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サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME2 消えかけの幼馴染と【意志と選択】
18/95

首だけに戻った最強と、これからの目標

「……」


 次の日、聖也は朝ごはんを食べて、何日かぶりの学校に向かった。

 来たのはいいものの、校門の少し前まで来て立ち止まってしまう。


 ――昨日、結のログアウトを確かめていない。


 ライフノルマが0になるのは一緒に確認していたし、周囲に結を狙う人影も確認なかったはずだから、十中八九生還はしているはずだ。

 そう思っているのに、なぜか足が動かない。


「おっす。元気出たか」


 背後からぽんと手をかぶせられ、そのままよしよしと頭をなでられた。担任の教師である響子だ。


「……すいません。ご迷惑かけました」

「迷惑なんてかけてないだろ。お前が来る気になったなら何よりだ」


 ためらう聖也の背中を、景気づけるかのようにバンと叩くと、聖也を先導するかのように、少しゆっくりとした足取りで歩きだす。

 響子の少し後ろを歩いていき、教室の窓を見上げた時だ。


「……え? おい? どうした聖也⁈」


 聖也が突然泣き出したので、響子が心配して駆け寄った。


「大丈夫か? まだ元気が出ないなら無理して学校に来ることはないんだぞ?」

「……違うんです先生……『大丈夫』だったんです」

「……は?」



 教室の窓から、結が手を振って微笑んでいた。

 生きていた。無事だった。守りきれた。

 僕の意志が、戦う選択が結も、僕も守ったんだ。


 うれし涙を袖で拭い、聖也は教室へ向かって駆けだした。


 この先自分がどうなっていくかなんてわからないけど、今この瞬間だけは心から喜んでいいはずだ。



 昼休み。聖也と結は人が来ないであろう屋上で、この世界に確かに存在している喜びを語り合った。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ……のはよかったのだが。


「ご機嫌そうだな、聖也よ!」

「何で首だけに戻ってんのぉ⁈」


 学校が終わって家に帰った聖也を、首だけのリウラがお出迎えする。


「よくわからん。気が付いたらこうなっていた」

「よくわからん、じゃないよ! これじゃあまた戦えない状態に逆戻りじゃないか⁉」

「確かに」


 愕然とする聖也に対して、リウラは何故か落ち着いた様子だ。


「まあ、体が元に戻ると分かっただけでも前進ではないか!」


 そう言ってニコニコ笑うリウラに、聖也は呆れた視線を投げた。

 ポジティブもここまでくると腹立たしい。だが——


「……まあ、そういうことにしておこう」


 その前向きな部分に大きく救われたのも事実。これ以上問い詰めるのは止めておくとしよう。


「そういえば、体が戻る直前に……少し懐かしい感じがしたぞ」

「懐かしい感じ?」

「うむ。ほんの少しだけ走馬灯のように、誰かの記憶が浮かんできた。……()()()()()()、俺の姿が」


「……どういうことだろう?」


 リウラの一時的な復活と何か関係があるのだろうか?

 誰かから見た姿という点に違和感を覚えたものの、その記憶と復活が関係あるなら――


「僕らの当面の目標は、リウラの記憶を取り戻すことになりそうだね」

「違いない」


 生き残るためにも、リウラの復活はほぼ必須。

 取り敢えずの目標は、リウラの記憶を取り戻すこと。

 そしてもう一つ。最終的な自分の目標は――


「ねえリウラ」


 聖也は微笑みながら腰を落として、地面に接しているリウラと目線を合わせた。


「僕は探すよ。このゲームを終わらせる方法。これ以上僕の大切な皆が傷つかないで済む方法……そしてできたら消えちゃった人を元に戻す方法を」

「それは素晴らしい……が、それは誰のためだ?」

「決まってるだろ」


 リウラの問いにフフッ笑みを漏らして、聖也は力強く、親指を胸に突き立てた。


「僕が大好きな皆と……皆を大好きな()()()だよ」

「そうか。それならいい答えだな」


 どんなときも僕と皆、両方幸せにする選択を探す。


 この先何が待ち受けているかはわからないけど、自分の中にこの意志の軸がある限り、きっと大丈夫だ。

 転んでも躓いても、胸を張って前に進む。


「絶対生き残るよ。この戦い」


 強い誓いを胸に、聖也とリウラは強く頷きあった。


 窓から差し込む夕焼けの光が、二人の体に熱く染み込んできた。


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