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シャルロットの災難  作者: violet
16/41

発見

人間には、張らなくていい意地と張らなければならない意地がある。

机の下で、シャルロットは思っていた。

でた答えは、面倒になっちゃったなー、である。


ちょっと汚したのをごまかそうとしただけだ。

ほんの少し寝てしまったら、周りが大騒ぎになっていた。

部屋から出ようとしても、使用人達の会話が漏れ聞こえ、大騒ぎになっていることを痛感すると出にくくなってしまった。


どうやってごまかそう。


(やま)しいことがあって、逃げ出したに決まっている」

カトレアの声が聞こえて、扉に耳をつけてみる。

「あんたなんかとは違って本物のお姫様だからね。

公爵様は婚約者と言われてたし、あんなにお綺麗なんだもの。

どんなに公爵様を狙っても、おあいにく様ね」

カトレア一人に、複数のメイドが反論しているらしい。

「いくら代々仕えているからって、身の程をわきまえた方がいいよ」

「ひがみにしか聞こえないわ。

侍女として行儀見習いに来ている貴族娘だって、爵位が低いから愛人狙いじゃない。

私の方がずっと奇麗だもの」

パタパタと足音が遠ざかり、カトレアと離れて行くようだ。


「バカね。愛されるのは私よ」



うわあぁぁ!

これって、ナイジェルの愛人ってこと!?

ちょっと、もしかして私の事好きなのかしら、って思ってたのが恥ずかしい。

でもナイジェルは、使用人は使用人だと言ってた。

ということは、すごい自信のメイドだ。自信を持つ何かがあるのかもしれない。

それにあのネックレス。


これ以上探させるのも申し訳ないし、正直に話そう。

ごまかすのは無理だと、シャルロットは覚悟を決める。


部屋から出ると、扉の音で振り向いたメイドと目が合った。

「お嬢様!」

その声で一斉に集まって来る。


「シャルロット」

階段を駆け上がってきたのはナイジェルである。

「本を返そうと思って迷子になってしまったの。

皆さんに心配をかけてしまって、ごめんなさい」

謝るシャルロットの頬にナイジェルがそっと手を触れる。

「冷たい、ずいぶん身体が冷えてるじゃないか」

言いながら、シャルロットを抱き上げて部屋に運ぼうとする。

「大丈夫よ。

部屋で横になってただけだから」

居眠りしてたのも言い方次第で、病弱設定になる。


「すぐに温かいスープをお持ちします」

ミラベルが居室の扉を開けて、シャルロットを抱き上げたナイジェルを通す。

「ミラベル、ありがとう」

はい、と頷いてミラベルは厨房に向かった。



ベッドに降ろされると、シャルロットはクッションを背もたれにして座る。ベッドサイドには椅子を引寄せてナイジェルが座った。

「無事でよかった」

シャルロットには知らせていないが、昨日のネズミの件をナイジェルも気になっていた。


「机の裏にあるのを見つけたの」

シャルロットが封筒を出すと、ナイジェルが手に取る。

「このために?

こんなに身体が冷たくなるほどに、探したのか?」


「本を返しに行ったのも迷ったのも本当のことなの。

気が付いたら大騒ぎになっていたの、ごめんなさい。

お仕事を抜けて戻ってこられたのでしょう?」

これは、さすがに悪かったとシャルロットも反省する。

ただ、シャルロットの容姿は儚げである。病弱なのに頑張ったと誘導するのは簡単だ。


「俺の方こそ悪かった。無理をさせた」

ナイジェルはミラベルからスープを受け取ると、サイドテーブルに置く。

「飲めるか?」

ナイジェルに頷いて、シャルロットはスプーンを持つ。

温かいスープが身体に染みる。


「美味しい」

ホッとシャルロットが微笑むと、ナイジェルがシャルロットの髪を撫でる。


「しばらくはベッドから出ない方がいい」

ナイジェルの言葉に内心小躍りしても、見かけは小さく頷いて、シャルロットはスプーンをテーブルに置いた。

「少し眠りたい」

そう言ってベッドにもぐりこんだ。

やったね、しばらくって1週間ぐらいかな、と思っているとすぐに眠りに落ちていった。




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