戦いの後で
「……それで、紬さんとはその後どうなったの?」
戦闘があった翌日、聖也は那由多に誘われてファミレスで食事をしている。どうやらこの前の戦いのお礼らしい。
お礼とは言うが、勝てたのは那由多とアーサーの力も大きかったから、一方的におごられるのはちょっと申し訳ない気もする。
だけど「私に奢らせて」と譲らなかったから、この場はご馳走になることにした。
「ふふーん、それがね」
那由多はイチゴパフェを一口食べてから、手でピースを作ってどや顔になる。
「今度出るスタバの新作メニューで手打ちにしてやったわ。次の土曜で奢ってもらう予定」
「……それはなんというか、まあ……」
命を狙ってきた相手に対して、かなり甘いんじゃないか。
そんな感想が浮かんだ時、那由多が儚げに微笑んだ。
「……甘いでしょ。でも私たちもやり返してライフ奪ったんだし、これでおあいこ。それでも狙ってくるようなら、それはその時考える」
「那由多さんはそれでいいの?」
「いいよ。手段はあれだったけど、元々の動機は、私と友達でいたかっただけだから。お父さんを蘇らせたその後ことは分からないけど……それまでは紬とちゃんと友達でいたいもの」
どうやら紬とは普通に学校生活を続けるようだ。今後の関係は那由多と紬、二人で向き合って決めていくだろう。
どんな世界でも、自分の気持ちや相手と向き合うことのできる芯の強さ。これが那由多さんの強さなんだろうな。
改めて那由多という人間の強さを目の当たりにし、話を打ち切るようにジュースを口にする。
「改めてありがとう。私たちを助けてくれて」
「助けただなんて……むしろ僕の方が助けられてたし」
「もっと根本的な部分の話」
そういって那由多は胸に手を当てた。
その意味を口にするのは恥ずかしかったから、聖也は逃げるようにストローでジュースを飲む。
「……ねえ聖也君。口開けて」
「? あーん」
言われるがまま口を開けると、那由多がイチゴパフェをすくって、聖也の口にスプーンを突っ込んだ。
「っ⁈」
反射的に閉じた聖也の口から、那由多がゆっくりとスプーンを抜き取った。
……そのスプーンって、さっきまで那由多さんが使ってたやつでは?
つまり、これは――
「これからもよろしくね、聖也君」
那由多が太陽のように明るく笑って、イチゴパフェを食べるのを再開する。
途端に顔が熱くなって、聖也は慌てて顔を伏せてしまう。
そんな様子を見て、那由多がクスクス笑う。
……反則でしょ。それは。
今すぐ顔の熱を引っ込めようと、ジュースを飲もうかと思ったが、なぜか飲む気になれなくて、聖也は口の中に残ったイチゴパフェを味わった。
真っ赤なイチゴの酸味と、ホイップクリームの甘い後味が、暫くの間口の中に残り続けていた。




