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シャルロットの災難  作者: violet
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シャルロット撃沈

これで最終話となります。

シャルロットの災難は続くようですが、テオドアが認めたナイジェルならば、きっと幸せにしてくれるでしょう。

読みに来てくださる皆様のおかげで、最後まで書けたことに感謝です。


「ナイジェル様、ここは危険が多く実家に帰ろうかと思うのです」

「もう、危険はないはずだ。一掃したからな」


はいそうです、と同調するわけにはいかない。

やっぱり、逃げ出すのが出遅れだった?

あそこか、あそこで逃げるべきだったんだ。


「ほら、この菓子は好きだろう?」

菓子で懐柔されませんってば。口元に持ってきても開けません。

ナイジェルがパクと菓子を口に入れると、シャルロットの顎を持ち上げキスしてきた。

開かせた口に菓子を舌で押し入れる。


ぐぁあ!


シャルロットはカウンターパンチで沈み込んだ。

無理、無理、レベルが違う!

男性を誑かそうなんて、恋愛レベル1には無理だと想像もつかなかった。

引きこもりが恋愛スキルをもっているのは、小説の知識だけだ。

そうだよね、そうだよね、顔だけじゃダメだよね。

何が足りないかも想像つかない。


ともかく、口に入った菓子をモグモグ咀嚼する。

気持ち悪い・・・

他の人の口に入った菓子、ありえないのですけど、飲み込むしかないよね。


きっと、吐き出すとかしたらダメなんだろうね。

拾い食いと一緒よ、領地の私の部屋に落ちている菓子よりキレイなんだから。


ゴックン。


飲み込みました。

そっとナイジェルを見れば、視線が重なる。


「帰ると言うなんて、俺たちの会話が足りないからかな?」

会話、そんな高等技術、テオドアに任せて来ました。

「出かける前に買ってきた、シュガンのチョコは?」

「好き」

「クラウィのハートクッキーは?」

「好き」

それは今までのお土産たち、大好きだ。

「ツアルコのマロンは?」

「好き」

「エムレッタのパイは?」

「好き」

「パーシバル家のナイジェルは?」

「好き」

しまった!!

両手で顔を押さえてうずくまる。きっと真っ赤になっている。


ナイジェルがシャルロットの手をはがして、顔を覗き込む。

「俺もシャルロットが好きだよ。

夜会で王子と踊っている姿は綺麗だった。

それだけだったのに、夜の庭で飛び出してきた姿に目が釘付けになった。

王子にもウォーレンにも取られたくなかった。

あんな気持ちは初めてだ。

こんなに大事に思うのも初めてなんだ」


「ナイジェル様」

「シャルロット」

二人で見つめ合う。

よーし、今がおねだりチャンスよシャルロット、と自分に気合を入れる。


「私、もう少し狭い部屋で散らかっている方が落ち着くのです」

「それでは、シャルロット付きの侍女の職務怠惰になってしまう。可哀そうだろう?」

ああ、そうか、って納得しちゃダメなんだって。

「私に多くの侍女は要らないと思うの」

「彼女達は公爵夫人の侍女をした、という嫁入り道具が必要なんだよ」

にっこりとナイジェルが言う。

「それに、社交は苦手で」

これでは公爵夫人は無理だろう。

「それは賛成だね。

ずっと屋敷にいればいいし、どうしても必要な祝賀会などは俺がずっと付き添うから心配ないよ」

あ、これ小説で読んだ。監禁ってやつだ。


「で、でも運動はしないと、散歩とか」

「公爵邸は広いから庭だけで十分だろう」

領地にいた時は、庭どころか部屋と執務室しか往復しなかったけど、自由なのに部屋にいると、部屋にいる自由しかないとでは、同じ部屋にいるのでも違うのよー!

「時々は郊外の散歩も連れていってあげるよ。

公爵家の馬車は快適だよ。料理長にバスケットをお願いしておこう」

公爵家の贅沢な素材を使った料理長の料理は最高である。

「サーモンキッシュをお願いします」

ナイジェルの策略だと、あわてて言いなおす。

「こんなので、ひっかかるなんて頭の軽い女みたいじゃないですか」

料理でつられてたまるものですか。


「頭の軽い女が金鉱に気づいたりしない。

図書室に興味をもったりしない。

君が土産目当てでも、毎日待ってくれているのが嬉しかった」

もう何度もしたキスを繰り返す。


「でも、私、本当は何もしないでベッドで寝転がっていたいんです」

とうとう、引きこもり告白だ。

「いいね、そのベッドには俺がいるから寝転がっているだけでいいよ」

チガウ、タブンこれ危ないヤツの言質を取られたみたいだ。

シャルロットの顔が引きつったのを見て、ナイジェルは唇を重ねながら言う。

「いい子だ。

ちゃんと分かっているシャルロットは賢いじゃないか」


もう絶対に部屋は自分の思う通りに改装する!

自分の引きこもり用の部屋を作るんだ!

追い返したいと思っても手遅れになるんだから、覚悟するといいわ。

シャルロットは言葉で勝てそうにないので、心の中だけで目標を立てた。





パーシバル公爵家の(とが)は、第2金鉱の王家没収だけで済んだ。

パーシバル公爵家が隠そうとせず、自家で動き、王家の協力を(あお)いだことも大きかった。

ガイア伯爵家は取り潰しとなり、領地は没収された。

ガイア伯爵領と隣接する第2金鉱が、バーナード王子が王籍を離れる時に授与されるのは、もう少し先の事になる。

金鉱を臣籍降下で付与するのも異例のことだ。


『姉上は運がいいんですよ』

全くだ。

思い出して笑うのは、ナイジェルだけでなくバーナードもだ。

あんなに逃げ出したいのがまるわかりなのも、可愛いな。

ナイジェルもバーナードも、お互い手に入れたフェルシモ姉弟の事を思っているのは手に取るように分かっていた。


最後までお読みくださり、ありがとうございました。

引きこもりを卒業することなくシャルロットはお嫁にいきそうです。

シャルロットが動かないのに、シャルロットの手柄になる不思議でした。

violet

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― 新着の感想 ―
[一言] こんばんわ すごーく面白かったです♪ 公爵婦人になったシャルロットとか…… テオドア&バーナードのその後とか…… まだまだ読みたいと思う程 すごーく面白かったです(*´∀`*) 完結…
[一言] 完結お疲れさまでした! また、コミカライズおめでとうございます。 今回も楽しいお話でした♪ シャルロットったら、贅沢すぎ♡ そして最後の最後、テオドアを手に入れたバーナード・・? どの…
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