プロローグ【太郎視点】
間違っても恋愛ものではありません。()
頭を空っぽにして三歩歩いたら忘れるくらいの気持ちで読みましょう。
この俺、成狼太郎はある日、学校の屋上からどこかの世界に転生した。
何故転生したのか?俺にもわからん。そんなもの、なろうの読みすぎで運命力が高まったからとか、そんなこじつけをしとけばいいんだよ。
ところで、周りは俺の知っている日本の風景とは全く違っていた。
これは、……そう、なんかゲームのファンタジーによくあるようなあんな感じの森だった。
なんか気持ち悪いうねうねした蔓のような大木に、ルビー色に煌めく泉、挙句には一角獣の兎までいる。
おいおい、これは正しくじゃないかと察しのいい俺は思わず心が跳ねる。
しかし、表情には出さないとも。
ここで『ひゃっほう!異世界転生だ!ウェーイ!』とぬか喜びしてはいけないのだ。
何せ、異世界転生したところで、チート能力が目覚めていなかったら、ただの人生ハードモードなのだから。その辺は考慮している俺に抜かりはない。
とりあえずパラメーターを調べねば!なろう特有のレベル設定があるはずなのだから!
とりあえず色々試そうとしてみるが、パラメーターバーの代わりに、ある重大な事に気がついてしまった。
「か……体が……!」
女になっているのだ!
ただ転生しただけならなろう耐性のある俺は動揺などしないが、女になったのなら話は別だ!
何故なら、そう!これなら女風呂を覗き放題なのだひゃっほう!
これには思わず胸も膨らむ。
実際膨らんでいる。
……。ヤッベ、思いの外貧乳だった……。
それはともかく、今の俺の第1目標はこの世界の街、或いは人に出会い、生活を安定させる為の基盤を作る事だろう。
そうしないと無一文で狩りすら出来ない無能だもんね。
という事で、異世界の森を練り歩きながら進んでいくと、男の姿を確認出来た。
丁度いい。彼にこのさいかわボディな俺の甘言によって金をゆすり取ってやるぜ!
……どんな言葉を紡ごうか悩み、よくみると不自然な格好の男に気を配れず、そのまま話しかけてしまう。
なんか見覚えのある学生服にスカートをはいていたというのに。
「あのぅー☆すみませぇーん☆わたしぃー☆成狼市子って言うんですがぁー☆無一文になっちゃってぇー☆お金を恵んでくれませんかぁー☆」
「は?……あんた太郎でしょ?」
こいつ、この特徴的なぐるぐる眼鏡をつけた奴、クラスメイトで腐女子の腐川妙子だ。直感で察した。まさかこいつも転生してやがったのか。
待て。と言うことは不味いぞ。
思わず溜め込んだ唾を飲み込む。こんな馬鹿みたいな事を言っていたのが俺だとバレたら、もう恥ずかしいなんてレベルじゃない……!
いや待て落ち着け。こいつから目を背けるんだ。
この鍛え上げられたかのような筋肉質な見た目に反してパッツンパッツンな女生徒の制服を着ながらスカートをはいた奴から目を……っ!
「ブッフォ!!」
だ、ダメだ……笑うな……っ!なんか改めて見ても面白すぎるんだけどともかく笑うな!
「ブッ……フプ……ち、違いまーす……。いみふめーなんで絡まないで下さー……」
「いや、胸元に名札あるやんけ」
「え゛っ!?」
思わず目で追う。
うっわマジだ!そいや俺も学生服だったの忘れてた!
そして……。
「ぐぁぁぁぁぁ!恥ずかしいぃぃぃ!!」
身を捻り回しながら、俺は思わずその場でゴロゴロと悶絶してしまう。
「そら恥ずかしいわな」
その辺の岩に腰をかける妙子女史(男子)。
「つーかなんでお前までここにいるんだよ!」
「知らんがな。……ってあれ?」
そう言って妙子は不思議そうに自身の体に触れる。
「なんで私、男になってるん?」
気付いてなかったのか……。
ふと、妙子は突然立ち上がり、スカートのフックを外して、股間を凝視した。
「やっばい!チン◯あるやんけこれぇー!」
「ちょっ……!大きな声でそんなこと言うなや……っ!」
しかも、何故か嬉しそうだし。
「何さ、別に人もいないし構わないでしょ。これだから童貞は」
「な、何をぅ!?」
美少女に言われるならいい。ドSなツンデレ女子に言われたのならご褒美だ。しかし、パッツンパッツンな格好の奴に言われるのだけはゴメンだ!
反論しなければ!そう、反論を……。反論……。
ちくしょう!全部事実だよバーカバーカ!
