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サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME4 最悪の魔人とゼロスキルの戦士
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作戦成功。そしてイレギュラー

『相変わらず避けるのうまいねえ!』


 聖也の周囲に不規則に【|隔娄界門(ヘルゲイト)《ヘルゲイト》】を発生させながら、透過弾と追尾弾を織り交ぜて、聖也を狙う。

 なんとか銃弾を躱せているのはヴァルビーの索敵によって、【隔娄界門(ヘルゲイト)】の出現位置を把握できるおかげだ。

 【隔娄界門(ヘルゲイト)】は便利なスキルだが、決して発生が早いわけではない。出現位置さえわかってしまえば、射線の予測がついて、ギリギリだが銃弾を躱すことができる。


 そして、ある程度距離を詰めたところで――


「がっ⁈」


 背後から撃ち込まれた銃弾に、聖也の右足が撃ち抜かれた。

 足を撃ち抜かれたことでバランスを崩し、聖也は目の前の地面に転がるようにして倒れこむ。


 バカな。常にマップは警戒していたはずだ。【隔娄界門(ヘルゲイト)】の発生情報なんてマップには――


 聖也がなんとか後ろを向くと、そこにはジークの【隔娄界門(ヘルゲイト)】が発生していた。


『オーケー。この距離が索敵限界ね』


 まさか、不規則に【隔娄界門(ヘルゲイト)】を発生させる振りして、ヴァルビーの索敵距離の限界を測っていた?! 

 敵の策のはまったことを悔やみながら、聖也はリウラの契約戦士(チャンピオン)カードをスキャンして、リウラを召喚する。


「リウラ! こい!」


 目の前に発生した魔方陣から、頭と足だけの姿のリウラが召喚される。


「大丈夫か⁈」

「なんとか! それよりも【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】を!」


 足を撃たれたことで、もう通常の銃弾すら回避することはできないだろう。

 それでも、なんとか目的地――【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】の使用距離までたどり着くことはできた。


『そこから、屋上ここまでは届かないだろ?』


 雄人の言う通り、今の聖也たちの位置からは、雄人たちのいる建物の屋上へワープすることはできない。

 だが、建物の一階部分になら、ワープすることができる。


「【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】‼」


 聖也に触れながら、リウラはジークたちのいる、建物の一階部分――マンションのエントランス部分へワープする。


『……そこ、安全じゃないけど』

「知ってるよ‼」


 そして、ワープしてすぐに、聖也は一枚のカードをスキャンした。


「潰れろ! 建物ごと!」


 聖也がスキャンしたのは、【(ソード)巨人殺し(ジャイアント)の大剣(スレイヤー)】のカード。

 建物の屋上部分に、全長50mの巨大な剣を呼び出す魔方陣が出現する。


「ヤバいってこれ! 潰されちゃうよ!」

「なるほど。道ずれ狙いね」


 自分に向かって落下してくる巨大な剣に雄人が慌てる一方、ジークは聖也の狙いを冷静に分析し、鼻をほじる。


「それは甘いんじゃねえの⁈」


 ジークが大きく手を広げると、ジークたちの目の前に、剣を吸い込むほどの、巨大な【隔娄界門(ヘルゲイト)】が発生した。

隔娄界門(ヘルゲイト)】に飲み込まれた巨大な剣は、はるか遠くに出現したもう一つの【隔娄界門(ヘルゲイト)】に落下地点を移されて、遠方のエリアで、強大な衝撃波が発生した。


「アイデアは良かったがなあ! それじゃあ俺は倒せ――」

「グアッ?!」

「ああん?!」


 ジークが策を打ち破った愉悦に浸っていた隣で、雄人の悲鳴が聞こえ、反射的に声の方へと振り返る。


「ジーク。これ……」


 雄人が自分のスキャナーを指差すと、そこにはスキャナーの使用を封じる、灰色のエネルギーがまとわりついていた。

 スキャナーの効果を封じられたことにより、透視スコープ、オールレンジライフルといった装備品が光になって消滅する。


「なんで君たちそこにいるのさぁ⁈」


 メインデッキのカードの使用、効果を封じる【沈黙の矢(サイレンスアロー)】。

 その矢が放たれた方向を振り返ると、そこには豪、那由多、結の3人が、してやったり、といった表情を浮かべて、立っていた。


「……最初からいたぜ、俺たちは」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「あらかじめ、敵の狙撃場所に待ち伏せておく?」


 ジーク討伐の作戦会議でのことだ。聖也のアイデアに、結が疑問の声を上げる。


「敵の出現位置なんて、事前に予測できるの?」

「うん。特に理由がない限り、敵はまた、あの住宅街エリアで、一番高い建物である、高層マンション屋上に現れる」


 あくまで仮定の話だけど、と前置きしてから聖也は続けた。


「エリア全体を見渡せるから、オールレンジライフルの射程が活かせるし、リウラの【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】を対策するなら、高さっていう距離を稼げるあの建物が一番なんだ。地上から屋上にワープするためには、建物の足元近くまで、接近しなければいけなくなるからね。僕が事前に建物の付近で待ち構えていない限り、十中八九、敵はあの建物の屋上に現れる」


