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サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME4 最悪の魔人とゼロスキルの戦士
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特訓終了。そして再戦

 特訓8日目。聖也たちの休養を考えれば、実質最終日。


「……!」

「――っ‼」


 ゼロムの攻撃を躱す聖也の表情に、もう余裕はない。全神経を集中させ、繰り出される攻撃を避けるのに集中している。

 身体能力が向上したのはもちろんだが、それ以上に、ゼロムの動きの拓が増えた。

 攻撃にフェイントを交え、ただ薙刀を振るうのではなく、拳や足技による搦め手もふんだんに取り入れた。

 多彩な動きに加え、【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】による瞬間移動。これによって不規則なタイミングで視界外へ消える。


 聖也のカウンターもしっかりと予知して躱してくる。


 そして、聖也がゼロムの薙ぎを躱そうと、身を引いた瞬間――


「――うおっ⁈」


 ゼロムがもう一方の手で、人差し指と中指を合わせ、クイッと何かを引っ張るような動作をした。

 念力のような力に吸い寄せられ、聖也は前にバランスを崩す。

 前に崩れた聖也の顔に、ゼロムの膝蹴りが炸裂した。


「ぐあっ⁈」

「!」


 自分が一撃入れたことに、一番驚いたのはゼロムだった。


「ウッシ‼」


 感極まって、こぶしを突き上げるゼロム。

 驚いたように顔を擦る聖也に、リウラが得意げな笑みを浮かべる。


「今の……【見えざる手(アトラクト)】⁈」

「ああ。実戦で決まったのは初めてだが」


次元跳躍(ディメンジョンリープ)】と共に練習していたのは知っていたが、【見えざる手(アトラクト)】まで習得しているとは。


「流石に【ゼロフレーム】は覚えきれなかったが、他2つのスキルは実践レベルまで習得できた。近接戦闘なら、その辺の戦士には引けを取らないだろう」


 リウラが言うのならば、その習得具合に偽りはなさそうだ。

 加え、今のゼロムの強さは、聖也が肌で実感している。

 背丈はそのままだが、確実にレベルアップした身体能力に、近接戦闘で絶大な力を発揮する【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】と【見えざる手(アトラクト)】。

 これらを組み合わされては、もう自分が教えられることはない。


「……完敗だ。もう僕じゃ勝てない」


 両手を上げて、すがすがしい顔で投了する聖也。

 その姿に、特訓を見ていた皆が歓喜の声を上げた。


「ゼロム君凄いよ!」

「やるじゃねえかてめえ!」


 結やアーサーにもみくちゃにされながらも、ゼロムは聖也の元へ、歩み寄る。


「アリガトウ、ヒョロガリ……イヤ」


 ゼロムは手を差し伸べながら、改まって頭を下げる。


「シショウ2ゴウ」

「……立派な弟子を持てて、こっちも光栄だ」


 聖也もその手を握り返して、立ち上がる。


「……よかったな」


 誰にも聞こえないような小さな声で、嬉しさと寂しさが混ざったような声で、豪が呟いた。


「……喜ぶのは早いですよ」


 沸き立つ一行に、ラクナが敢えて冷めた声で水を差す。


「肝心なのは、勝てるかどうかです。どうです成神聖也。今のゼロムの力を借りれば、ジークという契約戦士に勝てますか?」

「……それは」


 ラクナの質問に、聖也が言葉を濁す。

 勝つための策が全くないわけじゃないが、自分の思いついた策は、結の参戦が前提だ。ライフ1で後がない結を、危険にさらしてしまう。

 それに、ジークもあと2つスキルを隠し持っている。しかも隠しているスキルの内、1つは必殺技――【ゼロフレーム】、【無限機械兵(ムゲンマキナ)】のような戦況を大きく揺るがしかねない、強力なスキル。


 あくまでジークの狙いは自分だけ。

 不確定な要素が残る中、皆を危険にさらしていいのだろうか。


 聖也が答えあぐねている中、ゼロムが「オイ」とラクナの前に立つ。


「サメルコトイウナ。クモババア」

「ババ……ア……⁈」


 まさか自分が暴言を吐かれるとは思っていなかったラクナが、ショックのあまり、目に見えて動揺する。


「カテルカテナイジャナイ。カチニイク。ソウダロ。シショウ」

「……違いない」


 ゼロムの言葉に、リウラが満足そうに頷いた。


「聖也。私も大丈夫」


 不安そうな顔の聖也に、結が決意に満ちた表情で頷いた。


「皆で勝ちに行こう。私の力も使って」

「……オーケー。じゃあ、昨日考えた作戦で行こう」


 聖也の言葉に、全員が力強く頷いた。


「決戦は明後日‼ 絶対勝つよ、皆‼」

「「「「「「おー‼」」」」」」


 全員で力強く、拳を空へ突き上げる。そして――


「取り敢えず寝させて‼」


 景気づけが終わった瞬間、聖也が宣言と共に、地面に倒れこんだ。ぶっ続けで特訓に付き合わされ、限界だったらしい。


「相変わらず、俺の主は大した奴だ」


 死んだように眠る聖也を、リウラが感心したように見つめた。

 闘いは明後日。明日は体力の回復の為、全力で休む。




 そして迎えた、決戦の日。




『あらら? 今日はお前一人で来たの?』


 戦いの舞台となる【召喚都市(シティ)・夜】。その市街地エリア。

 カウント10を達成した瞬間、前回と同じ、一番高いマンションの屋上に【隔娄界門(ヘルゲイト)】が出現し、そこから放り込まれた【ブックマーク】のカードから、ジークたちがワープしてきた。

 市街地エリア全体を見下ろせる、狙撃には一番適したスポット。

 その出現を予知していたように、開けた街道から、聖也はその屋上に出現したジークたちににらみを利かせる。


「……ああ。お前の攻撃を避けられるのは、僕しかいないからね」

『足手まといは置いてきたってか。いい判断じゃん』


 聖也の目の前に発生させた【隔娄界門(ヘルゲイト)】越しに、ジークが語り掛けてくる。

 聖也のことを褒めつつも、その声からは、自分の敗北など頭にないような、余裕のようなものが感じられる。


『確かにお前の回避はすげえが、避けるだけじゃあ、戦いにはならねえよなあ?』


 遠距離に対して手も足も出ない聖也と、無限に距離を離す手段を持つジークたち。

 余裕の源はここだろう。声のトーンだけで、ジークがニタニタとした憎たらしい笑みを浮かべている様子が浮かんでくる。


『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるっていうらしいし、何万発でも撃たせてもらいましょうかねえ‼』

『……悪く思わないでね。仕事だから、これ』


 雄人がオールレンジライフルを構えたことで、戦闘がスタートした。


 胸ポケットには、予め召喚しておいたヴァルビーがいる。

 ヴァルビーの索敵を利用して、銃撃を避けながら敵に近づく。ここまでは前回と同じ。


 前回と違うのは、聖也の目的がジークたちの討伐ではなく、雄人に【沈黙の矢】を当てる隙を作ること。


(皆、頼んだよ……!)


 既にとある場所に待機している、別動隊の姿を思い浮かべながら、聖也は自分に撃ち込まれる銃弾を避けながら、ジークたちに向かって駆けだした。


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