表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME5 魂音の精霊と復活の破壊神
81/95

記憶のせめぎ合い

2~3日間隔で更新します → 体調崩して約束破るというゴミムーブ。

 

すいませんでした。<(_ _)><(_ _)>


 

「ガアアアアアアアアアアアアアアア‼」


 体から溢れるオーラを、必死に抑えようともがき苦しむリウラがいた。


「【志枯羽根(しかばね)】‼」


 リンカーが鉄の羽根を出現させ、クナイのようにリウラに投擲する。


「――!」


 リウラはそれを躱そうとするが、右手から溢れるオーラを抑え込みながら躱すのは難しいようだ。

 何本も何本も、数を任せに投擲される鉄の羽根は、黒いオーラに触れると崩壊する。

 が、オーラに包まれていない体の部位に【志枯羽根(しかばね)】が命中すると、リウラのオーラが途切れ、元の肉体が顕わになる。


「【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】‼」


 オーラが晴れた瞬間を狙って、洗脳スキル――【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】を発動し、リウラの首元に向かって首輪をはめる。


「――ウアアアアアアアアアア‼」


 一瞬だけぐらりと体が揺れた後、意識を取り戻したリウラは、首輪を掃うように、大量のオーラを放出させた。


「……普通だったら、もう洗脳できてるはずなんだけどなあ」


志枯羽根(しかばね)】も【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】も、並大抵の相手に当てれば、暫くの間行動不能にできるし、一発で洗脳しリンカーの手駒にすることができる。

 それだけに、何度もスキルを命中させているのに、その度にスキルによる洗脳を振り払い、自我の汚染に抗い続けるリウラの精神力はかなりのものだった。


 中々思うように洗脳できないものの、肝心のリウラはスキルを当てるにつれて、確実に衰弱している。【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】を当てた後の硬直時間も長くなってきた。


 あと数発当てれば、洗脳できそうだ。


 確かな手ごたえを感じながら、リンカーはオーラから距離を取り、再び【志枯羽根(しかばね)】を使って、オーラの解除を試みる。


 一方でリウラは、体から溢れるオーラを抑えるので精いっぱいだ。この黒いオーラは、何故だかわからないが、自分の意志で制御できず、自分と聖也以外の生命体なら何でも飲み込もうとする。

 触れたらなんでも破壊する、黒い雷。

 リンカーが現在無事なのも、何とかリウラが残った意志で、雷が他の者を巻き込まないよう、最低限抑え込んでいるからだ。


 理由は分からないが、この雷の力で他の者を殺した瞬間、自我が雷に完全に乗っ取られそうな予感。


 その危機感だけが、ギリギリでリウラの意志を保たせ、完全な体の乗っ取りを防いでいるのだが……


 そんなことなど知らないリンカーは、意識を奪うスキルでいちいち、自我のせめぎ合いをしている所に横やりを入れてくる。

 そのため、スキルを喰らう度に、黒い雷のオーラが体を侵食し、今では体のほとんどがオーラに包まれてしまっていた。


「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ‼」


 もうまともな言葉を発することもできない程度には、リウラの理性は崩壊していた。

 徐々に化け物になっていくリウラが、もがき苦しんでいる所に――


「リウラぁ‼」


 なんとか現場に追いついた聖也たちが合流する。


「さっきはごめん‼ リウラの言葉から逃げてごめん‼ 僕は……リウラが欲しい言葉を、心の底からの気持ちで言ってあげることはできないけど‼」


 聖也の泣きそうな声に、リウラのオーラの放出がほんの少しだけ弱まった。


「僕の知ってるリウラは、馬鹿なくせに前向きで、いつだって僕を支えてくれた、お人よしの良い奴だったよ‼ だから目を覚ましてよ‼ もしも全部を思い出していないなら……他の奴の言うことなんかに負けんな‼」