 聖也の考察に納得したように、全員が頷いた。


「敵はジークの召喚カウントを溜めてから、【ブックマーク】で屋上に現れるはずだ。事前に建物の屋上で、結の【ステルス】を使って待機して置いて、隙を見て豪の【沈黙の矢(サイレンスアロー)】を打ち込むんだ」

「現れてすぐじゃ、ダメなのか」

「いや、現れてすぐは止めた方がいい」


 豪の提案に、聖也は首を振った。


「……多分だけど、あいつ空間探知能力が凄いんだよ。どんな離れた距離でも、正確に、射線まで計算して【隔娄界門(ヘルゲイト)】を発生させられる。【沈黙の矢(サイレンスアロー)】もカードをスキャンして、弓を引くモーションの都合上、余程の隙を生まないと、敵に気付かれて対策されてしまう。……だから僕が敵の隙を作る」

「どうやって?」

「敵の真下にワープして、【(ソード)巨人殺し(ジャイアント)の大剣(スレイヤー)】のカードを使う。これであいつは剣に対して【隔娄界門(ヘルゲイト)】を使うはずだ」

「【隔娄界門(ヘルゲイト)】で対抗せずに、【ブックマーク】でその場から離れる可能性は?」


 那由多の疑問に、「それは大丈夫」と聖也が返す。


「召喚士が両手でライフルを握っている都合上、カードをすぐにスキャンはできないはずだ。敵も屋上へのワープは警戒しても、真下の階へのワープは警戒しない。屋上へ直接ワープできる距離にならない限り、【ブックマーク】は用意しないよ。ジーク(あいつ)、舐めプ好きだから、ギリギリまで引き付けて僕をあざ笑ってくると思うし。切り札の剣は、【隔娄界門(ヘルゲイト)】で対処できるしね」

「なるほどね」

「豪。あいつ、僕の剣を防いだら、相当調子に乗ると思うからさ――」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 その調子乗ってるところに、ぶちかましてやれよ。【沈黙の矢(サイレンスアロー)】。


 驚いた顔でこちらを向くジークたちを見て、豪が大胆不敵に笑った。


「ああ⁈ てめえら、あいつ見捨てて逃げたんじゃねえのかよ⁈」

「逃げるか馬鹿が! テメエに仕返しに来てやったんだよ‼ こい、ゼロム‼」

「来なさい! アーサー‼」


 豪と那由多が、立て続けに自分の契約戦士(チャンピオン)カードをスキャンすると、発生した魔方陣から、ゼロムとアーサーが飛び出した。


「セツジョクセンダ、カスドモ‼」

「たっぷり借りを返すとしますかあ!」


 ゼロムもアーサーも、前回の戦闘ではジークのスキルにやられっぱなしだった。相当鬱憤が溜まっているだろう。


「おいおい、こんなか弱い俺様に2VS1は卑怯だろ⁈」


 勢いよく迫りくるゼロムたちに慄くジーク。


 やっぱりコイツ、接近してしまえば雑魚だ。


 その様子を見て、誰もが勝利を確信した時だった。


「……なんちゃってなあ‼ 雄人ぉ、必殺技(アルティメット)だ‼」

「は、はいぃ‼」


 ジークが叫ぶと同時、雄人がスキャナーから必殺技カードを取り出して、スキャンする。


必殺技(アルティメット)――』


「グアッ?!」

「っ⁈」


 アナウンスと共に、突然発生した強大なエネルギーに、ゼロムとアーサーが吹っ飛ばされる。

 その背後で待機していた結たちも、ジークを中心に発生する衝撃波に吹き飛ばされないよう、必死に屋上のフェンスにしがみついていた。


「【魔鎧鉱人(アマダイト)】……‼」


 そして、エネルギーに堪えながらジークを見やった一同は、言葉を失ってしまう。


 雄人の肩に乗るようなサイズだったジークの体が、みるみるうちに巨大化していき、全長20mほどの巨大なバケモノに変貌した。

 そして、宝箱から上半身を切り離すと、胴体が伸び、伸びた胴体からサソリのような足が生え、ケンタウロスのような姿に変化する。

 体にまとわりついたブラックダイヤのような宝石が、体を守る鎧のように成長し、ジークの体をを包み込む。


 変貌を終えたジークは、ニヤニヤと雄人に目をやると、


「はぁい、カードを使えない雄人君は、ちょっと引っ込んでいてね♡」

「え、ちょ、ジーク?! 何すんのってうわあああああああああああ⁈」


 雄人の体をひょいと摘み上げ、宝箱の中に閉じ込めた。

 そして宝箱を、サソリのような尾の先に着いたアームで掴み上げ、邪悪な笑みを浮かべて、アーサーたちへと向かい直る。


「その顔さあ、もしかして近づいてしまえば、なんとかなると思ってた?」


 目の前に突如として現れた、圧倒的スケールの宝石の怪物。

 結も、那由多も、豪も。アーサーやゼロムでさえも、ジークが発する圧倒的なオーラに委縮し、絶望した表情で固まったままだった。


「残念ながら、こっちが本当の姿なんだよなあ! 近接もツヨツヨのジーク様が、遊んでやろうじゃねえの⁈」


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