴任してきましたが、監査が終わったらそのまま管理官か家令になりたいと思っています」

「家令……?」

 フィリップが眉を寄せると、ジルは「これはまた……ゴシップ紙の記事がおおむね正しいんですね」と楽しそうに笑う。

「奥様はどうなんです?」

「それは長期的課題になっています」

 ジルのからかいに、アニエスはいつも以上に表情を消す。

 この案件は、しまったはずの箱からときどき飛び出してきてアニエスに羞恥や困惑をもたらす。

「今はもっと重要な案件があるので」

 そうして、応接室でアニエスはジルから『お土産』を受け取った。

「まず、オパール鉱山ですが、我がモデラート王国にないのはご存じの通りですが、北のアンダンテ王国にも南のアレグロ王国にもありませんでした」

「同盟国にはないのですね。東のラルゴ王国は?」

「そこまではわかりませんでした。ただ、輸出品にはないですし、ラルゴ産オパールなんて聞いたことがないので、おそらくはないと思います。どちらにしても、新しい鉱山からの盗掘って話なら、登録済みの鉱山の有無はあまり関係ないでしょうね」

「そうですね」

 それから、ジルは手紙を一通差し出した。

「アカデミーのホドセール教授からです」

「まあ、もうご連絡くださったの?」

「いや、僕と一緒にペルトボールに行くっておっしゃって王城に押しかけてきたんですよ。アカデミーを通じて正式に依頼した方が絶対にスムーズに事が運びますよって教授の助手と説得して、なんとか帰ってもらいましたが、大変でした」

「ああ……ごめんなさい。でも教授が乗り気だってことは地質学的に可能性があるのですね?」

 ジルは「詳細はそちらに」と手紙を指さした。

 ホドセール教授はアニエスが治水事業に関わったときに知り合った人で、五十代を越えて精力的にあちこちに調査に出かけている。もともとアレグロ王国の公爵家の出身で、生活に余裕があるので好きな趣味に全てを懸けることができたおかげで、気が付いたらこの分野の権威になっていた人だ。本人は今でも趣味のつもりでいる。

 手紙には、アニエスにはよくわからない専門用語が並ぶが、要するに『鉱山がある可能性は十分に考えられる』ということだった。調査依頼書も入っていた。

「第三騎士団についてくると書いてあります。こちらの返事を待つつもりはなさそうですわ」

 アニエスは教授の手紙をフィリップに渡した。

「騎士団側で調整してくれるなら、こちらは構わない」

「鉱山が見つかった場合、国への申請に地質調査は必要です。ホドセール教授が調査担当なら申請も早く通ると思います。ついでに教授から採掘のアドバイスもいただきましょう」

 第三騎士団は、一小隊三十人が来てくれるそうだ。目立たないように、商人に偽装したりして分かれて移動しており、一部はもう領内に入ったらしい。ジルの同行者や護衛のふりをしていたのも第三騎士団だった。

 山狩は三日後を予定している。

 アニエスは山狩が終わるまで屋敷の外には出るなと言われている。

 マルゴは盗掘団から切られたようで、酒場などに出向いても誰とも会えずにいたそうだ。しかし、街を歩くマルゴを見つけて避けた男がおり、その男を追ったところ別の男と接触。その男をさらに追ったところ、山中の洞窟に出入りしていることがわかった。石を運び出しているような様子はなかったが、そこが盗掘現場ではないかと思われる。その洞窟を発見した時点でマルゴは捕えた――ということだ。

 こちらに関してアニエスにできることはない。

 管理官も監視されていたが、普段通りの生活をしているらしい。マルゴや盗掘団と思しき男との接触もない。マルゴが辞めさせられたことすら知らなそうだ。

「宰相閣下経由で人事課から聞いた情報ですが、管理官のジャコブ・シェーシズは、四十二歳。もともとは王城の税務の部署にいました。それが四年前に領地管理官に異動、当時のペルトボール辺境伯の要請でこちらに赴任。――主任のポストを争って負けたのが、税務から異動した理由のようです」

