表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シャルロットの災難  作者: violet
26/41

ナイジェルの姉

「シャノン・チェスタートンですわ」

豪華な美女がシャルロットの前にいた。

ナイジェルの姉である。


『私が認めた女性しか、弟の嫁には認めません』

こう言って欲しかったのに、現実は違う。

「まぁ、可愛い。私、奇麗な妹が欲しかったの」

しかもなんだか、同情されている。

「事情は聞いてますわ。

援助とひきかえなどと、弟を許してあげてね。

決してお金で買ったなどと思ってませんから。

この屋敷に嫁いで来てくれるだけで十分なの」


ミラベルが、シャノンの土産のケーキを出してくれる。

すでにシャルロットの視線は釘付けである。それほどに綺麗なケーキなのだ。

「街で人気のお店よ。フルーツがたっぷりなのが素敵でしょ?」

ええ、それは同感です。

シャルロットは心の中で頷いて、少し微笑む。


「食べたら街に行きましょう。ドレスも仕立てたいし、レースのお店もステキよ」

「いえ、ケーキをいただいて十分です。」

シャノンはシャルロットが遠慮しているように見えたのだろう。

「謙虚は美徳ですが、今はそうではないわ」


「ナイジェル様がドレスも用意してくださり、十分なのです」

街のなんてうるさいし、お出かけ着に着替えるのも面倒なんです。

出かけなければ、ドレスはいりません。

ケーキ食べて寝る、なんて最高です。

ダイレクトに言いたいけど、行きたくない気持ちだけ遠回しに言葉にするシャルロット。


シャノンはシャルロットの手に巻かれた包帯に視線を移す。

昨日よりも、さらに分厚く包帯が巻かれていて、指が動かしにくい。

「貴女をお金で買うような弟だけど、許してあげて欲しいの。

私がみても、弟は貴女を大事にしているわ」


違う、そんな言葉が欲しいんじゃない。

『お前なんかに弟の妻はふさわしくないわ。

今すぐ出ていきなさい』

妄想していた言葉にバツ印が付けられる。

「援助は必要でした」

言葉少なくシャルロットは下を向く。

『声が小さい、もっとはっきりしなさい。

こんなのでは公爵夫人は任せられないわ』

って言ってくれないかな、期待してシャルロットはシャノンを見るが相変わらずシャルロットの包帯の巻かれた手を見ている。


「そうね、手のケガもあるから後の方がいいわね。

今日は、庭の散歩にしましょう。

薔薇の庭は見られた?

ヤマブキが咲き始めているはずよ、西の庭園なの」

シャノンは侍女を呼んで、歩きやすいドレスを指示している。

「靴はブーツの方がいいわね」


「シャノン様、日差しは苦手で疲れるのです」

シャルロットは正直に言うことにした。体裁をかまっていたら断れない。


「あらあら、少しずつの方がいいわね」

庭の散歩は決定らしい。

「少しずつ体力を付けましょうね」


ないのは体力ではなく、やる気がないのです。


動こうとしないシャルロットにシャノンがニッコリ微笑む。

「さっきレモネードを冷やしておくように言ったから、散歩が終わる頃にちょうどいいわ。

レンゲの蜂蜜よ」


ちょっと散歩してもいいかも。



西の庭園は、八重のヤマブキが花盛りであった。

黄色の花が満開で、シャノンは幼い頃はここで遊んでいたと話す。

「大人になるにつけ、弟は女性を冷めた目で見るようになって心配してたの。

それが、大事な人だから寂しがっている貴女の話し相手になって欲しい、と弟から手紙をもらった時はびっくりしたし、嬉しかったわ」

楽しそうに話すシャノンだが、シャルロットは半分も聞いていない。


もう疲れた。

いっぱい歩いた。

早くレモネード飲みたい。

否定の言葉が頭の中で羅列する。

ええ、はい、と適当に返事している。


「少しの予定が奥まで来てしまったわ」

「ええ」

「疲れたでしょう?戻りましょう」

「はい」

「公爵家のレモネードは少しオレンジを入れてあるの。楽しみにしていて」

「はい」

「レモネードを飲んだら、ドレスの採寸をしましょうね」

「はい」

しまったー!

うっかり、返事してしまった。もう寝たいのに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