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6話「実家へ帰り」

 私はクリステと共に実家へ帰ることにした。


 一人で帰るのは勇気がいる。

 でも彼となら大丈夫。

 自分だけではできないことでも誰かと一緒ならできるのだ。


「シェリア!?」


 一番に出会ったのは母だった。

 彼女はかなり驚いた様子で。


「お父さん! お父さん! シェリアが! 生きていたわ!」


 私を見るや否や、すぐに家の中へと走っていった。


 そして。


「シェリア……生きていたのか」


 数分後、父が家の前にまで出てくる。


 彼は難しい顔をしていた。


「お父様……」

「婚約破棄されたそうだな」

「申し訳ありません」

「死んだと言われていたが、どうやらそれは偽情報だったようだな」


 家に入ることを拒否されるかとも思ったけれど、案外そんなことはなく。父は私が家の中に入ることを静かに許してくれた。また、クリステとのことも説明するときちんと聞いてくれて、彼のことを強く拒否はしないでくれていた。


「シェリアが生きていて良かったわ~。待っててね、お茶持ってくるから。しかし驚いたわ、まさか、シェリアがあのクリステくんと再会していたなんて~」


 お茶を飲んで、両親と話して。

 懐かしい場所で身体を流して。


 そして。


「シェリア、クリステくんと一緒に暮らすの~? ここにいないの~? お母さん寂し過ぎるわ~」

「本当は父の気持ちとしては嫌だが……色々可哀想なので今回だけは自由を許そう」


 両親に見送られ、クリステと共に彼の家へと帰る。


 正直意外だった。

 これからもクリステと暮らしたい――そんな希望が通るなんて、夢にも思わなかった。

 母はともかく、父には絶対反対されるだろうと思っていた。

 だからこんな風な展開になったというのはかなりの驚きであった。


 でも、嬉しい。


 これで、これからも、彼と共に歩める。


 帰り道、私はふと思い、クリステの瞳へ目をやり「どうして許可してもらえたのかしら……」と言ってみた。すると彼は「どうしてだろうな」と呟いた。が、少しして、「俺の気持ち、伝わったかもな」と続ける。何の話!? と思っていると。


「君が身体を流している時にお父さんと話したんだ」

「えっ。そうだったの」

「本当の気持ちを話した」

「本当、の……?」


 多分今私は怪訝な顔をしてしまっていると思う。


「俺さ、実は、シェリアのことずっと気になってたんだ」

「ええっ!?」


 頭を殴られたような衝撃。

 何が起きたのか分からず脳内がひりひりする。


「でも王子と婚約したと聞いて、これは駄目だなって、諦めようと思っていた」


 朝日の中、二人並んで道を歩いていく。


 人生もこんな風に行けたなら――なんて思って、あり得ないあり得ない、と自ら掻き消す。


 夢はみるものじゃない。

 期待しても傷つくだけだ。


「そんなことになっていたなんて……」


 平静を装って返す。


 でも、本当は……。


「けど、婚約を破棄されたなら話は別、だろ? それって、もう、立候補しても問題なしってことだろ」

「それはそうね」

「だから取り敢えず積極的にいくことにしたんだ」

「知らなかった……」

「ま、あまり効果はなかったみたいだけど。幼馴染みだから信頼してもらえているのを利用してるみたいでちょっと罪悪感あるし」


 彼は立ち止まる。

 私も足を止めた。


 視線が重なる。


「ここで言ってもいいかな」

「……ええ」

「本当の気持ちを伝えたい――シェリア、君と一緒に生きていきたい」


 ロマンチック……なのだろうか?


 いや、べつに、それが嫌というわけではないのだけれど。

 でもいざ実際に想いを伝えられたら、なぜか、ロマンチックだとは思えなくて。

 おかしな感じがしてしまうのだ。

 まるで別世界で息をしているような、そんな感覚。

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