「まあ……」

「もし懐柔したいなら、近づきますよ。僕も、筆頭補佐官のポスト争いに負けて管理官になったように見えますからね」

「確かにそうですね。その辺りは実際に会ってみて、ジルさんにお任せします」

 一通りの打ち合わせが終わり、アニエスはジルを伴って管理官のジャコブと会うことになった。

 フィリップや騎士も一緒に、離れに向かう。

 朝のうちに先ぶれは出しておいたけれど、こんなに大人数で来ると思っていなかったのか、ジャコブは面食らったようだった。

 離れは実用一辺倒で、装飾のない簡素な内装だった。

 一階に資料室や執務室、二階に寝室が三つ。厨房の他、使用人部屋もあるそうだが、必要なら自分で雇うようにギヨームに言われたそうで、ジャコブは食事は街で取り、自分が使う場所だけ自分で掃除しているそうだ。――洗濯していたら「私がやりましょうか」と声をかけられたのがマルゴとの出会いだと、あとから聞いた。

 ジャコブはアニエスたちを執務室に通した。

 ちらりと見ると、彼はマルゴと同じ色のコモンオパールのカフスボタンをつけていた。

「初めまして。辺境伯に嫁いできましたアニエスです」

「初めまして、辺境伯夫人。お噂はかねがね」

 ジャコブは硬い笑顔を無理やり浮かべたような顔をした。

 彼がペルトボールに異動した四年前、アニエスはすでに王太子補佐官だった。ポスト争いで異動したなら、卒業後すぐに王妃補佐官になってそのまま王太子補佐官になったアニエスは気に入らないだろう。

「私のことをご存じなら話が早いですわね。フィリップ様は騎士団長のお仕事でお忙しいため、今後、領地経営は私が担当することになります。管理官を引き続き置くかは検討中ですが、一通りの引き継ぎは済ませたいと思っています」

 隣に座ったフィリップがうなずく。

「はあ、そうでしょうねぇ……。辺境伯夫人は王太子筆頭補佐官だったんですから、そうなりますよね。私は今度はどこに異動になりますか?」

 ジャコブは疲れた顔でそう言った。

「それは未定です」

 無気力な様子が気になって、アニエスは先制をしかける。

「こちらに来る前、あなたが提出した収支報告書を拝見しました。過去三年の数字に大きな変動はありませんでしたね? おととしの冷夏はこちらには影響しませんでしたか? ペルトボールでは何か対策をしていたのでしょうか?」

「ああ……収支報告書……。きちんと届いていたのですね……」

「はい?」

「誰も何も言ってこないので、ペルトボールのことなど……私のことなど忘れられたのかと思っていました」

「は?」

 眉をひそめるアニエスに構わず、ジャコブは立ち上がると室内にある資料室への扉を開ける。

「収支報告書のもとになっている各村からの報告書がこちらにあります。いくらでもご覧になってください」

 ジャコブの暗い笑顔は「不正を見つけられるものなら見つけてみろ」という挑戦かと思った。しかし、アニエスはすぐにそれが間違いだとわかった。

「まあ……これは……」

 書棚に積んであった箱――ファイルではなく箱だった時点でアニエスは嫌な予感がしたのだが――の中には、書式が一致しない書類が雑に詰められていた。

 メモのようなものもある。ぱっと見ても、作物名が統一されていないのがわかる。単位もバラバラだ。

 一緒に確認したジルも頭を抱えた。

「相当ひどいですね……。前辺境伯は何をやってたんですかね」

「家系断絶上等、という方だったそうですよ」

 心配そうにアニエスを見るフィリップに「大丈夫です」とうなずくと、アニエスは資料室の入口でこちらを見ていたジャコブに近づく。

 彼の挑戦は「この資料でまともな収支報告書が作れるものなら作ってみろ」という意味だ。

「シェーシズ卿。ずっとひとりで大変でしたね。管理官の立場では、領地内の村に報告書の書き方を指導するなんてできないですものね。前辺境伯ギヨーム様は協力的ではなかったでしょう? 王城にも頼れなかったんですね……」

