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NIPPLE.MAN

作者: カルフォフニア

魑魅魍魎が渦巻くA.D.204Xの地球。暴走したスーパ・コンピュータにより生み出された「機者」。地球の半分は彼等により占領され、人々は残された資源を奪い合い、いつ来るともしれぬ破滅に絶望していた…



『おはようございます。サプライ・ニュースです。本日は皆様にお伝えしなければならない事があります。』

両親を事故で失い東部の親戚のおばさんの家に引き取られた私は、顔を引きつらせた。この番組でこの出だしで始まるニュースは大抵―というか全部非常に悪いニュースしかない。


『冷静に聞いてください。………東部前線司令部が、一夜にして完全に消滅しました。目撃者はキノコ雲が上がったと証言しており、機者によるものだと専門家は断定しました。』


非常に悪いどころではなかった。最悪だ。東部前線司令部はタフであることで有名だ。今まで幾度も大侵攻を防いできたし、かつて、ヒーローが死亡した史上最大の侵攻だって止めた。前線司令部の中では一番強力である。あったはずなのだ。私は思わずシリアルをすくっていたスプーンを落とした。おばさんも落とした。


『ただ今特別治安維持隊が侵攻を食い止めていますが、長くは持ちません。一人、また一人と倒れていっています。東区域にお住みの方々は直ちに近隣のシェルターにお逃げください。パニックにならないように焦らず行動して下さい。』


爆発音が結構近くで聞こえた。パニックにならないわけがない。私とおばさんはヒーヒー言いながら僅かな水と食料を持って、歩いて10分かかる場所にあるシェルターに5分で逃げ込んだ。シェルターの中の皆はすすり泣いていた。


3時間はしただろうか。辺りは不気味なほど静まりかえっていた。私はシェルターに備え付けられている外のライブ映像を見ることができるコンソールを起動した。


そこには、亡者の大群が居た。


機者たちの狂気的なまでに細身なボディ。洗練された武器群。本隊ではないだろうが、その数1000は下らない。それらはまるで骸骨の軍隊であり、私は腰を抜かした。周りの人も私と同じように腰を抜かし、泣き出す人も居た。皆一様に見つからないように祈っていた。


機者たちはあっさりと通り過ぎ、私たちは安堵した。

が、他のシェルターが見つかった。防音のシェルター内でも響く轟音で私たちは全てを察した。機者はシェルターを破ろうとしている。なぜなら機者たちは人間を憎んでいる。機械なのに、憎しみの感情がある。扉が破られればそのままそのシェルターの中の人間は1人残さず殺されるであろう。私には、何もできない。



本当に?



1秒の時間すら稼げないのか?



いや、少しなら、少しだけならいけるかもしれない。



もしかしたら、軍が到着するまで時間を稼げるかもしれない。



可能性はある。



ならば、ヒーローのように博打をしよう。



おばさんが止める間もなく私はシェルターから飛び出る。急いで音の元へ駆けつけ、拳ぐらいの石を拾い、最後尾のヤツのマヌケ頭に投げつける。全ての機者が作業をやめ一斉に振り返る。それはとても不気味であった。

どうやらシェルターはまだ破られていないようだ。私はどんどん石を投げる。何だ、簡単に稼げるじゃないか、時間。

機者たちは私に近づいてくる。そして、遂に頭に銃口を突きつけてくる。私は最後に、勇気をくれたヒーローの名を言う。


人々はライブ映像を見て、ある情景を感じた。

娘の小さな背中に、ある英雄を幻視した。

娘の勇気に、ある勇気を思い出した。

散った筈の、ヒーローを。

どんな時でも救ってくれたヒーローを。

地獄から救い上げてくれたヒーローを。

そして人々は声を張り上げ、絶対無敵のヒーローの名を言う。






「「「「「ニップル・マン!!!」」」」」

呼んだ!





「「「「「3!!!」」」」」

なれば彼は来る!





「「「「「2!!!」」」」」

絶対に!





「「「「「1!!!」」」」」

希望と共に!




機者は、引き金を引い







「ニップルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・エェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェントォリィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!!!」





流星が、落ちた。

今まさに撃たんとしていた機者は粉微塵となり、辺りにダイヤモンド・ダストを作り出す。

人々は歓喜し、むせび泣く。

本当に、来てくれた。死の世界から、舞い戻って来た!

その男のガタイはとても良く、頭を覆い隠すヘルメットに銀色に鈍く輝くライダースーツを着ていた。乳首周辺に穴が空いているものである。これこそが、絶対無敵のヒーロー、ニップルマンである!

ニップルマンは娘の肩に手をポンと置く。


「ここはおれに任せてくれ。君は家族を守ってやりなさい。」


娘はうんと頷くとシェルターへと戻っていった。

ニップルマンは振り返り、機者たちに告げる。


「おれの名がある限り、貴様達に安息は無いと知れ!ニップルゥゥゥゥゥゥゥゥ・キィィィィィィィィィィィィィィィィック!!」


ニップルマンは銀の光線となり、直線上の機者たちが全て薙ぎ払われる。残された機者は即座に対応し、発砲する。ニップルマンは素早く射線上から避け、機者たちの懐に潜り込む。


「ニップルゥゥゥゥゥゥゥゥ・パァァァァァァァァァァァァァァァンチ!!」


まとめて100の機者たちが吹き飛ばされる。

次の機者たちはニップルマンを圧殺せんと包囲し、包囲の輪を縮めていく。ニップルマンはその場で超高速回転をしながらジャンプする。


「ニップルゥゥゥゥゥゥゥゥ・トォルネェェェェェェェェェェェェェェェド!!」


その竜巻に触れた機者はバラバラとなり、包囲は完全に崩壊した。


残された500ほどの機者は、一箇所へと集まり、30階のビルに相当する巨人となる。それはニップルマンを踏み殺そうと踏み降ろす。ニップルマンは両手でガードするが、どんどん地面にめり込んでいく。瞬間、ニップルマンの全身が真っ赤に輝く!





「おれの乳首が真っ赤に燃えるぅ!お前を倒せと轟き叫ぶぅ!必殺!!ニップルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィム!!!!!!!!!!!!!!」


ニップルマンの全身を巡ったニップル・エネルギーが乳首から極太の熱線として放たれる!その熱線は巨人の足首から頭頂部までを貫き、絶命に至らしめた!

人々は歓喜の声を上げ、ヒーローを讃えた。その顔に、絶望は無かった。



機者の先遣隊を撃滅したニップルマンは、そのまま軍と特別治安維持隊と合流し、機者の侵攻軍本隊を同様に撃滅した。

人類はヒーローを賞賛し、希望は瞬く間に広がった。





――最前線にて


「こちらα隊!機者の攻撃が激しい!救援求む!」

『だめだ、援軍は送れない。』

「何とかしてくれ!このままじゃやられちまう!」

「ちくしょう!隊長!また敵の大群です!」

「誰か、誰か助けてくれ!誰かいないのか!」


「!?隊長!飛翔体接近して来ます!」

「機者どもの飛行艇か!?」

「いいえ、これは――銀色の流星!!




ニップルマンです!!!」


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