 僕に答えを求めるからには、まだ全部を思い出していない。

 だったら、今だけは僕の知っている君の姿を信じてくれよ。


 その思いを乗せた言葉が、リウラの体から黒いオーラを掃い、リウラの体が再び露わになる。


「聖……也……」


 崩れた顔で聖也の顔を伺うリウラ。

 やったか。と安堵の息を吐く聖也に水を差すように、リンカーが【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】でリウラの意識を奪う。


「グアッ?!」

「都合のいいこと言ってくれてるけど、僕の記憶、見たんだろ⁈ 僕を殺した時の記憶! 見たんだろぉ?!」


 リンカーが首輪の鎖を伝わせ、再び自分の記憶が混じった心力(スヴォシア)を流し込む。


「グアアアアアアアアアアアアアアア‼」

「現実逃避してんじゃねえよ‼ 僕の記憶は頑なに拒むくせに、そんな人間のガキの言葉に縋ってんじゃねえ‼ さっさと全部思い出して、その力を僕の為に使いやがれ‼」


 リンカーがさらに心力(スヴォシア)を籠めると、収まっていたはずのオーラが再び体から溢れ出し、リウラの体を飲み込むように包み込んだ。


「てめえ! やめろ!」


 響子がリンカーを止めようと襲い掛かるが、リンカーは首輪でリウラを洗脳しながら、響子を片手でぶっ飛ばした。

 バフがかかっていない人間の相手など片手で十分ということだ。


「……いい子になってきたじゃあないかぁ♡」


 先ほどまで、黒いオーラに触れると【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】は消滅していたのだが、とうとう黒いオーラはリンカーのスキルを打ち消さなくなった。


 まずい。リンカーの洗脳が完了するまでもう猶予がない。


 かといって、今の自分たちだけではリンカーを止めることはできない。


「リウラ……‼」


 今の自分にできるのは、過去のリウラとの体験を信じることだけだ。

 祈るようにスキャナーに力を籠め、リウラが洗脳に負けないよう、必死に念じていたときだった。


「……リウラ!」


 聖也たちの後ろから現れたファルモーニが、楽器を掻き鳴らし、楽器から虹色の心力(スヴォシア)をリウラに向かって放出した。


「言葉だけじゃない! 私の記憶を受け取って‼」


 自分を破壊神と罵ったファルモーニの記憶。

 自分に迫ってくる、記憶の混ざった心力(スヴォシア)を受け取っていいかどうか、リウラは一瞬ためらった。


 だが、自分を見つめてくるファルモーニの決死の表情に、リウラは最後の自我を振る絞ってオーラを抑え込み、ファルモーニの心力(スヴォシア)を体で受け止める。


「――聖也ぁ‼」


 少しだけ苦しそうに歯を食いしばりながらも、リウラの体から再びオーラが剥がれる。


 眉間にしわを寄せながら、リウラは【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】の鎖を引きちぎり、光の薙刀を出現させる。


必殺技(アルティメット)だ‼」


 リウラが腰を落とすと同時、リウラの狙いを察した聖也が、すぐさま必殺技(アルティメット)カードをスキャンした。


必殺技(アルティメット)――』


 アナウンスと同時に大量の心力(スヴォシア)がリウラに流れ込み、刃に溜まっていくエネルギーに空気が震えた。

 リウラの腕から、黒いオーラは完全に消え去ってはいない。ファルモーニがどんな記憶を渡したのかはわからないが、自我を制御できる今のうちに、最強の必殺技(アルティメット)――【ゼロフレーム】で一気にカタを付ける気なのだろう。


 リンカーの召喚者のランプは黄色だった。ライフは2。ここで倒しても消えるわけじゃない。

 強引な手段だが、ライフを奪ってでも、この場はリンカーを退ける。


 この一撃で決める。


 黒いオーラからの自我の浸食に耐えながら、必死でエネルギーを溜めるリウラの眉間に、


「はい。残念賞♡」


 当たった者の意識を奪うスキル――【志枯羽根(しかばね)】が命中し、スキル発動まであと少しだった、【ゼロフレーム】のエネルギーが、空中へ空しく霧散した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