表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャルロットの災難  作者: violet
35/41

金鉱を制して

ナイジェルは金鉱を僅かな時間で制圧した。

投入した軍に(かな)うはずもなく、圧倒的な戦力差となったのだ。


「ここまで上手くいくとは思ってなかった。

油断していたところに我らの急襲だ、寄せ集めの警備兵では敵うはずない」

「巧妙に隠せていたのは、この金鉱が廃鉱となっていると思われていたことと、他の街から離れていることだな」

金鉱の街を占領して、ナイジェル達は1番大きな建物に司令部を置いた。

「油断するということは、パーシバル公爵家が舐められていたという事だ。

長年の家令とのパイプが強かったのだろう」

バーナードが嫌みぽくナイジェルに言う。

「お恥ずかしい話で、返す言葉がありません」

前パーシバル公爵の放蕩で、ナイジェルも家令には負い目があった。

だが、許してはいけないことだった。


「運があるらしい」

バーナードが言うのを、ナイジェルもウォーレンも意味がわからない。


「今回、スムーズにいったのは運があったと思わないか?

いや、この金鉱が怪しいとわかってから、証拠集めも軍の投下も上手くいきすぎている」

後処理に入っているとはいえ、祝杯をするわけにいかず、お茶のカップを取り、バーナードがナイジェルを見る。

「テオが言うのだ。

姉は幸運の女神ではない。だが、小さな運を持っている」


そう言われれば、家令を不審に思っていてキエトを育てていたのだ。

だが、確たる証拠もなく、何が不審かさえつかめてなかった。

シャルロットが屋敷に来てからだ。

ナイジェルもウォーレンも、心当たりが頭に浮かぶ。


バーナードがテオドアから聞いたと話を続ける。

『領地の被害は、もっと大きくてもおかしくなかった。

僕と姉が領地に行ってから、いくつもの地下水流がみつかり井戸を掘ることができました。

農地はすぐには戻らないが、領民の命を守ることができたのです。

父は何度か騙され、姉を嫁がせようとしたが、相手の良識ある家族の反対や、死亡で話は無くなりました。

子供の頃から姉の美貌は抜きんでていて、攫われたことは2回。

侍女が忘れ物を取りに戻って異変に気付いたことや、いつもは開いている門が閉まっていたりして、姉はすぐに取り戻すことが出来ました。

今回のことも、普通なら大金を援助してくれる人間など、簡単には見つかるはずないのです。

それが、持参金を積んでも結婚をしたい、女性が憧れる男性が3人』

軍を率いて金鉱の制圧に行くとなった時に、テオドアからはこうも言われた。

『姉が関わっている事件なら、きっとご無事で戻られることでしょう。

行ってらっしゃい、殿下』

実際にそうなった。


「幸運の女神だったら領地が干害などならないから、小さな運というのでしょうね」

なるほど、とウォーレンが納得する。


「ナイジェル」

空になったカップをソーサーに置いたバーナード。

「テオドアが言っていた。

シャルロット嬢を誘拐したのは、2回とも家庭教師だったと。

捕まえたその男が、お前が俺を狂わせたのだ、お前がいなければ、と叫んでいたようだ。

その時、シャルロット嬢は10歳。

元々、屋敷からあまり出ない令嬢だったが、部屋から出なくなったそうだ」


ダン!

ナイジェルが椅子の肘掛けを強く殴った。

「そんな男のせいで」


拳を強く握りしめているナイジェルに、バーナードはテオドアの言葉を思い出していた。

『姉は正しく運がいいようです。

誰よりも、姉を大事にしてくれる男性に巡り合えたと思ってます』

僕は、テオドア、君が弟であることがシャルロットの1番の運だと思うよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