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サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME4 最悪の魔人とゼロスキルの戦士
46/95

謎の徒党と新参者

昨日は仕事が終わって寝落ちしてました(汗)


申し訳ございません。

「よし、今日の作戦を確認しよう」

「「「オーケー」」」


 ゲーム開始1時間前。聖也の学校と那由多の学校、その中間の位置にある河川敷。

 聖也、結、那由多、紬の4人は、スキャナーを装備し、戦いに備える。


「私と結ちゃんは一緒に行動」

「うん」

「僕と那由多さんは、他に協力してくれるプレイヤーを探す」

「よろしくね」


 前回の会議で決まった内容の確認から始まる。


「ピンチになったら私たちのところに来なさい。【無限機械兵(ムゲンマキナ)】で守ってあげる」


 紬が仲間になったことにより、【無限機械兵(ムゲンマキナ)】という戦力を得たのはデカい。

 自分の胸を軽く叩く紬を、聖也と那由多が頼もしそうに見つめる。


「いいなあ、せめて僕も、メインデッキか契約戦士(チャンピオン)がまともなら、そんなふうに言えるんだけど……」

「【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】! 俺には【次元跳躍(ディメンジョンリープ)】があるぞ、聖也よ!」

「それはありがたいんだけど……如何せん火力が……」


 自分の紙束同然のデッキの内容を思い出し、聖也が肩を落とす。


「聖也君、この前のゲームで何回目?」

「……? 3回目だけど」

「だったら朗報。3連続でライフを失わなかったら、デッキの中のカードを『複製』できるわよ」

「え、本当⁈」


 紬の情報提供に、聖也が飛びついた。

 言われるがままにスキャナーを操作すると、プロフィールの欄に『ライフボーナス』という新しい項目が出現している。

 その項目をタッチすると、デッキ内のカードがリストアップされ、カード名の横に『複製』のコマンドが浮かび上がった。どうやらここをタッチすれば、対象のカードを複製できるらしい。


「……」

「「「……あ」」」


 それはとても嬉しい情報なのだが、よくよく考えれば、紙束同然の聖也のデッキに、そもそも複製したいカードはない。

 聖也の顔を見て、状況を察した一同が、慰めるように聖也の肩を叩く。


「……『複製』権が持ち越せるなら、今すぐ複製しなくてもいいんじゃない?」

「そ、そうね! いつかいいカードが手に入った時のためにとっておきましょ!」


 結と那由多が気を使ったように、明るい声になるが、その優しさが返って辛い。

 まあ、現状を嘆いていてもしょうがない。今すべきは、目前の戦いに備えて気持ちを切り替えることだろう。


「……それもそうだね。作戦会議の続きでもしよう」

「じゃあ、アクシデントが起こった場合なんだけど――」


 聖也たちが、ゲームでどう動くかについて、詳細な内容の確認をしあう。



「……やっぱハーレムクソ誑し野郎じゃねえか」



 そしてそんな様子を、面白くなさそうな様子で、豪が遠目に眺めていた。


 何が面白ないかっていうと、ぶっちゃけていえば聖也の存在そのものだ。

 容姿端麗、頭脳明晰、運動神経良好。基本的に人当たりの良い性格で、彼という人間を疎ましく思う人間はほとんど存在しない。

 天が二物も三物も与えた存在。豪の目に聖也はそんな人間に映っている。


 別に他人がどれだけ優秀だろうが、自分の人生に影響を与えないのであれば、どうと思うことはない。

 問題は、聖也という人間が、豪という人間に少なからず影響を与えたということだ。

 要因は大きく2つ。


 1つ目の要因は、学年で行われた運動交流会の事。

 野球やサッカーなど、様々なスポーツをクラス対抗で行うイベントだ。スポーツを通しての交流が大きな目的である本イベントだが、種目ごとにポイントが設定されており、順位も出る。

 当時サッカー部に所属していた豪は、当然ながらサッカーの種目で出場。サッカー部員にとってはクラスで活躍する一大チャンスだ。


 そのチャンスを、当時は違うクラスだった聖也が、完膚なきまでに叩きつぶした。

 元々視野が広く、人読みが得意だった聖也は、豪へのパスを完全にカットし、豪のドリブルの癖を見抜き、その動きを徹底的に封殺した。


 これで聖也が少しでも勝利に喜べばよかったのだが(それはそれでウザいが)、当の本人は勝利など、さも当然かのように汗を拭ってから、大して喜びもせず、勝利に沸き立つクラスメイトの元へ戻っていったのだった。


