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サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME4 最悪の魔人とゼロスキルの戦士
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ゼロスキルの契約戦士

なんとか風邪治りました。


ぼちぼち再開しますm(__)m

「聖也氏! このままじゃ打つ手がねえぞ!」


 【隔娄界門(ヘルゲイト)】による四方八方からの銃撃から、那由多を守りながらアーサーが叫ぶ。


「距離を詰めるしかない……けど!」


 四方から目を離せば【隔娄界門(ヘルゲイト)】による銃撃。【隔娄界門(ヘルゲイト)】から目を離せば、追尾弾(ホーミング)による直接射撃。

 距離を詰める難易度が跳ね上がったことにより、聖也たちの足が止まってしまう。


「ラクナ氏になんとかしてもらうのは……」

「ダメだ! ラクナの能力と相性が悪すぎる!」


 エリア内に待機しているであろう、ラクナに力を貸してもらおうにも、【無限機械兵(ムゲンマキナ)】を無視して、【隔娄界門(ヘルゲイト)】は直接ラクナ本体を狙うことができる。

 機械兵の壁が機能しない以上、この場は自分で何とかしなければならない。

 リウラを召喚して【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】で逃げようにも、【隔娄界門(ヘルゲイト)】の射程がわからない以上、それが有効かどうかも判断できない。

 エリア外には、敵か味方かもわからない、謎のグループが存在している。


「僕たちで何とかするしかない……!」


 立ち向かうしかないが、このままだと手詰まりだ。

 何か方法はないか、聖也が模索していた所――


「ねえあなた! あなたの契約戦士(チャンピオン)、どんな能力持ってるの⁈」


 那由多が豪に尋ねる。


「ああ⁈ 知らねえよ! このカウント10とか書いてあるヤツか⁈」

「「「カウント10⁈」」」

『おっ、なになに?』


 カウント10というと、ラクナ、そして恐らくジークと同じカウントの契約戦士(チャンピオン)

無限機械兵(ムゲンマキナ)】、【隔娄界門(ヘルゲイト)】のような壊れたスキルを持っている可能性が高い。


「それ召喚して! 早く!」

「あいつらをボコせるってことか!」


 狙撃の狙いは聖也が7割、那由多が3割といったところだ。豪は脅威とみなされていないからか、ジークたちに全く狙われていない。

 何が起こっているのかはわからないが、ジークという契約戦士(チャンピオン)が自分のことを馬鹿にしているのは存分に伝わってくる。

 自分がやっとゲームに混ざれる。ムカつくやつをぶっ飛ばせる。

 そんな可能性の到来に、豪は興奮気味にカードをスキャンした。


「おら来い! 【零戦士 ゼロム】‼」


 豪の目の前に魔方陣が現れ、そこから一人の契約戦士(チャンピオン)が顕現する。


「……」


 現れたのは、聖也たちの腰ぐらいの背丈しかない、薙刀を持った人型の契約戦士(チャンピオン)

 淡い青の野放図に伸びた髪の毛は、目元を大きく隠してしまっていて、前が見えているのかわからない。 

 自分の体形に合わない、継ぎ接ぎだらけのボロボロのマントは、大きく丈を残して地面に接してしまっている。


「……ミニリウラ?」


 という感想がぱっと思い浮かぶほど、服装はリウラに酷似していたが、その体はリウラと比べて随分と貧弱そうだった。自分の手に携える、身長よりも一回り大きい薙刀を構えようとするも、その重さを支えきれずにバランスを崩しかけてしまっている。


「アウ……」


 声帯が発達していないのか、どうやら言葉を発することができないらしい。

 マフラーで隠した口元から、かすれた声が聞こえてくる。


「おいお前! 戦えるか⁈」


 アーサーが、ジークたちのいる方向を指差しながら尋ねると、ゼロムという契約戦士(チャンピオン)は少し間をおいてからコクコクと頷き、敵の方向にヨタヨタと走り始めた。


『……あれさ、何かヤバいスキル持ってるかな?』

『わかんね。まあわかんないなら……』


 カウント10というカウント帯に不釣り合いな、弱弱しい見た目の戦士に困惑しながらも、雄人は銃を構える。


『とりあえず攻撃っしょ!』


 ジークの宣言と共に、ゼロムの背後に空間を繋ぐ黒い渦――【隔娄界門(ヘルゲイト)】が出現する。


「――っ!」


 【隔娄界門(ヘルゲイト)】を通って、背後から撃ち込まれた銃弾に、ゼロムは武器をこぼしながら、うつ伏せに倒れこんでしまう。


「おい、お前! 何してんだ!」


 あまりにも無抵抗に銃弾を喰らった自分の相棒に、豪が苛立った声で叫んだ。


「豪! スキルは⁈ その子のスキルは何なんだ⁈」

「スキル……⁈」

「スキャナーのコマンドで見れるだろ! 早く見ろ!」


 聖也の指示に、眉間にしわを寄せながら、スキャナーを確認するも――


「……ねえ!」

「はあ⁈ んなわけあるか!」

「知るか馬鹿‼ ほんとに何も書いてねえんだよ‼」


 豪が自分のスキャナーの画面を見せると、確かにそこには、何の情報も書いてなかった。


 カウント10でスキルなし⁈ そんなことがあり得るのか⁈ 


 銃弾を紙一重で躱しながらも、聖也は顎に手を当てて唸る。


 完全に復活していないリウラでさえも、謎のスキル一つを除いて、【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】、【見えざる手(アトラクト)】、そして必殺技の【ゼロフレーム】といったスキルの内容を確認することはできた。発動できるかはともかく、リウラという契約戦士(チャンピオン)は、スキル自体は持っていたということだ。


 それが、ゼロムという契約戦士(チャンピオン)は、スキルの情報すら確認することができない。


 本当に持っていないのか、スキルを、一つも?


