表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャルロットの災難  作者: violet
37/41

ガウス伯爵領

『姉は幸運の女神ではありません。

運を運んでくれますが、本人は何もしないので、周りが動かざるを得ないのです。

徒労にはなりませんが、苦労します』


本当に、その通りだ。

テオドアの言葉を思い出しながら、バーナードは剣を振るっていた。

金鉱を制圧した後、軍を再編成してガウス伯爵領に突入した。

パーシバル公爵領の金鉱と違い、ガウス伯爵邸は私兵による厳重な警備になっていた。

一個師団に該当する私兵は、それが潤沢な資金があると証明していた。


乱闘状態では確認できないが、ナイジェルとウォーレンも苦戦しているだろう。

だが、所詮は私兵隊。

辺境伯や辺境侯の私兵のように訓練されているわけでもない。

数があろうとも、統制のとれた軍に敵うはずもなく、時間がかかるほど私兵隊が乱れていった。


「殿下!」

ナイジェルがバーナードを守るべく飛び出して来た。

キン!

バーナードに向けられた剣が弾き飛ばされる。


「すでにウォーレンが屋敷に入りました」

「行くぞ!」

ナイジェルが先頭に立ち、バーナードが続く。

すでに大半の私兵が倒れていて、戦闘の激しさを物語るように大量の血が流れ、ガウス伯爵邸の窓や扉の多くが壊されている。


割れたガラスを踏みつける音と、荒い息が響く。

「こっちだ!」

ウォーレンの声に導かれると、ガウス伯爵を守る私兵と国軍が戦闘している広間に出た。


「バーナード・ラドクリフだ!

ガウス伯爵、剣をおさめよ。

私兵隊を持つ許可はでてないはずだ。これは館の警備兵の規模ではない」

バーナードが大声をあげるが、もとから応えるとは思っていない。


第3王子と名乗りをあげて、なおも斬りつけてくるなら王家に対する謀反として、この場で成敗する口実になる。

バーナードがそれを狙っているのは明らかである。

どのみち屋敷を探ってパーシバル領の金塊がでてくれば、国に対する背信行為として処罰となる。


ナイジェルが広間に斬り込んでいくと、一気に国軍が勢いづき、ガウス伯爵を守っていた私兵たちが倒れていく。

ザン!!

ガウス伯爵にナイジェルの剣が振り下ろされた。

この場で殺すわけにはいかないと、倒れた伯爵の傷は致命傷にはなっていない。


バーナードの指示のもと、ガウス伯爵家の人間を拘束するものと、金鉱に関する証拠をさがすものに分かれた。

金鉱から運び込まれたと思われる金塊が見つかるのは直ぐだった。

そして取引先となる商人たちの資料も押収された。


これだけのことになると、取り潰しは免れない。

伯爵の幼い孫を含め、傷を負った伯爵、夫人、子息家族が王都に連行され訊問を受けることになる。

館の豪華な装飾品をみながら、ナイジェルは公爵家の管理にも責任があるのを痛感していた。


「こちらの負傷者は僅かだ。死者はいない。

我々は運があった、というべきだろう」

兵士の力量に差があった、それは間違いない。だが、これだけの戦闘でダメージの差が大きすぎる。

「はい、殿下。

こちら側に死者はいない。運が良かったと認めざるを得ません」

ウォーレンが肯定する。


あの時、夜会の庭園で集まった3人の男性。

ナイジェルとウォーレンは従兄弟で深い付き合いであったが、バーナード王子に至っては、お互いを知っている程度の存在だったのだ。

それが、フェルシモ伯爵家の姉弟を中心として、秘密の共有のような存在になっている。

そして、それはお互いにとって価値のあるものだ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 弟君のお姉ちゃん評に吹いたw >『姉は幸運の女神ではありません。 運を運んでくれますが、本人は何もしないので、周りが動かざるを得ないのです。 徒労にはなりませんが、苦労します』
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