「そ、それは……」

「村からの税はギヨーム様が管理していたのですか? 収支報告書に合わせて、国に納める額だけをあなたは渡されていた?」

「はい。前辺境伯は私には書類しか触らせず……金には触るな、と」

「おととしの冷夏は? つじつまを合わせるならもう少し報告書の数字を落としたほうが良かったと思いますが」

「実際の税収と誤差が出れば前辺境伯ももっと真剣に聞いてくださると思ったのです。それなのに……」

「ギヨーム様は指輪を売って報告書と実際の税の誤差を埋めろとおっしゃったんですね?」

「は、はい……。私はもらった指輪を王都で売って、それでなんとかごまかして……。去年は、すぐに新しい辺境伯が赴任して私は処罰されると思ったので、どうでもよくなり……」

 ジャコブは声を詰まらせた。

「私たちが来たからにはもう大丈夫ですよ。いっしょにがんばりましょうね」

 アニエスはそう言って、ジャコブに大きくうなずいて見せた。

 ジャコブがアニエスに伸ばした両手は、横からジルが掴んで「がんばりましょう」と笑顔で握った。

 感動して「辺境伯夫人……!」と目を潤ませていたジャコブだったが、続くアニエスの言葉ですぐに涙が引っ込んだ。

「是正義務があるのは三年前までです。三年分なら五日で終わりますよ」

「え? 五日?」

 ぽかんとするジャコブにアニエスは人差し指を立てる。

「まず、村ごとに、書かれているままの文言でまとめます。次に、単位が統一されていないものを換算表に則って換算していきます」

 収支報告書の規格統一の法律は八年前に作られた。領内への周知や教育などに時間がかかることを想定して、換算表を使って単位統一することが許されている。その特例が適用されるのが施行十年後まで――ギリギリだった。

「品目で統一ルールがあるものは、同時に統一しましょう。困るのは地方特有の名称ですが、地域ごとである程度はまとまるかしら? 最終的には村に出向いて確認するしかないでしょうけれど」

「え? 出向くのですか?」

「ええ、もちろんですよ。今年の報告書からは統一書式にそろえてもらうためにも、人材育成は必要です」

「しかし、領地全部は……」

「私は辺境伯夫人ですから、管理官と違って権限があります。ああ、期限の心配ですか? 大丈夫ですよ。村に出向くのは五日には含んでいませんから」

 アニエスは「それではさっそく始めましょうか」と手を叩く。

 ジルはジャコブの両手を握ったまま離さず、「大丈夫ですよ、奥様が終わるって言ったら五日で終わりますからね」とにこやかに笑っていた。

「アニエス。良ければ説明してもらえるか?」

 そこでフィリップに話しかけられて、アニエスははっと思い出す。彼はアニエスをずっと待ってくれていた。

「申し訳ございません。こちらの話ばかりで」

「いや、かまわない」

「シェーシズ卿は不正をしていたわけではなく、収支報告書が正しく作れなかったのをごまかして提出していただけでした。――だけと言ってしまうわけにはいかないですが。報告書を作り直して再提出しますので、場合によっては追徴課税があるかもしれません。ただ、旧辺境伯家のことなので、どう処理されるか……。その辺りは再提出時に確認いたします」

 アニエスはフィリップに近づいて、少し声を落とす。

「彼はあちらとは関わりなさそうに思います」

「確かにそうだな」

「あ、オパールのカフスボタンだけ確認しましょうか?」

「ああ、頼む」

 アニエスは、壁際の棚から箱を出して中央の机に並べているジャコブとジルに近寄る。ジャコブに見えないように、ジルに手首を示すと、彼はちらちらとあちこちに目をやったあとで、ジャコブの袖に気づいてくれた。

「シェーシズ卿。そのカフスボタン、なかなかいい品ですね」

「皆さんもジャコブで構いませんよ。これですか? 恋人からもらったんですよ。おそろいなんです」

「へえ、恋人ですか? いいですね。ペルトボールの人ですか? それとも王都の人?」

「本邸の家政婦長です」

 そこでアニエスは参戦した。

「あら、マルゴのことですか?」

「はい。最近会っていませんが」

「あの、ジャコブさん。申し訳ないのですけれど、マルゴは解雇しました」

「え? ……もしかして、辺境伯閣下か夫人に何か失礼なことでも?」

「ええと、まあ、その……。何か心当たりが?」

「そうですね……。彼女が前辺境伯の愛人だったのは知っています。彼女は、私が旧辺境伯家の財産を管理していると勘違いしていました。それで私に近づいて来たんですよ。本当は王家に返上していますが、彼女は知らないようなので黙っていました」

