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怪奇討伐部Ⅲ  作者: グラニュー糖*
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ねじ曲がった真実

落書き入ってまーす

第七話 囮



「……どういうことですか?」


 毒々しい色の地面、岩。いつもの風景。生というものが一切存在しない寂しき風景。私はここで一人、魂が燃え尽きるまで過ごすつもりだった。なのにどうして。どうしてみんな放っておいてくれないの?


「見ての通り、あなたを倒しに来ました。ハレティさん」

「あなたを人間界に返したはずですよ、シフさん」


 彼の後ろでは大勢の人間たちが各々の武器を構えている。それは全て私に向けられている。あり得ないことに、戦車まで配置されている。そんなものがここに来れるまで人間界と霊界の穴を開けられると秩序を保てなくなるだろう。


「おやおや、ずっと常世にいたから人間の考えることを見通せなかったようですね。でもこんな数の軍隊にも怯まないハレティさん、素晴らしいです」

「……あなた方は魔界に行くのですか?」

「えぇ。ちゃんと正式に行くルートはここしかないですからね」

「残念です」


 彼らは私がとてつもなく消耗しているという情報を知っているのだろうか。リメルアさんとの戦いで霊矢を放たれた私は、もう回復する余地もない。それどころか、魔法一つ放つのに必死だ。人間のくせして魔法を覚えた罰だろう。そこを狙ってくるとは……。当然と言えば当然だろう。こんな神聖な場所を壊しに来るとは、まったく、堕ちたものだ。元人間として呆れてしまう。


「それにしてもまさかハレティさんがあの伝説の人だなんて思いもしなかったですよ」

「……アルメト様の伝説ですか」

「えぇ。人間界でも浸透してましてね……あんな素晴らしいお方を裏切るなんて、大胆なことしましたね」

「裏切る?」

「とぼけないでください。あなたはアルメト様を裏切り、死に追いやったのでしょう?」

「そんなことっ……!」

「してないとは言わせませんよ」


 私がいつアルメト様を裏切った?私はただアルメト様のお側にいられるだけでも幸せだったというのになぜそんなことが……。


「……してません」

「……そうですか」


 否定しても、昔とは全く違う冷たい瞳が私を見つめてくる。

 私はとても悲しくなった。人はこんなにも変わるのか、と。いや、もしかするとこれが本来のシフさんなのかもしれない。そう思うと、自分があの時やったことがアホらしく思えてきた。あんなことしなければよかった。本当にそう思った。

 別にシフさんを否定しているわけではない。私はこのあと起こることが大体予想できているからそう思っているだけだ。彼らは……平和を壊しに来ている。そう、確実に。


「じゃあ、これはどう説明するのですか?」


 どうしても納得しない私に一冊の本が差し出された。私はシフさんと本を交互に見たあと、それを受け取り、栞が挟んであるところを読んだ。その途端、私は息をするのも忘れそうなほどの衝撃を受けた。そこにはこう書かれてあったのだ。


____側近であるハレティは、一人の人間として悪魔に魂を差し出し、アルメト姫を殺させた。……と。


「こんなの……デタラメですっ!」

「デタラメ?さっさと認めたらどうなの?」

「嘘……嘘ですよっ、こんな……私は……私はただ……」


____アルメト様と共にいたかっただけなのに。


「ま、ハレティさんがそうしたのは本当かどうかわかりませんけどね。時代が時代ですから。でも俺はそう教わりました」


 時間の流れとは、恐ろしく無情だ。時間が経てば変わりゆくものは多々ある。それは伝説でもおとぎ話でもあり得ること。しかしまさか自分が体験したことも変わりゆくなんて思いもしなかった。


