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3日間だけの恋人

作者: 五三竜

ある日・・・目の前で女の子が車に轢かれそうになった。いつも軽く考えてた。目の前で車に轢かれそうな人がいてもすぐに助けられると。でも、いざそうなってみると足が動かなかった。それでも勇気を振り絞って助けた。そして目の前が真っ白になりそこで意識は亡くなった。

目が覚めると病院にいた。身体中にはコードのようなものがついてある。

「うっ・・・ここは・・・」

体を起こすと自分と同級生くらいの女の子がいた。その子は、心配そうな目でずっとこっちを見ていた。

「君・・・は?」

とそこで不意に記憶がよみがえった。車に轢かれそうになっていたところを助けた。当然助けたあと自分は避けきれず轢かれた。そんな時助けた女の子が近くに来て病院まで運んでくれたようだった。

「目が覚めた?」

「う・・・ん」

すると突然女の子は泣き出してしまった。

「うっうっ・・・ごめんなさい・・・私のせいでこんなことになっちゃって」

「気にしてないよ。君を助けられただけでもいいことだよ」

すると女の子は、突然ベットの上に乗って来て言った。

「それでは私の気がおさまりません。どうか罪滅ぼしをさせてください。・・・そうです!私を・・・3日間だけあなたの彼女にしてください」

それから俺とこの子の3日間の恋人生活が始まった。

・・・次の日からそれは始まった。退院した日にその子と同棲することが決まり切れていた生活必需品を揃えるため1日時間を貰ったのだ。そしてその子が家のインターホンを鳴らす音が聞こえた。

「あのー、すいませーん。今日から恋人にならせてもらうものですけどー・・・」

そんな声が聞こえたのですぐに外に出た。

「よく来たね。さぁ、上がっていいよ」

そういうとその子は靴を脱いで部屋に入ってきた。

「じゃあ、まずこれから3日間一緒に住むけどその前に自己紹介しないとね。俺の名前は、九位一(くいはじめ)。君の名前は?」

「私は二宮令三(にみやれいさ)よろしくお願いします」

「こちらこそ。よろしく」

令三は礼儀正しく深々とお辞儀をした。

「よし!自己紹介も終わったところで片付けするか。荷物とかいっぱい持ってきただろ」

「いえ、そんなに持ってきてはいません」

「そうなの?ちょっとバックのなか見ていいかな?」

「はい。いいですよ」

そしてバックの中を覗いてみると、確かに道具はかなり少なかった。

「本当だ。歯ブラシとかもないけどどうするの?俺と一緒のやつ使ったりする?」

冗談ぽく言ってみた。すると・・・

「はい・・・一緒のものを使わせてもらおうかと・・・ダメですか?」

「えっ?あっ、やっ、だ・・・ダメじゃない・・・よ」

そんなことを言われ曖昧にしか返事できなかった。

「はぁ・・・これから3日間どうなるんだろ・・・」

その夜・・・

「今日は楽しかったな」

「そうですね。ショッピングに二人で行くの初めてですしね。欲しかったものとか買ってくださってありがとうございます」

「かまわないよ」

令三は嬉しそうに笑った。今日はショッピングに行った。その後、レストランでご飯を食べさらに何か買い物をして帰ってきたのである。

「夕飯作るけど何がいい?」

「一くんが作るものならなんでもいいよ」

そう言って令三は微笑んだ。・・・それから30分後料理がでてきた。鮭のムニエルである。

「わぁ、美味しそう。いただきます!」

「いただきます」

そう言って2人は箸をつけた。

「美味しい!これ最高だよ!」

令三はそう言って目を輝かせた。

「そう言って貰えると嬉しいよ」

それから2人の楽しい食事の時間はすぐに終わった。

「ご飯美味しかったです!それとこの後どうしますか?」

「まぁ普通はこの後風呂に入るな」

「それでは私もご一緒させてください」

呆然としてしまったが、令三が泣きそうになっていたので受け入れることにした。

・・・それから1時間がたってやっと風呂から出てきた。最初は直ぐに出ようと思ったのだが令三からなかなか出して貰えず待ってから出てきたのだ。風呂から上がりふと思った。なぜ令三は俺の彼女になるのか?それも3日間だけ。全く令三にはメリットがない。何か裏がある・・・この時初めて疑いだした。

次の日はなるべくお金を使わないようにした。それになるべく人通りが多いところを中心としてデートに出かけた。何故か無性に人気のないところに誘ってきたが、行きたいところがあると言って誤魔化した。そしてその夜・・・ついに部屋で2人きりになった。

