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シャルロットの災難  作者: violet
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婚約するということ

シャルロットの過去話があります。

シャルロットの部屋付きのメイドにはなりたくない・・・・


王宮の騒めきから離れた王宮の部屋に男達が集まっていた。

その中の紅一点がシャルロットだ。

部屋の外には騎士が警備に立ち、やけにものものしい。


男達が見ているのは、ナイジェルに掴まれ赤くなったシャルロットの腕である。

テオドアが水で冷やしたハンカチを、シャルロットの腕に巻く。

ナイジェルにしても、そんなに強く握ったつもりはないが、病弱と聞いていたのは本当だったのか、と思い直していた。

暗闇の庭に来る女なんてろくな女はいないという先入観から、自分かウォーレンを追いかけて来たと思っていた。

王子も公爵も伯爵も好き、という女が多いからだ。


「身体が弱い女性になんてことをするんだ」

バーナードがたたみかけるようにナイジェルを非難するのを、弟はどう(さば)くのかとシャルロットは静観している。


「殿下、姉は身体が弱いという噂があるようですが、父の手伝いができるように身体に支障はありません。

ただ、部屋で過ごすことが多く、活動的な女性よりは虚弱かもしれません。

男性との接触は家族だけで、そのまま嫁に出せると思っていたのですが」

単に運動が足りない引きこもり、というのを聞こえ良く言っているだけである。


ここにきて、シャルロットもテオドアの言いたいことが分かった。

慰謝料がっぽり!

男性と夜の庭園にいるふしだらな女性、もしくは男性に夜の庭でよからぬことをされた女性という噂。

傷物になったと噂を利用して、慰謝料請求よ!

伯爵子息より公爵本人の方がお金を動かせるよね、狙うは爵位持ちのパーシバル公爵。

男性が好みという秘密も慰謝料に上乗せして、いくらとれるかな、用水路工事確保!


結婚を覚悟していたから、嬉しくってしかたない。

愛読書で閨の知識はあるし、興味もあるから一度ぐらい夫婦生活を体験してもいいとは思ってたけど、この部屋では未来の夫が来なくなる、と何度テオドアに言われたか。

いかんいかん、表情に出してはいけない、神妙な面持ちで下を向く。

「テオごめんなさい、領民の為に支援してくれる家と結婚しなければならないのに」

そして上目遣いに見れば王子と目が合う、いえ狙いは王子じゃないんだけど。


「いや、何もなかったのだから僕が」

王子でしゃばるなー、貴方だけはダメなのよ。リスクが大きすぎる。

「殿下、すでに姉が夜の庭園で男性と会っていたと、心無い噂が出ているかもしれません。

とても王族に嫁がせるわけにいかないでしょう」

噂がなくとも、私が噂を流します! とテオドアに心の中で応援するシャルロット。

そして、テオドアがシャルロットの腕をちらっと見る。


ブラボー!

弟よ、無言のプレッシャーだね。

この中で我が家は一番の格下、姉の噂の原因を再確認するわけだ。


コホン、とナイジェルが咳払いして、テオドアに向き合った。

「シャルロット嬢のケガは俺の責任である。

飾っていれば極上で、面白そうな姉君の婚約者に立候補しよう」

「まて、あの場には僕もいたんだ。僕が婚約者になる」

ナイジェルに負けずと、ウォーレンが手を挙げてくる。

「いや、彼女は抵抗したからケガしたのだ。公爵の問題だけで、彼女に瑕疵(かし)はない」

あれ、殿下、おかしなことになってませんか?

あの場に来た殿下や他の方の認識は、公爵の狼藉(ろうぜき)? 

それどころじゃなくって、その認識を誰も否定していない。

第一、殿下の参入はいりません。


ちょっと待て、慰謝料もらえない?

責任は婚約ではなく、慰謝料でお願いします。

婚約よりも慰謝料の方が早く現金になるので。


「大変ありがたいお話です」

ですが、と続けるテオドアはシャルロットに話すなと目で釘をさす。

「正直にいいますと、我が伯爵家は干ばつの影響が大きく、姉の婚姻は援助前提になります。

いくらで姉を買っていただけるか、ということです」

ストレート過ぎる言葉に、男性陣が目を見張る。


こんな言い方をするけど、いい弟なんですよ。

いつだったか、まだ裕福で王都のタウンハウスに住んでいて、レディースメイドもたくさんいた頃をシャルロットは思い出す。

引きこもりのシャルロットは、おやつも部屋、しかもベッドで寝転びながらだ。

食べ残しが床に落ちていて、それでネズミが部屋で繁殖してしまった。

ベッドの下にいっぱいいるネズミを見つけたメイドの屋敷中に響くような悲鳴で、テオドアが飛んできてくれたのだ。

それから猫を放って、猫がネズミを捕まえて食べているのを目撃して失神したメイドに、口止め料をあげていたなぁ。

その猫は一緒に領地に行きましたよ。



「シャルロットちゃん、それでいいの?」

ウォーレンが、思い出に浸っているシャルロットに確認してくる。

「買ったら、大事にしてくださるのでしょう?

領民が苦しんでいて、私にできることがあるのですよ?」

それは建前だ、言っているシャルロットも引いてしまうぐらいである。

「きれいごとだな」

ふん、とナイジェルが言うのを、シャルロットも同感である。

「何言っているんだ、それだけ被害に苦しんでいるんだ。

王都にいる者には分かっていなかった。

僕から王に進言する」

バーナードは王家として対処すると言うが、それなら納税を猶予でなく免除して欲しい。



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