異変
少なくとも付き合う直前から付き合って一年くらいは彼女のことが大好きだった。
告白はラインや電話などではもちろん無く、イルミネーションの綺麗なスポットで直接言った。
行動力の無い僕にしてみれば、随分と本気を出した行為だ。
……と、僕の回りの人は思っている。
実際は、イルミネーションスポットで告白出来ていない。
帰り際の改札でも口に出すことが出来ず、結局一回解散した。
その後、五分後くらいに勇気を出して電話で改札に呼び出し、そして告白したのだ。
なんだかよく分からないが、
クラスの女子には、イルミネーションスポットを出る直前に
「おいちょっと待てよ」
と僕が引き留めて告白したことになっていたらしい。
まあそれはさておき、
お互い初めて出来た恋人だったから、ゆっくりと関係は深まっていった。
ある日からただの電話がビデオ通話に
ある日から手を繋ぐように
ある日から昼ご飯を一緒に食べるように
ある日から一緒に下校するように
ある日からキスをするように
ある日から……
このまま順調に続くと思った関係は、些細なことで少しずつおかしくなっていった。
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ある夏の日のデートでのこと。
食事を済ませた僕たちは、暑さをしのぐためにminaの中に入り、まずは一階の、抹茶が美味しいという喫茶店で休憩しようという話になった。
一、二時間ぐらい経って、僕たちは喫茶店の外へと出た。
飲み物は飲み終えたし、人も増えてきたのでそろそろ別の所へと向かうのだ。
彼女は店の商品を眺めてぶらぶらするのが好きだったから、僕もそれに合わせて一緒に行動し始めた。
ゆっくりと小物類や衣服、キッチン用具などを見ながら上の階へと向かって行く。
そうして、ぬいぐるみなどが沢山並べられたスペースへとやって来た。
そこには、イルカやウサギなどの色んなぬいぐるみが綺麗に並べられていた。
その中から、彼女があるクマのぬいぐるみを手に取って顔の前へと近づける。
いつものあれかと僕は思う。
「こんにちは!ボクは熊のクマタン、よろしくね!」
楽しそうに声をあて始める。
ぬいぐるみを変えながら、彼女は同じようなことを何度も繰り返し行った。
いつもであれば「可愛いな」と思うのだが、
どういう訳か周りの視線が気になり、恥ずかしいと思う僕がいた。
さっきまでは、いることさえ気づいていなかった子供の声がはっきりと聞こえる。
すぐにでも止めて欲しい。そしてこの場から離れたい。
でも、僕は笑っている彼女のことが好きだったから、ニコニコしながら見守っていた。
二つの相反する感情に混乱している時、彼女は僕にこう言った。
「いつもありがとうね。こんなことにかまってくれて。」
「でも、これが無理な人とは付き合える気がしないかな。」
「***は、これを見て可愛いって言ってくれるからすごい嬉しい。」
「……どうしたの?いつもとちょっと違う感じがするんだけど。」
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