別れの刻
ついに三期最終回ですよ!
え?pi◯ivで五期まで見れる?さ、さぁ、何のことでしょう……。
最終話 ありがとう
僕が逮捕したのを見届けたカリビアさんは、魔力の停止を解除した。そしてその後僕たちに降りかかったのはクレームの嵐だった。
「キミって人は、どうしてこうボクに逆らうのかなぁ?!」
「そんなことはどうでもいいよ!ねー、どーしてオレも止めたのー?!」
「……ひどい」
反省の色を見せずに、飴を食べたままカリビアさんを睨むマリフ。頬を膨らましながら水蒸気を撒き散らすムジナくん。そして我が物顔で椅子に座り、不平を言う師匠。
……合わせる顔が無いです。
「仕方ないだろ。放っといたら店が壊れる」
「いやもう窓割れてるんですけど」
「それはあとで何とかするよ。ほら、散った散った!掃除の時間だ!さっさと連れていきな。リスト、黒池を頼む。ムジナはヘッジかヘラのところに行ってなさい」
「「はーい」」
師匠とムジナくんが棒読みで返事をする。そしてゾロゾロと解散していった。
「すまないね」
「いえ、元はといえば僕のせいですし……」
「ううん。オレがマリフが罪人だって見抜けなかったからだ。本当にすまない」
カリビアさんは目を逸らす。この人には非はない。発見が遅れた僕の責任だ。
「おーい、黒池!早く行こう!」
階段の下で師匠がマリフの身柄を確保しながら手を振る。そろそろ行かなければ。
「わかりました!……では」
「あぁ。……もう会わないかもしれないんだよな……元気でな」
「……知ってたんですね」
「ふん、初対面のお前の面……なかなかのもんだったぜ」
「あっ、掘り返さないでください!」
「はははっ!……じゃあ、今度こそさよならだな」
「……はい。ありがとうございました」
カリビアさんは笑顔で手を振ってくれている。
そうだ、僕には向こうでもやらなければならない仕事がある。カリビアさんが言っていた社会に尽くすとはどういうことかがわかるかもしれない。そしてそれがカリビアさんへの恩返しとなるように頑張っていこう。
__________
カリビアさんの店から移動して数日後。オレとヘラはシフと戦ったあの場所にいた。
「ヘラ、エガタは?」
「置いてきた。なんとか押さえつけたよ」
……と言って手を見せる。確かに切り傷がたくさんあった。
「大変だね」
「ほんとほんと。でも……あいつも帰りたいだろうなぁ……」
ヘラは目の前にあるお墓を見ながら呟いた。
あの戦いのあと、結局シフは見つからなかった。だからオレとヘラ、二人でお墓を作った。
今日は手向けの花を持ってきた。いつか一緒にいた人間のために。在りし日に愛した人間のために。
「……ほら、ヘラも置いて」
「あぁ。……どうか救われますように」
ヘラは跪き、頭を垂れて祈っている。オレも花を供え、同じようにした。あとは黒池に教わったやり方でお墓参りをした。死神でもちゃんと人の魂を敬いなさいってさ。
____シフ、聞こえてる?あれから三ヶ月経ったね。こっちは絶賛復興中だよ。……オレがダメなやつってことはわかってる。いつも頼りなくて、失敗ばかりで……。オレのことをバカにしたりして笑ったりふざけ合ってたけど、絶対に嗤ったりはしなかったよね。知ってるよ。……その……あまり長く聞いてらんないよね。こんなオレの話……。でもこれだけは言わせて。オレは……。
「もう一度……一緒に暮らしたかった……。どんなにくだらない話でも笑い合ったりしたかった……」
「ムジナ……」
下を向いて地面に手をつける。勝手に溢れてくる涙を制御できず、そのままボロボロとこぼれ落ちていく。そして置いた花の花弁に落ちて跳ね返った。
「また三人で遊びたかった……また……ぎゅってしたかったんだ……お前のおかげで人間のことをもっと知りたいって思えるようになったのに……どうして先に逝っちゃうんだよ?!どうして……どうしてなんだよ……っ!!」
「……」
ヘラは無言でこの場を去ろうとする。オレはそれを引き留めた。
「ヘラ!……どこ行くの?」
「……俺は過去を引きずらない。言い様はひどいけど……いつまでもシフのことで泣いていられない」
「それは……そうだけど……でも!!」
「うるさい!……俺は……」
お墓に背を向くヘラ。その肩は震えていた。そして異次元に手を突っ込む。そこには……。
「それって……」
「シフのために作ったエプロンだ。それとシフが好きだったロケットの本。……くそっ、ロケットが届かない場所まで行きやがって……もう……」
ヘラは目を伏せながら綺麗に畳んだエプロンの上に本を置いた。その本の題名は『うちゅうへのゆめ』だ。飛ぶことができない人間にとって、宇宙は本当に夢の世界なのだろう。
「ヘラ____」
「二人とも、やっぱりここにいたのか」
「「!!」」
第三者の声に反応し、オレたちは振り返った。
「霊界が使い物にならないから……ごめんな」
「お兄ちゃん……仕事は?」
「終わったよ。これで人間たちを帰せる」
「そっか」
お兄ちゃんは腰に巻いているフードをほどき、それを羽織りながら口を開いた。
「……シフだっけ?霊界をめちゃくちゃにしたのはこの子だね?」
「何するの?」
「……ちょっとした罰だよ」
「!」
「おいおい、怒らないでくれ。……彼の罪は重いんだ。だから許してくれ」
お兄ちゃんは異次元から大鎌を取り出す。そしてブツブツと何かを唱え始めた。
「……ヘッジさん。何をするんですか?」