「……あなたとマルゴは恋人だと言ってませんでした?」

「はい。向こうから好きだと言われたんで、私が受け入れたら恋人ですよね?」

「そう、ね? そうかしら? え?」

 アニエスは首をかしげる。

 そこでフィリップがジャコブに話しかけた。

「カフスボタンをもらったのはいつだ?」

「半年程前ですね」

「そのカフスボタンに関して、街で誰かに何か聞かれたりしなかったか?」

「いいえ。特に何も……?」

「そうか。ありがとう。それから、すまないが、領内に出没している盗賊の討伐計画があるから、しばらく屋敷から出ないでもらいたい。食事は本邸から持っていかせる。それに、離れにも護衛を置かせてほしい。なんなら力仕事を頼んでかまわない」

「はい、承知いたしました。……もしかして、マルゴがその盗賊と関わりがあるのでしょうか?」

「そう考えている。もし、何か知っていることがあるなら教えてほしい」

「盗賊に関しては何も……。そういえば、同盟国間の移住について質問されたことがあります。私と結婚したらアレグロ王国に住みたいという例え話でしたけれど……、手続き方法などの他に、移住の際に過去はどこまで詮索されるのか、というようなことを聞かれました」


 五日間、アニエスは離れで収支報告書の修正作業に励んだ。

 盗掘団の討伐はその間に終わって、外に出る暇などなかったからちょうど良かった。

 収支報告書の統一は、八年前に王妃グレースの発案で王太子フェルナンが主導して行った政策だ。しかし、最初にグレースに提案したのはアニエスだった。グレースが地方領主と謁見する場に立ち会って、彼らが収支報告書をまとめる際に毎年苦労していると話しているのを聞いたからだ。

 案件がフェルナンに引き渡されるまでに、現状の不満の声などを集めたのはアニエスだった。アニエスが異動になる前に成立したため、フェルナンに渡ってからは関わっていない。このような問題には気づかなかった。

 きっとアニエスの知らないところでしわ寄せは起こっていたのだろう。今回の政策以外でも、当然そういったことはあるはずだ。

(特例期間が終わる前に、現状の再確認を行ったほうがいいでしょうね。場合によっては、品目や単位の規定の見直しも検討すべきだわ。他領がどうやって領地内にルールを行き渡らせたかわかれば、自領の参考になる。良い例として紹介されれば評価につながると言えば秘匿する領主もいないでしょう)

 アニエスは王都で聞いたことがない作物名を見ながら考える。

(殿下に進言するのは良くないかしら? 宰相閣下の方がいいわよね。監査官は閣下の部下になるわけだし)

 先ほど似たような名前を見た気がする。

 アニエスは、護衛ついでに手伝ってくれているセシルに声をかけた。

「セシル。資料室の、左列の三行目の机にある……中央の山の……上から十枚目から十五枚目くらいの間の書類で……。紙の上半分あたりに『シーシィービールズ小麦』か『シーシィービーレズ小麦』か、そんな感じの名前が書かれている書類があったら持ってきてもらえるかしら?」

「え? 覚えているんですか?」

「いえ、覚えていないから持ってきてほしいのよ」

「でも、場所が」

「ああ、それはさっきまでそちらにいたし、目で見ているから、なんとなくね」

 資料室のどの辺りで見たのかと、見た書類の記憶はあるけれど、はっきりつながってはいない。だから、アニエスに言わせると『なんとなく』だった。

 慣れた場所ならもう少し正確で、例えば、頭の中の自室のチェストを開けてどの引き出しに目当ての髪飾りがあるか探したりできる。

 アニエスの言葉を繰り返しながら資料室に入ったセシルが、「本当にありました!」と駆け戻ってくると、ジャコブが驚いた顔でアニエスを見る。

「これが執務室の妖精……!」

 一方のアニエスは、「『シーシィービーレズ小麦』と『シーシービールズ小麦』って同じもの? そもそもそんな小麦が品目にないけれど……」と悩むのだった。


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