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サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME5 魂音の精霊と復活の破壊神
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復活

「さあ、カウントは溜まっただろ? 早くリウラを召喚するんだ」


 リンカーは鎖で繋がられた首輪をぐいと引っ張って、聖也に召喚を促した。


「……リウラの復活って、何が狙いだ⁈」

「決まっているだろぉ。このゲームで勝ち残って、勝者の特権を手に入れる為さ」


 リンカーはうっとりとした表情で、舌なめずりをしながら答えた。


「さあ、リウラを召喚しなさい」


 どうやら、丁寧語で話すのが洗脳の合図らしい。

 聖也の体が意思とは関係なく動き出し、リウラの契約戦士カードに手を伸ばす。


 ダメだダメだダメだ。

 こいつが何を考えているのかは知らないけど、こいつの復活は、今までのアーサーやゼロムから記憶を貰っての復活とは違う。正体不明の底知れぬ悪意をはらんでいる。


 必死に抵抗しようとするも、体が言うことを聞かない。

 聖也は苦しそうに表情を歪ませながら、リウラの契約戦士カードをスキャンした。


「――聖也を離せ‼」


 実体化してすぐに、リウラがリンカーに攻撃を仕掛ける。

次元跳躍(ディメンジョンリープ)】で相手をかく乱してから、死角に回って飛び蹴りを食らわせる。

 

「……うん、ダメだね。今の君じゃ」


 背後から綺麗に一撃を入れるも、当の喰らった本人は余裕の笑みを浮かべながらも、がっかりそうに息を吐いた。

 スキルを取り戻しつつあるものの、肝心の攻撃力は人間以下。

次元跳躍(ディメンジョンリープ)】のクールタイム中のリウラの顔を、リンカーが乱暴に鷲掴みにする。


「ぐあっ!」

「僕の記憶をあげるよ。それでしっかりと思い出すといい」


 リンカーがリウラを掴む手に、大量の心力を籠め始めた。


「この僕と――世界の全てを滅ぼした時のことをなぁ‼」


 ドクン、と大きく心臓が脈打つように、リウラがビクンと跳ねた後、膨大なエネルギーが発生し、リンカーと聖也を吹き飛ばした。


「……リウラ⁉」


 すぐさま立ち上がり、爆発の中心にいたリウラに、聖也が慌てて駆け寄る。

 爆発で舞い上がった土煙をかき分けながら、進んだ先で、


「体が……」


 肉体を完全に取り戻した、リウラが膝を折って存在していた。

 結を助けた時と同じ、腕が、脚が、細身ながらも引き締まった肉体が。今までの一頭身ではない、完全なリウラの姿がそこにあった。


「聖也……?」

「大丈夫か⁈ あいつに何された?!」

「大丈夫じゃ、な、い」


 体を取り戻したというのに、肝心のリウラは呆然とした顔で聖也を見つめていた。

 そして、突然聖也を右手で強く突き飛ばした。


「ったあ⁈」

「にげ、にげ」


 何をするんだ、という言葉は、リウラの様子を見て引っ込んでしまった。

 リウラが苦しげな顔で、自分の左手から溢れ出てくる黒い雷のようなオーラを、必死で抑え込んでいる。

 

「逃げロ……聖也……‼」


 リウラが叫ぶと同時、瞬間的に膨れ上がった雷のオーラが、辺りに稲妻をまき散らした。

 轟音と共に拡散した稲妻は、破壊するというよりは、触れたもの全てを溶かすように、周囲に消滅をまき散らしていく。

 聖也の首輪の鎖に、雷のオーラが触れると、鎖は焼き切られ、聖也が首輪による支配から解放された。


「おい! 必殺技(アルティメット)だ‼」

「は、はい!」


 リンカーが自分の召喚者に命令すると、召喚者と思われる男性は、必殺技(アルティメット)カードをスキャンする。


必殺技(アルティメット)――』


 アナウンスと共に、大量の心力がリンカーに流れ出し、邪悪なオーラ―を纏った、一本の鎖付きの首輪が顕現される。


「【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】‼」


 邪悪なオーラを纏った首輪が、リウラの首に装着される。

 するとリウラが口から涎を垂らしながら、苦しそうな声で叫び出した。


「――止めろ‼」


 首輪をつけた者に洗脳の魔術を流し込み、洗脳を終えた者を自在に使役することのできる、リンカーの必殺技(アルティメット)――【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】。


