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怪奇討伐部Ⅲ  作者: グラニュー糖*
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ノート登場

第六話 再び魔界の地へ



 日本の某地にあるビルの一室。

 机の上に置いておいたバトルスーツを手に取った。バトルスーツと言っても、身に付けたところの力を増強させるだけなので、ハリウッド映画に出てくるようなガッツリ感はない。しかし、そのバトルスーツはフェイクである。上半身、下半身、足、両腕、頭。それぞれのパーツにイリアくんが作ってくれたものを付けるのだ。彼曰く、自分の意思とは無関係に戦い続ける体……。これならムジナとヘラさんだからと言って手を緩めることはないだろう。


「……シフ、怖いのか?旧き友との宿命の終焉を迎えることが……」

「デスさんっていつも何言ってるのかわかんないですけど」

「悪かったな……つまり戦うのが怖いのかってことだ」


 その言葉に俺は静かにデスさんを睨んだ。こっそり覗かれていたのと、痛いセリフと、心の中で揺らいでることを気づかれていたからである。


「……そりゃ怖いよ。でも覚悟はできてる。さよならする覚悟をね。確かにヘラさんは強いよ。怒ると怖いけど正義感は強い。ムジナはヘラさんほどじゃないけど、追尾系の魔法を使ってくる。でも……二人はあの霊王に罰を受けたはずだから、勝てないことはない」

「追尾系ねぇ……霊王と話したことあるそうじゃないか。どんな奴なんだ?」

「どんな奴って……。まぁ、掴み所の無い奴。いつもふわふわしてて……でも優しくて、頼れる奴」

「何というか、メチャクチャだな」


 デスさんは部屋に備え付けてある冷蔵庫から麦茶が入ったペットボトルを取り出しながら感想を言った。俺はそれを無視して考え始めた。確かにあの霊王はメチャクチャだ。ムジナたちを襲っていながらも、人間でありながらムジナたちと共にいる俺を守っているようにも見えた。それに、俺を人間界に戻したときに一瞬見せた笑顔……。あれは何を意味していたのだろうか。


「……それでも今日、戦うよ。あの霊王を倒して、悪魔たちも倒さなきゃ。もしかすると二人は前より強くなってるかもしれない。戦える状態かはわかんないけど、霊王が変なことを考えていなきゃ……勝てるかもしれない」

「勝てるように善処する。さ、シフ。外でみんな待ってるぞ」

「……うん」


 ペットボトル片手にかっこつけて返事をするデスさん。そして蓋を開け、口へと近づける前にペットボトルを掲げ、言い放った。


「この人間界に素晴らしき未来を」



__________



「ふ、あ、はっくしょん!……いたたたたっ!」


 オレは鋭く体を刺すような寒さに夢から覚めた。くしゃみをしたせいで傷が痛み、その例えは本当の痛みとなってオレを襲った。


 ……オレはカリビアの部屋にいたはずだ。なぜこんなに寒いのか?異常な睡魔のせいで、開こうとしない目をこじ開けるのは諦め、寝ぼけた頭をフル回転させて一生懸命考えた。


 そして目を閉じている間にその答えは導き出された。目が開かないのは単に眠いからではない。強烈な光がオレを照らしているので目が開かないのだ。……眠いのは変わらないが。

 では、なぜ寒いのか?下手するとヘッジたちが住むクノリティアという通称「死神の街」と呼ばれる、いわゆる雪山よりも寒いかもしれない。まず寝起きでこんなところにいたら死んでしまう。早く移動しなければ。


 ……しかし、それは叶わない。なぜならどれだけ力を入れても動かないからだ。

 力むと、またあの鋭い痛みがオレを襲った。喉の奥から少し息が漏れた。声は出ないが、苦しいのはわかる。オレは、ここで死ぬのか?


「……君がレインくんだな」


 突然意識の遠くで声が聞こえた。男とも女ともつかない凛とした声。もう一度その声を聞こうとすると、今度は全然違うところから声が聞こえた。男の声だろうか。さっきの声と同じようなので、あれは男の声だったようだ。声はどんどん近づいてくる。正直、怖い。何をされるのだろうか?身動きできないオレに何をするつもりなのか?