 少なくとも、聖也にとって俺は『格下』。


 聖也はそんなつもりはないが、少なくとも豪にとってはそう映った。

 それが1つ目の諍いの要因だ。


 そして2つ目はというと――


「……」


 聖也のすぐ隣――で会話に混じる学園のマドンナ。夢野結。

 どう見ても彼女は聖也に惚の字である。


 なんであいつなんかが好きなんだ。


 豪は、胸の中でモヤモヤと渦巻く感情を、正直に言語化できない程度にはまだお子様だ。

 それでも、他の女子が、結という女子生徒が、聖也に対して好意を抱いているということが何よりも面白くない。


 半年前、突然プロゲーマーをクビになったと聞いたときは、正直驚いた。聖也という人間に、敗北という概念が存在しているとは思わなかったからだ。

 その後、どこかしょぼくれた態度で生きる聖也を見て、胸がすく半面、苛立ちもした。

 自分より何もかも持っている人間が、一回の失敗ぐらいで何シケた顔で生きてんだと思った。


 しかも、最近息を吹き返したかのように、自身に満ちた表情で生きてやがる。前よりも赤明るくなって――女を大量に侍らせて。


 忌々しそうに聖也たちを見つめていた豪が、聖也たちに、ある共通点を見つける。


(……なんだあの機械?)


 聖也、結、那由多、紬。それぞれの腕に装備されている謎の機械。

 あれか? あれが何か関係あるのか?

 そんな風に考えてた矢先――


「……あ?」


 ゴトンという音と共に、豪の目の前に全く同じ機械――『スキャナー』が出現する。

 突然現れた謎の機械に困惑しながらも、見よう見まねで聖也たちのように、腕に取り付ける。

 電源らしきボタンを押すと、--00:02:34.23—というカウントダウンが進みながら、謎のマップ画面が展開された。


 何だこれ。


 状況を理解できない豪は、こっそりと聖也たちに近づき、その会話の内容を盗み聞きした。


「……何か今日のマップ変じゃない?」


 端末の画面を見ながら、4人は一様に困惑した表情だ。

 前回の戦いまでは、スタート位置を決めるピンは、開戦直前までほとんどのプレイヤーが立てようとしなかった。自分のスタート位置を知られたくないからだろう。


 だからこそ、今回のマップは異常だった。


 まだ開始2分前だというのに、100本以上のピンが既に立っている。

 それも明らかに、3つあるエリアのうちの1つ――住宅街エリアを避ける形でだ。


「住宅街エリアって、結構人気のエリアじゃないの?」

「そうじゃなかったとしても……このピンの立ち方は異常よ」


 那由多の返答に、聖也も改めてマップを見る。

 何故こんな形でピンが立つのか。その可能性を必死に探る。

 そうあって欲しくはないが、考えられる1つ可能性は――


「……これさ、住宅街エリアに誰か誘っていない?」


 聖也の指摘に、皆黙りこくった。

 聖也の指摘は可能性としてはあり得る話だ。このようにピンを立てておけば、接敵を避けたいプレイヤーを、住宅街エリアに集めることはできる。

 ただ、そうなると――


「……そうなると、こいつら全員グルってことになるわよ」


 紬の指摘に、聖也も険しい顔になる。

 そう。その可能性が正しければ、最低50人×2グループ、最悪100人1グループのプレイヤーが徒党を組んでるということになる。

 もちろん、そのプレイヤーたちが聖也たちにとって悪であるとは限らないし、徒党云々の話はあくまで可能性だ。


 それでも――


「……それでも、契約戦士(チャンピオン)を召喚できない状態で、接触すべきじゃない。……罠かもしれないけど、住宅街エリアでスタートしよう」

「「「オーケー」」」」


 方針を纏め切り、聖也たちは自分たちのスタート位置を悟らせないよう、開始直前にピンを立てようと構える。


 そしてその会話を聞いていた豪も、会話の意味は分からないが、聖也たちの動きを真似るように端末をタッチできるよう構えた。


(……このピンってやつが付いてない所にタッチすればいいのか?)


「紬さん、結をお願いね!」

「そっちこそ、那由多を殺すんじゃないわよ!」

「聖也、那由多さん、無事でいてね!」

「取り敢えず、今日も生き残るわよ!」


 それぞれの健闘を祈りあってから、開始直前にピンを立てた。


 そして聖也たちの体が光に包まれ、デスゲームのフィールド【召喚都市・夜】に転送される。

 そして、聖也の目に飛び込んできたのは、見知った顔のプレイヤーだった。


「はぁ⁈ 何で⁈ 何で豪がここに⁈」


 聖也が驚いた顔で指をさすと、指をさされた豪も、指をさし返す。


「ハーレムクソ誑し野郎⁈ ……と」


 その横にいる、那由多に目をやった。


「愛人2号」

「愛人2号って何⁈」


 那由多の突っ込みを無視し、辺りを見渡して、何か異変に気が付いた豪が叫ぶ。


「つーかどこだよ、ここ‼」


 突如現れた、喧嘩中のクラスメイト。

 その困惑ぶりに、今日が初参戦であることを察した聖也たちは、豪を物陰へと連れ込み、自分たちがまきこまれているゲームについて説明するのだった。



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