「……あなたは私が悪人に見えますか?」

「いいえ」

「そうですか」


 彼は自信満々に答えた。笑顔を崩さず、心の内を読ませずに。

 だが違和感を感じる。何と言おうか、彼が彼じゃないような。何かに阻まれているような気がする。


「でもハレティさんには実験台になってもらいますよ」

「実験台?」


 シフさんはズボンのポケットに手を突っ込み、そこにあるものを取り出した。その手には鈍く銀色に輝く四角いものが握られていた。


「これは魔界のとある人に貰った装置ですよ。魔力探知機です。これでどこに魔力が集まってるのとかがわかるんです」

「ということは隠れていても魔法がどこに飛んでいってるのかがわかるのですね」

「えぇ。例えば使い魔などは魔力の塊だから、どこをどう避ければいいのかがわかるんです」

「へぇ……まさか魔界に裏切り者がいたなんて」

「ふふふ……」


 シフさんは先程とは違い、天使のような微笑みは悪魔の不敵な笑いへと変わっていた。それを意味するものはわからない。だが、これだけはわかる。

 かなりピンチだということが。


「科学に満ちた世界。神が作った世界の全ての理を解いた人間界は今危機を迎えているんです」

「危機?」

「幽霊と妖怪の存在ですよ」

「……どうして?」


 私はシフさんを睨んだ。


「今の人間たちが幽霊と妖怪の恐怖を知らないからです。ま、俺はムジナとヘラさんと行動してそれが理解できたけど」

「ごめんなさいね。止めようにも私は人間にも悪魔にも幽霊にも妖怪にも中立でいないといけないんですよ」

「えぇ、えぇ……。そんなことはわかってますよ。でも……」

「でも?」


 シフさんはポケットを見ながら手中にあるものをしまった。そしてこちらを見たとき、心底楽しそうに、最高のオモチャを前にした子供のようににっこりと笑いながら言った。


「ハレティさんは、俺たちにとってのモルモットに変わりありませんから」

「……覚悟しなさい。人間は人間ということを思い知らせてあげましょう」

「大口は勝ってからにしてくださいね?」


 シフさんは怪しげな笑みを浮かべてくる。それもそうだ。大砲を乗せた戦車や、銃を持った兵士がいたり、彼らより前にいる黒髪で剣を持った男性や、彼の剣より太い剣を持った女性、爆弾らしきものを持った少年や、ビジュアル系と言った方が正しいような青年……彼らはその軍隊より強いと見られる。勝ち目はほぼ無いに等しい。


「ふふ……これは少しばかりヤバイかもしれませんね」



__________



 リストと別れたあと、私はレインに会うためにカリビアさんのところへと向かった。私との旅のあと、ずっと彼のところに居候しているらしいからだ。

 私の故郷、アメルの近くにあるバノンという赤いレンガを主に材料として家を建てているところで鍛冶屋を営んでいている。私はその店の扉を開け、そこについているベルを鳴らした。


「久しぶりですね、カリビアさん」

「おっ、スクーレじゃないか。どうしたんだ?」


 カリビアさんは大きな箱を抱えながらこっちを向いた。どうやら整理をしているようだ。隣の部屋は作業部屋で、赤いレンガの内装とは違い、綺麗に積み上げられた灰色の石で出来ている。そこからガチャガチャと音が聞こえるので、レインが手伝いでもしているのだろうか。


「レイン、ちゃんと手伝いしてるのですね」

「いや、そうでもないんだ」

「……と、言いますと?」


 カリビアさんは作業部屋に向かって声をかけると、赤いコートと髪の優しそうな男が出てきた。彼は紛れもなくヘラだった。彼は旅の時とは大違いで、笑顔で「スクーレ、来てくれたのか!」と言った。


「ヘラじゃない!なぜあなたが?」

「代理さ。レインが大怪我してね……」

「あのレインが!?」

「そ。あの自ら危険に突っ込んでっていつもギリギリのレインが」

「おいおい、言い過ぎじゃないか?」


 毒舌を吐くヘラに少しビックリした様子で止めに入るカリビアさん。さすが恐らく知り合いの中では最年長なだけある。……私もヘラと同じようなことを考えていたなんてことは言わないでおこう。


「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ。ところでレインは上にいるんですか?」

「うん。さっきここまで連れて来たところだけどね。今は寝てると思うよ」

「そうですか……」


 寝ているなら放っておこう。でも動けないほどの大怪我とはどのくらいなのだろうか?それにレインからの手紙はまだ開いていない。いつ書いたのかもわからないけど、もしかすると大切なことかもしれない。


「そうだ、あとでスクーレが来たって言っとこうか?」

「いいの?」

「あぁ。あと暗くなるからアメルの前まで送ってやる」


 なぜ家までではないのか?その問題の答えは種族の違いにあった。


 アメルにはスクーレ以外にもたくさんの人間が住んでいる。彼らは勇者スクーレの存在がありながらも、悪魔を忌み嫌っている。彼女が悪魔を悪く思っていないと知っているのにも関わらずに。そんな場所に悪魔を、ましてや妖怪や幽霊を解放し、人々を危険な目に遭わせたヘラを連れていったらどうなるのか。どんな目に遭うかわからない。


「ねぇ、ヘラ……レインは治るよね?」

「もちろん。レインがいつも元気でなくちゃ調子が狂うから」


 ヘラは私の質問に対し、慰めるように答えた。その様子を見て、カリビアさんはそっとその場を離れていった。


挿絵(By みてみん)

どうも、グラニュー糖*です!


落書き雑ですか、そうですか。

ああいう目をしてるのはカリビアとヘッジだけです。

ポ○モンのビ○リダマみたいな目をしてるのはリストだけです。

リストをデザインしたの、ちょうど初代のアニメがどうたらこうたら言ってるときだったんですよ!!覚えてる人はあれかってなるんですけど、秋にやってたやつです!描きたくなるでしょ!……え、ならない?


では、また!

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