「おい、令三。話がある」

「何でしょうか?」

「お前・・・何を考えている?俺をはめようとしているだろ?」

すると令三は少し震えた。

「何か心当たりがあるんどな」

すると令三は震える声で言ってきた。

「なんのことでしょう?全く分かりません」

一は少し黙ったあと話し出した。

「・・・俺は、人のことを疑ったりしない。だが・・・もし、俺の事をはめたりするなら俺は容赦はしない。そういう風に生きてきた。明日で3日目だ。最後の時まで疑わないでおくが、もし何かあったなら容赦なく帰り打つからな」

そう言って冷たい敵でも見るかのような目で言った。それから数分がたって2人は寝ることにした。

・・・そして夜が明けた・・・

「おはようございます・・・」

そう言って令三が入ってきた。一は何となく頷き朝食を摂ることにした。

「さて、今日はどこに行く?」

「・・・」

令三は喋らない。一は令三の前に立って目を合わせて喋った。

「昨日も言ったが、俺はお前を疑ったりしない。約束する。だから今日1日くらい明るく行こうぜ」

そう言うと、令三は顔を上げ明るい顔で笑った。

それから支度をして出かけた。遊園地だ。ジェットコースターや、コーヒーカップ、お化け屋敷、色々なところに行った。

「日が落ちてきたな」

一はそう言って遊園地を出た。あとから令三も出てきて少し外を歩いた。すると令三が公園をみつけ、公園のベンチに座って深刻な顔になった。それを見た一はすぐにベンチに座って話を聞くことにした。少しして、令三が話し出した。

「実は、私は今日あなたの前から消えます。本当はこのことを昨日話すつもりだったんですけどなかなか2人きりになれなかったので」

「そうか・・・そうだな、3日間の約束だからな。でもいつかまた会えるだろ」

「そうじゃないんです!今日で本当に会えなくなるんです!

どんな事をしても、どこに行っても会えなくなるんです!」

「・・・・・・・・・」

何もいえなかった。しかし、何となくわかった気がした。

「何があったのか?」

一は聞かずにはいられなかった。令三は少しうつむいたが話し出した。

「あれはあなたと出会う1週間前、突然の事故で私は入院してしまいました。初めは意識があったんですが1日経つと意識を失ってしまいました。目が覚めるとあの場所にいて、一くんに助けてもらいました・・・」

「そしてその日俺は病院へと搬送された。そしてその時、自分がまだ入院していてもうながくは生きられないことを知った。そう言うことか?」

「はい・・・そうです」

一はあまり驚かなかった。こういうのには意外と慣れていたと言えば嘘になるがそれでも何となく予想はついた。

「その話が本当なら、令三は今何なんだ?」

「分かりません。ですが、前にも1度同じことがあってその時に霊体に似た者だと医者から言われました」

令三はどんどん暗くなっていった。今までに無い体験だった。色々な情報が一の頭の中を駆け巡っていったがそれでもやはり一つだけ諦められなかった。

「一つだけ納得できないことがある。それは・・・」

令三は恐る恐るといった感じでこっちを見ている。

「・・・・・・・・・お前が死ぬ事だ!!」

一は大きな声で叫んだ。すると令三は驚いて後ろに転げてしまった。それでも一は続けて言った。

「これが最後なんて言っちゃダメだ!もし、今日で死ぬと言われても最後まで足掻いて見せろ!」

令三は立ち上がるとすかさず言い返した。

「そんなこと言ったって、どうしようも無いものもあるのよ!死にたくなくても死んでしまう時があるの!だから無理なこと言わないでよ!」

「それは出来ない!なぜなら、今日はまだ3日間の中に入っているからだ。今日で死んでしまうなら死なないように見守ってやる。約束したろ、今日1日は明るく行くって。だから最後まで足掻いて生きて、明日明るく送り出してやるよ!」

そういうと令三は泣き出してしまった。

「そろそろ、時間みたいです。次会うときはあなたの前です」

そう言って微笑むと令三は光となって消えてしまった。そしてすぐに病院に行き令三の病室に向かった。そこに着くと、令三ベットの周りを家族が見守っていた。

「令三!」

家族達は一を見てすぐに察したらしい。泣きながら2人を見つめるだけだった。家族達はしばらくすると見ていると辛いと言って帰ってしまった。それでも一だけは帰らずにずっと手を握っていた。しばらくして目が覚めると、もう朝になっていた。どうやら手を握ったまま眠ってしまったらしい。

「令三は?」

顔を上げるとそこには、いつものように明るい笑顔の令三がこっちを見ていた。

「あっ、起きちゃった。可愛い寝顔が見れたのに。私あの時一くんがいなかったら私諦めてた。でも、一くんがいたから足掻くことが出来たよ」

そう言って令三はおちょくってきた。

「それはとても良かったな。ところで令三、3日間の恋人生活はもう終わったよな?でも俺まだ別れたくないな。だから、これからもずっと一緒にいてくれないかな」

突然の告白に令三はびっくりしたが自信に満ちた笑顔で

「はい」

と返事をした。そしてその時の笑顔がこれまでで見た中で1番の笑顔だった。




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