 敵の狙いは、復活したリウラを使役すること。


 気が付いた聖也が、リンカーの必殺技(アルティメット)を妨害しようと駆けだすが――


「……っ‼」

「「……え?」」


 リウラが左手で鎖に触れると、【駕瓦我隷輪(ガガガカラー)】はいともたやすく引きちぎられてしまった。

 

「……来るナ」


 そして、リウラは一瞬だけ聖也に目をくれると、そのままどこかに走り去ってしまう。


「ハハハハハ‼ いいじゃないか、いいじゃないかぁ‼」

「――ガッ⁈」


 何が起こっているのか理解ができずに困惑した聖也の首に、再び首輪がはめられた。

 そしてこの場から去ったリウラの後を追うように、リンカーが聖也を引きずり回しながら駆けだした。


「あの力さえ手に入れば、この戦いの勝者になることなんて容易すぎる‼ 何が何でも手に入れてやるぞぉ!」

「クソ……離せ……!」


 乱暴に引きずられながら、首輪の解除を試みるも、繋がれている鎖はびくともしない。

 解除どころか、高速で石造りの道路を引きずられ、カーブを曲がる際に壁に叩きつけられそうになる。自分の命を守ることで精いっぱいだ。

 【(ソード)巨人殺し(ジャイアント)の大剣(スレイヤー)】で相打ちを狙うしか、この状況を単独で打破する方法は存在しない。


 襲い来る痛みに耐えながら、聖也が考えを巡らせていた時だった。


「「――⁈」」


 突如として鎖が引きちぎられ、聖也が支配から解放される。


「なんだ、君は?」

「こっちのセリフだ変態束縛野郎が」


 謎の乱入者が現れ、忌々し気に振り返るリンカー。

 苦しそうに首を抑える聖也を、一人の人物が優しく起こした。


「うちの生徒に何してくれてんだテメエ‼」

「せ、先生?!」


 聖也を助けに入った人物は、はぐれて行方不明になっていたはずの聖也の担任、音和響子だった。

 

「ねえちょっと、響子! 私を置いていかないでよ! 私の(バフ)の範囲だって限界があるんだから!」


 そして、響子に続いて、ヘロヘロにくたびれた様子のファルモーニが現れる。


「……もしかして、取り込み中?」

「……うん。そうだね」


 お互いに身構え、睨みをきかせ合うリンカーと響子。

 響子がスキャナーでカードをスキャンすると、響子の両手に薄手のナックルグローブが装着された。


・・・・・・・・・・・・・・・


(フィスト)無効革(アンチレザー)】……カウント4。触れた相手のスキル・魔法効果を封殺する革製のグローブ。攻撃力は装備者依存。……R


・・・・・・・・・・・・・・・


「へえ、人間のくせに僕とやり合う気?」

「たりめーだ。テメエみてえな不審者から生徒を守るのも仕事の内なんだよ」

「……じゃあ、私は聖也君保護して隠れとくね!」

「待てや」


 響子を残してその場から逃げようとするファルモーニを、響子が低い声で呼び止めた。


「何逃げようとしてんだコラ‼ さっさと歌えや‼」

「は、はいいいいいいいいいいいい‼」


 響子の怒声と共に、ファルモーニが楽器を構え、メロディーを刻みだす。


「こんな状況ですが、私、歌います‼」


 リウラを追いかけるのも大事だが、目の前のリンカーを放置していくわけにはいかない。

 響子とファルモーニを交え、リンカーと暴走するリウラ、そして謎の連盟との乱戦が始まろうとしていた。


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