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怪奇討伐部Ⅲ  作者: グラニュー糖*
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vs.サニー

第四十話 呪術師サニー



「……ムジナ、どう思う?」

「え?どう思うって……」


 ヘラは前を見据えたままオレに問いかけた。

 オレたちの前には青い髪の男の子……サニーが立っている。彼は不気味な笑みを浮かべながら武器である何の装飾もない巨大なニードルを各指に挟んでおり、今すぐにでも飛んできそうだ。


「サニーは本当に俺たちを倒そうとしているのかってことだよ」

「……ヘラはお姉ちゃんがいるからわかんないと思うけど、オレはサニーと同じくお兄ちゃんがいるからわかる。平和を邪魔する奴は皆殺しってワケさ……。アンダースタン?」

「なにこいつ腹立つ」

「すんません調子乗りました」


 オレは息をするように謝り、それでもヘラの顔を見て反応を待った。


「ま、その考えからしてわからないこともないな」

「?」

「俺にも似ているのかもしれない」

「いつも冷静なヘラが?」

「そんな、お前がいなくなったとき、他人が引くぐらい落ち着きがなかったさ」


 ヘラはやんわりと笑った。


「もう……っ」


 オレがヘラに笑い返し、そんなことないよ、と言おうとしたが、黒池からの通信に掻き消された。


『……ターゲット、サニーくん、ニードル発射用意。来ます、対応してください!』

「ムジナ、これが最後の戦いだと信じたい。サニーは……感じたことないほどの力を持っているみたいだし、あいつも言っていたように最強かもしれない」

「最強、ですか……ならばそろそろ潮時なのかもしれないですね」


 サニーの言葉にヘラは眉を顰めた。


「あん?」

「行きますね、覚悟してください」


 宣言した直後だった。

 何が起きたのかわからない。

 ただ、言えるのはとてつもない圧力と恐怖がオレだけでなくヘラやライルにまで襲いかかっていたという事実だ。


____勝てない。


 誰もがそう思った。


「なんだっ……これ……」

「そりゃ……レインもあんなことになるよな……っ!」

「嘘……こんな化け物がいたなんて……!」


 オレとヘラはもちろん、ライルまで弱音を吐いている。


「魔術を扱うにおいて、自分が凍らせたり燃やしたり雷を落としたりしていると考えてはいけないんです。世界はいつも生き物の敵であること、生き物より上位の存在であることを敬い、同時に恐れなくてはならない」

「……だから何だって言うんだ?」


 ヘラは恐怖を顔に出すまいと強気に問うた。


「あなたたちには自然の怒りを知ってもらわなければいけないんです。……まずはこれはどうでしょう?……地割れ」


 サニーは呟くと共に地面をコン、と蹴った。その途端にサニーの前方二メートルから地面が割れていき、勢いが劣ることを知らぬまま言葉の通り、地割れが起きた。


「わ、わ!?二人とも飛んで!」

「それぐらいわかってる!それに見てみろ、地面から生えてきた建物が……」


 土煙の間に見えた建物。それが音を立てて崩れ始めていた。


『大丈夫ですか!?メーターが振り切っててヤバイことになってるんですけど!』

「皇希は黙ってろ」

『は、はい……。……あの、その受信機についているカメラで映像を確認しているのですが、視界が悪いようですね。僕が反応を調べてナビゲートしましょう』

「お、たまには役に立つじゃないか」

『たまにってひどくないですか!?……って、右です!あぁ、ムジナくん、正面から魔力反応です!避けて!』


 黒池のテキパキとしたナビのおかげで四方八方からの攻撃を避けることができた。そのナビは今もまだ続くが、同時にオレやヘラを狙うなんてサニーは相当な実力者だ。


「もう、なんで避けるんですか?では次は……吹雪」


 サニーが再び呟くと、文字通り、吹雪になった。


「さっむぅ!ヘラ、暖めて!」

「無理。避けるのに精一杯」

「えぇー?!」


 オレの悲痛な叫びも虚しく、体が暖まることはなかった。しかしそのあとからヘラはチラチラとこちらを窺うようになった。


「くっ……さすがにキツいな……」

「……ライルは大丈夫?!」


 オレが詠唱が聞こえる方向に問いかけると、詠唱のし方が少し不機嫌になった。

 まさに私を何だと思ってるのよ、と訴えるかのように。


「あの人は魔王だぞ。柔じゃないだろ」

「そ、そうだよね……」


 オレは、本当に自分の身は自分で守らなくてはならないと自覚した。ヘラにも、もちろんライルにも互いを守る暇はない。オレはようやくこのメンバーの中で最弱だと理解した。


「ふふふ、寒いでしょう?僕も風邪を引いてしまいますから暖まりましょう!……マグマ」

「「まっ……マグマぁ!?」」


 オレとヘラは素っ頓狂な声を上げた。

 それと同時にマグマ……ではなく、マグマかと思えるほどの熱風が吹き荒んだ。


「落ち着いてくださいよ。僕には自然界の最上級といえるマグマは操れません。それより少し劣る熱風くらいですから」

「それでも熱いわ!!」

「ありゃりゃ」

「ありゃりゃじゃねぇー!」


 先程の吹雪で積もった雪は溶けきってしまった。


『ちょっとヘラ、叫ばないでくださいよ。鼓膜破る気ですか?』


 黒池のクレームも飛んで来、


「ご、ごめん……」


 と彼はしおらしく謝った。


「……ではお戯れはここまでです。本気を出しましょう」


 サニーは結局地面が割れただけの状態になった地上に降り立った。そして手を広げる。それだけで彼の周りの木々は鳴りを潜めた。


「……本気……か……どれほどのものか見てやろうではないか」


 ヘラの少し震える声を聞き、オレは彼の後ろについていった。靴の裏に地面が付く。中で何かが胎動しているのが感じられる。これは……?


「おや、気づきましたね?それは今からあなたたちを殺す力です。それ以外言いようがありません」

「殺す……力……」

「ですが……ムジナさんだけは例外ですけど……ね!」

「どういう____ぅぁあっ?!」


 サニーが手を勢いよく上げると、地面から紫色の光の柱が何本もそそり立った。その中心にはオレとヘラとライルがいて……。


____そしてオレの意識は途絶えた。

どうも、グラニュー糖*です!

最近PVPのゲーム始めたんです。

それを言ったら、珍しいって言われました。

あと、腰は多分……うん、治った、かな。……多分。

では、また!

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