 肉体能力も、聖也や那由多よりも明らかに低い。

 人間よりも弱く、スキルも持っていないカウント10。

 そのことにジークたちも気が付いたらしく、黒い渦から心底人を馬鹿にするような笑い声が聞こえてきた。


『ギャーハッハッハッハ‼ お前の契約戦士(チャンピオン)クソ雑魚でや~んの‼』


隔娄界門(ヘルゲイト)】ごしに銃弾が、わざとゼロムの急所を外して撃ち込まれた。


「アウ……‼」

「……クソっ!」


 その様子を見ていられなかったアーサーが、那由多をかばいながらも、ゼロムを守る体制に入る。

 距離を詰めるどころではなくなった、身動きの取れない一同を目に、豪が一枚のカードをスキャンした。


「どいつもこいつも使えねえ‼」


 スキャンしたのは【大魔法・沈黙の矢(サイレンスアロー)】のカードだ。


「こいつをぶち込めば、敵の銃撃は止まるだろうが!」

「――‼ おいバカ止めろ!」


 灰色のエネルギーが弓の形に収束していき、豪が目の前の【隔娄界門(ヘルゲイト)】に向かって、弓を引くモーションを取る。

 それを聖也が慌てて制すも、遅かった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


【大魔法・沈黙の矢(サイレンスアロー)】×1……カウント9。当てたプレイヤーのメインデッキのカードの効果・使用を封じる矢を放つ。契約戦士(チャンピオン)カード、必殺技カードは使用可能……LR


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 確かに、スキャナーの効果を封じる沈黙の矢なら、属性弾のみならず、オールレンジライフル、透視スコープといった、スキャナーの効果で呼び出された道具を無効化することはできる。

 そして、ジークと聖也たち、お互いの声が通じることから【隔娄界門(ヘルゲイト)】は一方通行ではなく対面通行――こっちの攻撃も向こうに届くという、豪の想像は正しい。

 そのまま攻撃を放てば、【隔娄界門(ヘルゲイト)】を伝って、雄人にむかって沈黙の矢が飛んでいくだろう。


 だがそれは――


『はい馬鹿乙‼』


 ジークが【隔娄界門(ヘルゲイト)】の位置を変えなければの話だ。


 豪が矢を放った瞬間、那由多の背後に位置を変えた【隔娄界門(ヘルゲイト)】から、沈黙の矢が吐き出され、そのまま那由多に命中した。


「ぐあっ⁉」

「あ……」


 【隔娄界門(ヘルゲイト)】はそもそも、出現位置をジークの意志で操れるスキルだ。もう一つの出口をライフルの銃口の先に固定する必要はない。


 豪が自分のミスに気が付いたときには、時すでに遅し。

 沈黙の矢によって、那由多のスキャナーが灰色のエネルギーに包まれ、メインデッキの使用を完全に封じられる。


「てめえ、何しやがる⁉」


 ミスの代償があまりにも大きすぎる。アーサーも堪忍袋の緒が切れたのか、豪に向かって食って掛かる。

 完全に仲間割れを始めたところに、聖也が割って入った。


「……豪!【覚醒】カードあっただろ! それは使えないのか⁈」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 【大魔法・覚醒(サバイブ)】×1……カウント10。特定の召喚戦士や、契約戦士(チャンピオン)の眠っている力・才能を目覚めさせる……LR


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ゲーム中、一部の戦士の能力を開放する力を持ったカード。

 もしもゼロムが特定の条件で力を開放するタイプの契約戦士(チャンピオン)なら、覚醒のカードで強化されるかもしれない。

 残された希望を胸に、カードをスキャンさせるも――


「アウ……」


 ゼロムの身に変化は起こらない。

 つまり、ゼロムの中には眠っている力など存在しないということだ。


「「「……」」」


 完全に打つ手を失った豪に、聖也たちの絶望した視線が突き刺さった。


「……んだよ」


 豪が頭を乱暴に搔きながら叫ぶ。


「こっちは今日が初めてのゲームなんだよ! 何もわからなくて当然だろうが! そんな目で見てくんじゃねえ!」

『あ~、わかるゼ。混乱するキモチ。……でもね、雑魚君』


 目の前に出現した【隔娄界門(ヘルゲイト)】から、ジークのおどけた声が響く。


『戦場において、今日が初めてとか関係ねえんだわ! どんな理由があろうと、雑魚は雑魚! 役に立たねえ言い訳にゃあならねえってな‼』

「てめえ……!」

『もう打つ手ないんだろ? じゃあ、飽きたから死んでくれや!』


 そして、【隔娄界門(ヘルゲイト)】から撃ち込まれた銃弾が脳天を貫き、声を出す間もなく、豪は光の粒子になって、消滅した。

 豪が殺られたことで、ゼロムも光になって消滅する。


「「「……‼」」」

『見世物としては面白かったぜ! ギャーハッハッハッハ‼』


 消えていく聖也のクラスメイトを目の前に、絶望のあまり、聖也たちは言葉を失ってしまった。


『……んじゃ。あと二人』


 狙いは聖也のみのはず。だが、ジークは那由多も含めた全員を狩ろうとしている。

 今までの発言から、どうも自分より弱い奴をいたぶるのが好きで仕方がないらしい。


『せいぜい粘ってくれよなあ! あの雑魚君みたいにあっさり死んでくれるなよ⁈』


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