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10話「島流し」

 その後この件は父に伝えた。男たちに襲われたこと、クリステが怪我させられたこと、そして男らが王子の命令だと言っていたこと、を。すると父は対処を考えると言ってくれて。その後父から国王へ話を流し相談してくれることとなった。


 それから数ヶ月。


 男らの主張が事実であったことを確認すると、国王はオーガンを島流しの刑に処した。


 何でも、オーガンは自分を拒否した私を恨んでいたそうで、シェリアは拘束しその邪魔をする者は殺すようにという指示を反社会的な組織の男たちへ出していたらしい。


「シェリア殿、このたびは大変申し訳ないことを息子がしてしまいました。私から謝罪します。申し訳ありませんでした」


 私は思わぬ形で城へ戻ることになった。国王から謝罪したいという申し出があったのだ。あまり良い思い出のない場所、城へは正直もう行きたくはなかったのだけれど。でも、国王からの誘いの対象はクリステもであって、彼が同行すると言ってくれたので城へ行くことにした。


 国王に頭を下げられるというのは何とも言えない心境だ。


 悪いことをしたのは国王ではない。

 親という意味での責任はあるかもしれないけれど。

 でも彼を責める気にはならない。


「陛下、どうか、そのようなことはおやめください」

「しかし」

「私たちの身の安全が保障されるのであれば、これ以上何か言う気はありません」


 実際そうなのだ。

 こちらから何か仕掛ける気は一切ない。

 何もなければそれでいいのだ。


「シェリア殿……」

「どうか、彼という鎖から解放してください。もう絶対に手を出さないと、そう約束してください」

「約束しよう」

「万が一破られた時には――」

「私の資産をすべて渡し償います」


 謝罪を受ける会はあっという間に終わった。


「思ったよりすぐ終わったな」

「そうね」


 クリステは少し不満そうだったけれど、私は長時間になると疲れてしまうから短めの時間で良かったと思っている部分がある。


「許せるのか? あれで」

「クリステこそ」

「俺は、まぁ……ああいうのは平気だよ」

「なら私にこれ以上彼を責める理由はないわ」



 ◆



 あれから数ヶ月が経ち耳に入ってきたオーガンのその後、それは、とてつもなく残酷で辛そうなものだった。


 彼は悪質な犯罪者を送る島へ送られ、そこで一人の人間として生きていかなくてはならなくなった。そこではある意味皆平等で、王子だからと特別な対応をされるわけではなくて。王子として大事に育てられてきた彼はそんなところへ入れられればすぐに心を病んでしまったそうだ。特に、周囲から王子ゆえに『よわっちいやつ』と言われることが心を痛めたようで、一週間も経たず彼は心を病みきってしまったらしい。


 だがそれでも強制労働は免除されない。


 四肢を失ったわけではない。

 知能を失ったわけでもない。


 だからそんな配慮はない。


 彼はこれから先ずっと壊れきった心を抱えて奴隷のように働かされ続けるのである。


 周囲に馬鹿にされながら毎日朝から晩までこき使われるのだ。


 かつて王子であったオーガンだが、もはや王子どころか人ですらなくなった――その島にいるということは人として扱われないということだから。


 ま、精々、人権を失ったまま生きてくれ。


 それだけしか思わない。


 軽い気持ちで人を傷つける彼にお似合いの結末だろう。

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