「はっ、待てよ……?男って事は男風呂が覗き放題……?」
「真っ先に考えてる事俺と同じじゃねぇーか!」
「男同士の筋肉の見せ合い……、そこから肌を触り合い、然るのちにハッテンするのでわぁ!?」
「ねーよっ!ぜってぇーねぇーよ!!」
「いや、あんたバカね。ここがもし中世の時代とかならね、割とそういう事ってあったそうよ。これだから学のないバカは困るわー」
「はっ!?マジ?」
「マジもマジ。……まぁ、それのせいで病気感染して、半世紀ほどして無くなったんだけどね……」
ダメじゃん。
「つーか、実際それがあったとして、お前も掘られるだけだろ」
「イ、イケメンならセフセフ!あっ、いやでも……」
と、ふと妙子は身動ぐ。
「嫌だろ?」
「いや。私はあくまで男二人の恋愛を眺めたいだけだから……。天井のシミになりたい……」
ドン引きだわ。
「えっ。男と結ばれたいってのはないの?」
「いやいや、ないわー。ぶっちゃけ私なんかがその場にいるのなんて凄いおこがましいから。尊い二人がカップリングするのを眺めているだけでいいの。あぁ、てぇてぇ……」
「もう少し自分に自信を持てよ。なんか悲しくなるから」
「大丈夫。アンタよりはマシだっていう自信だけは確実にあるから」
「この野郎!」
「誰が野郎よ!野郎って言葉は男に対して向ける言葉なんですぅー!」
「股間を見てからいいやがれぇ!今のお前、実際に男だからぁ!」
そう言ってから、喧嘩が始まった。
上等だオラ。かかってこんかい!
あっ、ちょっとまって。思いのほかこの体弱いっ!
デコピンしないで「いったぁぁぁい!」
ぐぁぁぁぁぁ!髪をぐじゃぐじゃするんじゃねぇー!
「ごめんなさいは?」
「ごめんなさい」
負けた。完膚なきまでに負けた。思わず涙目になった。あれぇー?おっかしいなぁー?異世界転生したらチートになるんじゃなかったの?おかしくね?こんな世界間違ってね?
いや、こいつも転生者だから、強いだけかもしれん。
俺は試しに木に向かって正拳突きしてみた。
「プッギュッ!」
変な声出た!指打った!痛い!
「……なにやってんのよ」
やめてくれ。そんな白い目で見つめないでくれ。
試したかっただけなんだ。
でも、おかしい。全然チートないじゃん。人生糞ゲーかよ。タカラ◯ミー製の異世界に来たんじゃないだろうな。
互いにここに来て最初の会話がこんなのだとは正直思わなかったし、ぶっちゃけ消し去りたい過去だが、人生を歩むという事は未来に進むこと。過去には決して行けないのだ(不満)。
互いに現状の理解を擦り合わせながら、頭が冷静になったところで、妙子が聞いてきた。
「あんたなんで女の子になってるん?」
「お前は自身が男になった理由を説明出来るのか?」
「質問を質問で返すな定期」
実際、俺らが性転換した理由はさっぱりだ。
そもそも何故俺たちなのか。或いは他の学生達もそうなっているのか。
未知の森の中では、あまりにも情報が少なすぎた。
「でも……」
と、妙子は俺の方をマジマジと見る。
「原型に対して今のアンタ無駄に可愛い容姿してんわね」
「原型に対してってなんだよぉ!?」
とは言いつつ、たしかにその通りなのだ。
自身の胸を触った時などは気付かなかったが、泉に顔を映した時、ヒロイン一号に選ばれそうなほどに可愛い顔をしていたのだ。
嬉しい……といえばまぁ、嬉しいんだが。なんかちょっと違う気がしないでもない。
こんな容姿な子に好かれる展開なら最高だったのに、自身がなってしまったらそれもできない。
「まぁ、お前も割とハンサムなんじゃね?」
俺はパッツンパッツンの格好から極力見ないようにしながら顔を見る。
「おっ?そう思う?」
彼女(彼)の顔は原型に近かった。ポニーテールの茶髪に、メガネの似合う鋭い目付きだ。
「うん、うん。私もそう思うわー。なんか蒼天の修羅のハルキくんに似てるっていうかさー」
「ハルキ?」
「BLゲームの」「あっ、もういいです」
なんだよー、と妙子はつまんなそうな顔で不貞腐れる。
そんなお前には、お前自身の全身姿を見せてやりたいよ。最高に面白いから。
それからどんな話をしたか。
このような他愛のない話がダラダラと続いた後に、妙子が言った。
「とりあえず街を探しましょうか」
確かに、それが今出来る最善の行動だろう。
だが、街についてから……。それからどうするのだろう。そう思い、口にすると
「まぁ、ある程度情報集まったら解散じゃない?ぶっちゃけ私とアンタって学校じゃ接点ないし、気まずいだけっしょ」
……。確かにそうだ。
「オーケー。ならそうしよう」
俺は頷き、森の先へと進んで行くのであった。
……。
「「ここどこぉ!?」」
しばらく道に迷いはしたが。
こんな感じに話が進んでいきます。
行き当たりばったりなのでオチは一切考えてないです。
面白く読んでもらえたら嬉しいです。
面白くなかったらごめんなさい。