姉弟の作戦会議
テオドアに説教をされて、これでは領地と変わらないとシャルロットは肩をすぼめる。
これでも心配してくれているのだ、しっかりせざるをえなかった弟である。
「それで、ネズミでしたっけ?蛙でしたか、それの犯人はどうしたのですか?」
金の横領の影に隠れそうな事件だが、それもナイジェルが対処したはずなのだ。
「うーん、聞いてないかな?」
シャルロットのどうでもいい、と言うような言葉にテオドアが反応する。
「どういうことですか?」
テオドアはナイジェルが心配して連絡がきたのは、もしかしたら取り逃がしの可能性があるからではないかと思っている。
家令の娘が主犯かもしれないが、同調したのがいるのではないか。
「どうして詳細を聞いてないのですか?」
「え? ナイジェルが帰ってきたのが遅かったから、聞き忘れたからかな」
うーん、とシャルロットは可愛く言うが、どうでもいいというのが言葉に表れている。
我が姉ながら図太過ぎる。テオドアは頭を押さえてしまった。
「犯人からしたら、姉上は邪魔者なのですよ。これがエスカレートしてもっと危険になる可能性が高いから心配しているんじゃありませんか」
「そう、それ。どれぐらいされたら、私実家に帰ります、ってレベルになるのかなぁ?」
ふーん、とテオドアはテーブルにある菓子に手を伸ばす。
「美味しいね。
この菓子、うちじゃ絶対に食べれない高級品だよね。
それで、姉上はうちに帰りたいんだっけ?」
パクンと口に入れて、テオドアは次の菓子に手を伸ばす。
「公爵と殿下の援助金で、工事がすぐに出来そうなんだ。
領地は工事人が入ってくるし、広範囲の工事で騒々しいと思うよ。
せめて用水路の工事が終わってからにしたら?」
シャルロットが反論しないのを、肯定と受け取ってテオドアはたたみかける。
「その家令の娘って、逃げたんだろう?
手引きしたのがいるんだよ。
危険分子が残っていると、姉上もゆっくり昼寝ができないでしょ?」
それに、とテオドアは続ける。
「僕がいる間に、罠をかけようよ。
姉上、ヒマでしょ?」
家令の娘がいなくなって、第2、第3の公爵の愛人の座を狙うのが出て来る可能性もある。
そういったことにルーズなシャルロットがバカにされるのは、腹立たしい。
「そんな面倒くさそうな、私は寝ているからテオが頑張れば?」
「姉上、支度金分は働いてください」
働くのは嫌いなの、と小さい声でシャルロットが言うからテオドアは無視する。
「犯人は姉上を追い出そうとしているのですよ。
家令の娘がいないことで、手段が変わるかもしれない。周りに注意してください」
テオドアにとっても、自分が学校を卒業するまでは寮生活だ。シャルロットが一人領地に戻っても父親と二人で不安しかない。
公爵家でシャルロットの地盤を確固なものにする方が安心なのだ。
「いいですか?
僕が姉上の噂を流しますから、何を聞かれても肯定していてください」
公爵が留守の間に、強硬手段でシャルロットを追い出しにくるように仕向けるのだ。
「明日は宝石商を呼びますから、傲慢な態度をしてくださいよ」
えー、面倒くさ、と返事しかけてシャルロットはひらめいた。
「テオが女装して、私の代わりになれば?
私達似ているし」
「僕はその時間は学校です」
いい案ですが詰めが甘い、とテオドアは姉を見る。
がっかり、いい案だと思ったんだけどな、と呟いているシャルロットに、手のかかる姉だと苦笑いするのだった。




