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サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME3 守護の竜騎士と無限の機械兵
32/95

孤独(ひとり)じゃない

 

「っらあ‼」


 聖也は間一髪、那由多に襲い掛かる矢を、感電警棒(スタンロッド)で上へ弾く。


「「なっ⁈」」

「せ、聖也氏にリウラ⁈ 逃げたんじゃ⁈」


 聖也が戻ってくるのを予想していなかった、紬とロイドが驚きの声を上げる。アーサーでさえ予想外と言わんばかりの表情だ。


「せ、聖也君……?」

「逃げるよ! こっち!」


 聖也は感電警棒(スタンロッド)を投げ捨てて、リウラを抱えている手とは反対の手で、那由多の腕を強引に引きながらその場を後にする。

 アーサーもそれに続いて、その場を後にしようと駆けだした。


「……逃がさないよ‼」


 混乱しながらもロイドが、ヴォルバーンと共に高速で接近してくる。

 聖也は那由多たちを連れて、すぐ傍にあったドーム球場のゲートを潜った。


 そして、ロイドたちがゲートを潜ろうとしたタイミングで――


「【ビッグフェイス】‼」

「ぐあっ⁈」


【魔法:ビッグフェイス】のカードをスキャン。ロイドの顔面が瞬間的に巨大化し、そのままゲート入り口で引っかかってしまった。


「ちょっと! なに間抜けなことになってんのよ⁉」

「か、顔が引っかかって……」


 顔面をゲートの壁や地面に圧迫され、タコみたいになっている主人を、ヴォルバーンが困惑した様子で眺めていた。その隙に聖也は那由多たちを連れて距離を取る。




 そしてある程度敵を撒いたところで、聖也は呆然した様子の那由多に、真正面から向き直った。


「ごめん‼」

「……え?」


 リウラを地面におろしてから、頭を深く下げながら続ける。


「直前まで疑ってごめん‼ リウラの事話せなくてごめん‼ 一度逃げ出してしまってごめん‼ 那由多さんが僕のことを信じてくれてたのに、僕は那由多さんのことを信じていなかった‼」

「い、いいよ」


 那由多が涙声で返す。


「私が馬鹿だっただけだから。あいつの言うことが正しいよ。人を殺して勝ち残らなきゃいけないゲームで、誰かと協力なんてきれいごとだよ」


 那由多の目から少しずつ涙があふれ始める。


「……助けてくれなくていいよ‼ どうせ後で裏切られて辛い思いをするくらいなら、私は一人のままでいい‼ 一人でお父さんのいた世界を取り戻してみせる!」

「一人じゃないから‼」


 吐き捨てるように叫ぶ那由多の肩を、聖也は力強く掴んだ。


「僕のデッキはカスだし、リウラは首だけで役に立たないし! 那由多さんの力にはなれないかもしれないけど――孤独(ひとり)じゃない! 那由多さんの願いの先で、必ず僕も傍にいる!」


 ――お父さんを失った世界で、どんな思いで戦ってきたのか。

 僕が想像する以上に、孤独で、辛い思いでいたはずだ。

 それなのに那由多の周りには笑顔が溢れていた。僕以上に大きく変わってしまった世界の中、誰も責めず、自分らしく在ろうとし続けた。

 ほんの少しでもいいから、僕はこの人の――


「力になれなくても……心の支えぐらいにはなりたい‼ 那由多さんが辛い時、誰も支える人がいないなら、僕がその支えになる‼」


 そう力強く宣言すると、那由多は、言葉を詰まらせ、目を涙で滲ませながら、首を優しく横に振った。

 聖也の否定ではなく、まるで自分に何か言い聞かせようとするための動作。


「だから、那由多さん。これは……僕の勝手なわがままなんだけど」


 これは協力とかじゃない。聖也の一方的な、そう在りたいという聖也の願い。


「この先もずっと、貴方と一緒に戦っていいですか?」


 そうして真っすぐと那由多の目を見つめると、那由多が堰を切ったように、大きな声で、大粒の涙を流して泣き始めた。

 聖也を力強く抱きしめるその体は、しっかりと熱を帯びながらも、体の震えは止まっていた。


 聖也を支えに、膝から崩れた那由多の体を、聖也はそっと抱きしめた。


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