「警戒することはない。君に会えてよかったよ」


 彼はそっとオレの頭に手を乗せた。彼の影で光が遮られたので、ようやく目を開けることができた。そこには透き通るような長くて白い髪の男が立っていた。彼の何色ともつかない瞳はなぜか髪があるにも関わらず、はっきりと見ることができた。お前は何者だ、と言おうとしたが、出たのは少しの息だけだった。


「……かふっ」

「無理しなくていい。ここは君のような人にとって生きづらいところだから。今君が言おうとしていることを当ててやろうか。……お前は何者だ……とか、どうして連れてきたのか……だよね?」

「……」

「どうやら正解のようだ」


 彼はクスクスと笑った。

 こいつはここで暮らしているのだろうか?オレなんか動こうとするだけでもこの有り様なのに……。


「ボクはアストロ・ノート。ノートって呼んでくれよ」

「……」

「そっか。君は喋れないんだったね。ごめんよ。でも正体は言えないかな。だってみんなにとって大切なものだからね。……で、どうして連れてきたのかってことだけど……君にだけ伝えたいことがある」

「?」


 彼は首にぶら下げたネックレスを弄りながら語りだした。


「君の妹はボクが預かった」

「?!」

「今君が思っているのはこうだろう?……オレには妹がいたのか……って。そうだろう?」

「……」

「だって君の中には妹の記憶がないもんね。だからこうしてあげる。彼女を妹と認識したとき、その記憶が戻る……とね」

「……」

「でも、今君がやるべきことはそれじゃない。君たちが住む魔界に人間たちが侵攻しようとしてる。ボクは手を出せないけど、それを伝えることができる。君は……妖怪と幽霊とその王と戦ったあの二人を彼らから遠ざけてくれるだけでいい。その傷で戦うことはない。……さぁ、行きなさい。君に蔓延る呪いを緩めることくらいは出来るから」

「……っ」


 人間?侵攻?呪い?わからないことだらけだ。それに、オレにも呪いがかけられているのか?このオレに気づかせないとは……。あとその二人ってヘラとムジナのことなのだろうか?


「治癒を遅らせる呪い」

「?」

「君にかかってる呪いだ。恐らくあの子がかけたんだろうけど……恨んだりしないであげて。君を護るためにやったことなんだから」

「……」


 オレは彼の目を見て思った。「何もかも全てお見通し」だと。


「ほら、二ヶ月分くらいは縮めれたからね。……いってらっしゃい」

「!?」


 彼は急にオレの体を突き飛ばした。浮遊感に襲われる体。落ちる間、周りを見ると寒い原因がわかった。雲より遥か上の場所……そんなもの、一つしかない。


「ここって、霊界への塔の上ー?!……ぎゃー!!」


 もう何が何だかわからなくなり、思わず叫んだ。あいつ……ノートとか言ったっけ?……覚えてろよ。この事と、妹の分の仕返しをしてやる!


「……って言ったって、高すぎだろ!」


 まだまだ落ちていくこの体。しかし体の傷が痛み出したりはしなかった。頭がそれどころじゃないと訴えてるのだろう。


『……たすけて』

「え?」


 不意に話しかけられた。オレはそのどこかで聞き覚えのある声に思わず反応した。それは蚊の鳴くような声だったが、はっきりと聞こえた。


『レインさん……私……を……』

「!」


 その声は紛れもなく消えたはずのあいつの声だった。


「ハレティ!生きてたんだな!?」

『……止めて』


 その瞬間、落下速度が急激に落ちた。地上を見ると、あと一メートルもなかった。

 ハレティの言葉を聞く限り、オレの声は届いていないようだ。しかもそれ以降ハレティの声が聞こえることはなかった。まるで幻のように。もう遅いと言わんばかりに。

どうも、グラニュー糖*です!


今回ヤバイ奴出ましたね!

ノートはマジでヤバイです。

カリビアの絵を出したいのにカリビアが出てこなくて悲しいです。


では、また!

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