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サモナーズロード ~召喚士の王~  作者: 糸音
GAME2 消えかけの幼馴染と【意志と選択】
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最強の必殺技

 ディードの戦いを援護しようと銃を構える少年――その背中に向かって、聖也は勢いよく駆けだして、無防備な背中にタックルをかました。


「「――っ⁉」」


 誰もが、リウラでさえも戦えない聖也が逃げたと考えていた。

 聖也の存在は誰の意識上にも存在していない。


 ――だからこそ、この背面強襲(バックアタック)は刺さる!


 不意の一撃で、少年は銃を落としながら、うつ伏せになって倒れこむ。

 少年が立ち上がるより先に、聖也は少年の上半身に、体全体を交差させるような形で覆いかぶさり、体全体を使って動きを封じた。


「いくら強いカードを持っていても、使えなければ僕と同じだ‼」

「てめえ……逃げたはずじゃ⁈」

「ひふぼりうあ‼(行くぞリウラ‼)」

「うむ‼」


 あらかじめ片方の手に握りしめていた一枚のカードを口にくわえて、聖也は口でカードをスキャンする。


「死なない程度にぶっ飛ばせ‼」


 リウラは力を振り絞って、ディードを足で大きく突き飛ばし、大きく腰を落として薙刀を居合抜きのような体制で構えた。


『――必殺技(アルティメット)


 契約戦士(チャンピオン)のスキルは基本スキルが3つと、必殺技(アルティメット)スキルの計4つで構成される。

 基本スキルは契約戦士が任意で発動できるが、必殺技は、対応の『必殺技カード』をスキャンすることで初めて発動可能になる。


 スキャナーからアナウンスが流れ、聖也の心臓が大きく脈打つとともに、膨大なエネルギーが、聖也からリウラに向かって流れ始めた。

 自分の体から溢れてくるエネルギーが何かは分からない。

 だが、リウラに集まるエネルギーが生み出す大きな空気の揺れが、リウラが繰り出そうとしている必殺技の威力を予感させる。


「――『標的指定(ターゲット)』」


 リウラが何かつぶやくと、ディードと、少年と、聖也の体が薄い光に包まれた。


 ……………今、『ターゲット』って言ったよね?


「おい待てリウラ⁉ それ僕も狙っていないか⁈」

「静かにしてくれ。狙いがそれる」

「だから僕も狙いに入ってないかって聞いてるんだよ⁉」


 リウラは慌てる聖也を無視して、精神を研ぎ澄ますようにゆっくりと目を閉じる。

 リウラの全身に溜まっていたエネルギーが、急速に薙刀の刃に向かって集まり始めた


 ――全身の力を刃に集中させ放つ、回避・防御不能の必殺の斬撃。


 リウラの必殺技に関するスキャナーの説明はこんな感じだった。

 聖也にわかるのは、これが強力な攻撃技というニュアンスだけだ。


 ――こうなったらリウラを信じるしかない!


 聖也は腹をくくり、大技に備えて目を力強く瞑る。


「【深海への捕縛錨(アビサル・アンカー)】!」


 リウラの必殺技を阻止しようと、ディードが起き上がり次第攻撃を仕掛けてくるが——


「もう遅い」


 刃にエネルギーを溜め終わったリウラが、体全体を使って、豪快に薙刀を振り払う。


「【ゼロフレーム】」


 神速の一太刀が放たれたその瞬間。リウラに向かって放たれた攻撃が、壁が、天井が、床が――リウラがマークを付けたもの以外のすべてが。同時に発生した無数の斬撃によって深く切り刻まれた。


【ゼロフレーム】―― 一定の空間内に存在する、狙ったもの以外の全てを、如何なる装甲や防御魔法を無視して切り刻む、視認不能(ゼロフレーム)の必殺技。


「グアアァア‼」


 唯一マーキングされていなかったディードの腕が切り刻まれ、虹色の光となって消滅していく。

 傷口を押さえ項垂れるディードに、リウラが薙刀を突き付けた。


「腕一本は主の腕の借りと、授業料だ。結も聖也も二度と狙うな」


 建物全体が切り刻まれたことで、ショッピングモールの崩壊が始まる。


「ログアウト‼」


 聖也はすぐさまログアウトのボタンを押して、現実世界に帰還した。


 必殺技の発動前にノルマ自体は達成していた。最初の戦闘でリウラに相手を殺す気がないことは分かっていた。今後の牽制も考えて必殺技(アルティメット)を発動したのはいいが――


 まさかあんなに強いなんて。




「帰ってこれた……」




 見慣れた天井、デスクトップPCやゲームソフトの置かれた、学習机も兼ねたゲーミングデスク。

 聖也は自分の部屋に帰ってこれたことを実感する。

 消滅された片腕は元通りになっていた。その場で握ったり開いたりを繰り返し、問題なく動作することを確認した。


「もう……今日は動け……な……」


 そして意識をもうろうとさせ、ベッドに掛布団の上から倒れこんだ。


 あれだけいろんなことがあったのに、何の夢も見なかったぐらいには深い眠りに入っていた。


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