詠唱が終わり、ヘラが問う。
「魂を縛るんだ。ハレティがムジナにやったことだよ。……今、そこまでしなくてもって思ったよね?まぁその通りなんだけど、仕方がないんだ。シフが……ずっとここにいられるように」
「でも人間は人間界に戻さないとダメなんですよね?」
「……黒池に聞いたんだ。この作戦は極秘だって。だから誰が行ったか、誰が死んだかは公表されない。つまり死んだ人の魂はここに留めておかないといけないんだ」
お兄ちゃんは大鎌を置き、透明な瓶を用意した。蓋を開けると光の玉……つまり魂が吸い込まれていった。
お兄ちゃんはお兄ちゃんの気遣いでシフをここに残してくれるのだろう。
「でもこのままじゃ魔界が保たないよ?かといって人間界に送るわけにはいかないし……」
「……まさかシフを霊界の人柱にするんですか?」
「それも考えたけど、二人が怒ると思ってやめた。……そしてその方が一番影響が無い、ウィンウィンの関係になれる。だから縛ることにした。これはムジナ以外の死神全員と魔王ライルが許可したものだ。実行する前にお前の意見を聞きたかったが……ま、決まってるだろうから言わなかったんだ」
お兄ちゃんは瓶に蓋をしながら言った。
……その通りだ。シフはオレが守る。ハレティから守ってきたじゃないか。なのにこんなにあっさり、『大人の事情』なんてもののせいで打ち破られる。こんなに悲しいことなんてない。だが……世界にとってはそれが最善なのだろう。オレ一人のワガママに付き合ってりゃいつか世界が壊れてしまうからだ。
だから……断ち切るためにお別れしなきゃ。
「……シフ……。お兄ちゃん、最後のお別れしていい?」
「最後じゃないさ。ずっとここに留まるだけだよ」
「でも会えないんでしょ?」
「霊界の塔に納めるだけだ。そこに行けばいつでも会える。でも日が暮れる前に帰ってきなさい。ヘラもだよ。メノイが心配するからね」
「……!ヘラ!」
オレはヘラの方を見た。
ヘラも目に涙を浮かべ、何も言わずに抱きついた。
__________
危険だと言われている『海』。
誰も近づこうとしない。
誰もそこに棲む生き物を獲ろうとしない。
そんな海にワタシは手を浸し、すぐに上げた。
チャプ……と音を立てて手のひらに水が溜まる。後ろを向いて、しばらく歩くと人間が忌み嫌う者たちの巣窟に辿り着く。
ワタシはその場で立ち、浜辺へと近づこうとした。しかしそれは叶わない。ワタシに巣食う二体の『化け物さん』が魚を食べようと留まったからだ。
ワタシは嫌そうに手を払う。すると彼らは魚を咥えたまま振り向いた。
「そんなに急ぐ必要はないだろ?ここに住んで何年だ?ここから動かずに何年経つ?嬉しいことも悲しいことも無い。お前はただ俺たちを使って破壊すればいい」
「そうだそうだ。お前に名前なんかも必要ない。家族なんかも必要ない。お前は生まれたときから一人だ」
化け物さんたちは交互にワタシの前に来て魚を咀嚼しながら話す。いつの間にか魚は無くなっていた。
「なぁ、聞いてくれよ。さっき食べたやつ、ハリセンボンだったぞ。おかげでトゲだらけだ」
「だっさ。俺みたいにイカとか食ってろ」
「あぁん?!今回はたまたまだよ!いつもはアジとか食ってんよ」
……また始まった。喧嘩だ。くだらない。そんなことする元気がどこにあるのだろう。
二体はワタシの視線に気がついたのか、喧嘩を止めてワタシに話しかけた。
「そろそろ新天地目指すか?お前の兄さんたちを探したりするか?はははっ」
「新天地とか言っておきながら、本来の目的言ってんじゃねぇよ!荷物を整えろ、魚は大漁にな!あっはっはっ」
ワタシは二体のテンションについていけず、勝手に動くリボンの先に左右に引っ張られながらひょいひょいと魚を捕まえていく。右の化け物さんが海へ突っ込めば、衝撃波で魚が舞う。それを左の化け物さんが鋭い槍となって串刺しにしていく。それを繰り返し、いつしか浜辺は天変地異があったのかと疑うほど死にかけの魚でいっぱいになっていった。
……この海には人が来なくなった。昔は物騒な格好をした人たちがたくさんいた。でもいつからか誰も来なくなった。知り合い以外で最後に来たのは髪の毛を後ろに括って、幽霊と散々遊んだあと泣き別れた男の人だった。あの人は相当の力を持ってたと思うけど、ワタシを見つけるまではいかなかったみたいだ。まぁあの人とワタシが戦う日なんて来ないだろうけど。まずありえない。あの人に怒られるから。
ワタシが物思いに耽っていると、魚は綺麗サッパリ消えていた。どうやら異次元に片付けたらしい。
「さて、そろそろ行こうぜ」
「それは俺の台詞だ。取んな」
二体はまた喧嘩している。
話せないワタシに気を遣っているのか、ただ単に仲が悪いだけなのかはわからない。だが、ワタシはいつもそれで元気付けられている。
「……ん」
ワタシは少ししか開かない口から音を出し、砂浜に靴跡を増やしていった。
おしまい。
どうも、やっとメイク道具を買ってみたグラニュー糖*です!興味ない?えー。
よくリストを描くんです。マント楽しい。
そんなことより、新しいキャラが出そうですね!
横のリボンたち、お前ら何だよ!って話ですけど、どうやら謎の生き物っぽいですね。
ってことで、四期もお楽しみに!(出しました!)
あー、そうそう、あちらでイラストめっちゃ出してるんで見てくれたら嬉しいなーなんて。
最近出したの?ハレティとかかな!
では、また!




