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サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME3 守護の竜騎士と無限の機械兵
30/95

在りたいように在る。

「……すまない。頑張ってみたのだが駄目だったようだ」


 魔方陣があった場所にリウラの生首が出現し、開口一番に謝罪の言葉を口にする。


 ……やっぱりダメか。




「「は……?」」




 リウラの姿を見た那由多たちが、間抜けな声を出した。


「ちょ、ちょちょちょちょちょちょちょ聖也氏⁈ 何これ、何なのこれ⁈」

「【戦神 リウラ】……の頭です」

「下は⁈ 頭から下どこに置いてきた⁈」

「うむ……まだ体の復活条件がわかっていないのだ……」

「な、なんで話してくれなかったの⁈ 話す機会ならいくらでも――」


 二人がかりで問い詰めてくる那由多たちに、「話すわけないだろう」とロイドが言い放った。


「そっちの状況は分からないが……私なら他のプレイヤーに、自分の弱点なんて教えない。君たちにいつ裏切られて、ライフを奪われるかわかったもんじゃないからね」

「私はそんなことしない!」

「口で言うならだれでもできる。要は那由多、あなた『信頼』されてなかっただけでしょ」


 紬の言葉が那由多の心を刺した。

 わなわなと震えながら、那由多が聖也の顔を伺ってくる。


 違う、最後は話そうとしたんだ。でも話す時間がなかったから――


 そんな弁明が思わず引っ込んでしまうほど、那由多の目は光を失ってしまっていた。


「……ごめんね。私のゴタゴタに巻き込んで」


 絞りだすように呟いて、那由多は俯きながら、聖也に背を向けた。

 前髪で表情は見えなかったが、何かをこらえるように、唇を強く噛んでいたのだけは伺えた。


「……あーばかばかしー! こんな生首ども護衛してられるかっての!」

「痛っ⁈」


 アーサーが動けないリウラを、聖也に向かって蹴り上げてきた。


「さっさとそいつ持って失せな」

「いや……でも……」

「失せろって言ってんだよ」


 声を低くして顔を近づけてくるアーサーに、聖也もリウラも言葉を失ってしまう。


「……()()()()()守ってやれねーんだわ」


 そう小さく呟いて、アーサーは那由多の傍へと歩いていった。

 アーサーが、震える肩にそっと手を置いた。

 那由多の心は、もう限界に見えた。


 ヴォルバーンの溶岩弾と共に、戦いが再開された。

 激しい爆発が辺りに巻き起こる。


「…………っ!」


 聖也は巻き込まれないよう、リウラを抱えながら、全力でその場を走り去った。


 逃げるときもずっと、那由多の暗い顔が、頭に張り付いて離れなかった。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 ある程度距離が離れたところで、聖也はリウラを下ろして、スキャナーの画面を確認した。

 ライフノルマはあと3つ。

 那由多たちが生き残るには、ノルマが消費されるまで持久戦を挑むしかないわけだ。


「……今からでも体生えてこない?」

「善処はするが、期待はしないほうがいい」


 そんな上手いこといくわけないか。

 聖也はがっくりと肩を落とし、その場に座り込んでしまった。


「……結局、那由多さんを傷つけただけになったな」


 去り際の那由多は震えていた。

 光を失った目で虚ろに自分を見つめる様は、裏切られたと言わんばかりの顔だった。


 いや、那由多のことだから、裏切ったとかじゃなくて、『信頼』されてなかったことがショックだったんだろう。


 ――最初から僕が那由多さんを信じていれば、那由多さんを助けることができてたのだろうか?


「……」


 いや、それは驕りだな。


 聖也の口から、自虐じみた息が漏れる。


 そもそも聖也も、最初は那由多を、ゲームのことをよく知っているプレイヤーの一人だとしか認識していなかった。

 那由多のことを知ろうと思ったのも、協力するかどうか――判断する都合上、成り行きでやったことだ。


「どうせ力になれないんだから、もっと早くに断っておくべきだった」


 そんなことを呟くと、リウラが如何にも不満そうな顔で、聖也を睨んでいた。


「……なんだよ」

「ほんとにそう思っているのか?」


 リウラが重ねて尋ねてくる。


「那由多の手を取ったこと――協力を受け入れたことを後悔しているのか?」


 リウラの問いに、聖也は少し間をおいてから、強く首を横に振った。


「……してない!」


 聖也が後悔しているのはリウラの事を話せなかったことで、結果的に那由多を傷つけてしまったことだ。


「そうだな。那由多のいう協力とは、俺の力で那由多を守ることだったか?」

「……違う。那由多さんのいう協力は――」


 ――本当はリウラがどうとか、護衛とかどうでもいい。消えた人たちの復活の為――私たち協力しない?


 同盟を組む前の、那由多の言葉が頭をよぎる。


 ――そうだ。那由多さんが僕に協力を申し出たのは、僕が那由多さんと同じ志を持っていたからだ。

 僕という人間を信じてくれたから、あの申し出があったんだ。


 那由多さんが欲しかったものはきっと――


「聖也。あとは選択するだけだ。……今はできるかできないかは考えなくていい」


 リウラが聖也に、ニッと笑って見せる。


「お前はどうしたい? 疑って、一度は手を取って、傷つけて。お前の中に残った意志はなんだ? お前の抱いていた疑心も後悔も、今一番、大事な選択をするための糧なのだ」

「それなら答えは決まってる……けど」


 聖也がわざとおどけた口調で、やれやれと首を振った。


「お前の体が元に戻るだけで、イージーな選択なんだけどな~」

「ぐうぅ……‼」


 痛い所を突かれたリウラが、苦し気な顔で口を噤んで唸った。

 本気で苦しむリウラを見て、聖也は思わず笑い声をあげてしまった。


「……今回も勝てる見込みないけど、いい?」

「負けた時のことは負けた時考えればいいさ」


 先のことは分からない。勝てる見込みなんてない。


 それでもきっと、それは望む未来から、逃げていい理由なんかにはならないのだろう。

 何かを理由に、自分に後ろを向くのは、あの時やめたはずだ。


「在りたいように在る。それが俺たちの強さだろう」


 ――心の底から、那由多さんたちの力になりたい。

 なれるかどうかじゃない。叶えるためには動かなきゃ。


 リウラの言葉に強く頷いて、聖也はリウラを担いで立ち上がる。


「……あっちだな」


 意志が決まったらあとは行動に移すのみ。


 爆炎が立ち上る戦場へ、聖也は全速力で駆けだした。


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