クローン技術
第三十三話 疑心暗鬼
『あっあー。聞こえますか?リストさん』
「あぁ、聞こえているとも」
サニーの声が耳ではなく頭の中から聞こえる。今、サニーはクノリティアの雪山に残っているが、オレは彼の力でバノンにいる。さすがに座標をピッタリ合わすことはできなかったらしい。……そして許しがたい事態に陥っている。
「でもな、木の上はないだろ木の上は!!」
オレは今木の上で両手足に全身全霊を込めて必死に掴まっている。風でグラングランと揺れて、今にも落ちそうだ。はっきり言わせてもらうと、やばい。マジやばい。
『ごめんなさい。ジャングルになりつつあるバノンはこの目で見ていないので、どうも座標がわからないのです。その……ボクもそのピンチさが理解できてます。でも……あの……っ』
「いいんだよ!どーせお前は視界だけ共有して、痛い思いをするのはオレだけなんだ!まったく、ふざけんな!」
『ひぇっ!ごめんなさい!!』
「謝ってる暇があったら地上へテレポートさせろ!」
『無理なんです!それだけ遠けりゃ、できません!それにクールダウンがまだです!』
「もうお前、それだけやる気がないなら帰れ!」
オレは必死に謝るサニーを少しだけ不憫に思いながらここから降りる方法を考えていた。……が、少しでも動くとアウトなんで、ここで一歩も動かずに助けを待つことにした。いや、待つ必要はなかった。下から声が聞こえる。カリビアが様子を見に来てくれたのだ。彼もオレのことに気づき、器用に隣の建物の壁を上っていき、大ジャンプのあと、オレを救い出してくれた。
「……怪我はないか?」
「カリビア……!無い!」
「そりゃあよかった」
「……ところでカリビア」
「ん?」
「これはさすがに恥ずかしい」
オレは一つだけ気に入らないことがあった。それはこの状態、お姫様だっこだ。
「ごめんごめん。癖なんだ」
「そんな癖面倒だろ、絶対……」
「よくわかってるじゃないか」
「うわ、マジだったのかよ」
「うわ、適当だったのかよ」
笑い合うオレたちのことを、オレの視界経由で見ていたサニーは呆れていた。
『あの人ってこんなのだっけ……』
「……まぁね」
「ん?なんか言った?」
「何にも」
ここでカリビアにサニーの存在を知られるのは非常にまずい。サニーには無口になってもらわねば。
「もう大丈夫だろ」
「ありがとう」
オレを下ろしたカリビアは自分の手を見て一瞬固い表情を見せ、オレに真剣な声で話しかけた。
「……お前、そんな怪我でここまで来たのか?こんなに血を流してまでここに来ること無いだろう?」
「……ナニルとラビスがやられたんだ。まだ軽傷だったオレが動かないでどうする!」
「何だって?!……わかった。一応店においで」
急ごう、と進みかけたカリビアを呼び止めた。
まずは目的であるレインの安否を聞かないと。
「……レインは今も寝てるのか?」
「あぁ、寝ているさ。でもどうしてそんな質問を?」
「……こんな異常事態なんだ。そりゃ心配にだってなるだろ」
「ま、そうだよな。……オレの周りは怪我人しかいなかったからそんな感情はとうの昔に消え失せてしまっていたのかもしれないな」
カリビアは歩きながら悲しそうに呟いた。戦乱を生き抜いてきたカリビア。その戦いぶりは両腕の包帯を見ればわかる。大火傷を隠す包帯。これはカリビアの心まで隠してしまっているのではないかと思えてしまう。
「……すまんな、オレも全然頭が追い付かなくて……疑心暗鬼になって、何でも疑っちまう」
カリビアは申し訳なさそうに言った。
「いいんだよ。カリビアもお疲れ様。ずっとレインの面倒を見てくれてありがとう」
「リスト……まずはお前の治療からだな」
「あ、あはは……」
とりあえずカリビアの店に着いたオレたちはまず傷付いた体を癒すことにした。流血は前より少しだけ酷くなっている。そのせいか視界が白く霞む。そのことについてサニーが不満の声を上げた。
『……そんな体で大丈夫なんですか?』
「……あぁ」
オレは治療の準備をしているカリビアを見て言った。今ならサニーと話しても問題ないだろう。
『……あの人に許可を得て、お兄ちゃんのところに行くことはできませんか?』
「そうだな、やってみるか」
『お願いします』
「……カリビア」
オレは緊張して少し上ずった声でカリビアの名前を呼んだ。こんなこと頼まれるのは初めてだからって上ずることないじゃないかと思ったが、カリビアは振り向き、何も思っていないかのように首をかしげた。
「レイン、見てきていいか?」
「ダメだ、治療してからだ。お前のその傷口、それ以上動くと開くぞ。梯子なんか上れる体じゃないだろ。ほら、始めるぞ」
「……わかった」
カリビアの手には鈍い光を放つナイフがあった。大きなハサミだってある。……随分本格的だな……。
「まずは服を脱げ。ついでにあとで洗っておいてやる。……血で張りついているのか。やっぱ切るか」
「えっ、やめて」
「マジな声で言うなよ……わかった、善処する」
そう言っておきながらハサミの手持ち部分を回して遊ぶな。……さすがに治療される身だからそんなこと……。
「ごめん、飛んでった」
「ぐはぁっ?!」
幸運にも手持ち部分のところがオレのお腹にぶつかった。刃の方だったらと考えると……いや、やめておこう。
『めちゃくちゃな人ですね……』
「うぐぅ……」
『返事ができないほどなんですか?!』
前屈みになって苦しむオレの傷口が開き、血が出てきた。こんなところで死にそうになるなんてとんでもない奴だな……。あ、オレのことか。
「止血止血!」
「いたたたた!!強く巻きすぎだ!」
「あぁ、ごめん!」
「緩めるな!出てくる!」
「じゃあ我慢しろ!」
「なんでオレがー!?」
ギャアギャア騒ぐオレたちのことを、サニーが馬鹿だなぁと呟く頃、オレは痛みで失神していた……。
__________
怪鳥から見事逃げ切った俺たち。ムジナのお願いで今は休憩している。
「なぁ、テレポート使わないのー?」
「今は使えない。座標がえげつないことになってるからな」
俺は手に持っている水晶を見た。そこには経緯が書かれているのだが、今は映像が乱れている。これじゃあ使い物にならない。
「ほんとだ。……なんだろ、制限が多くて、これじゃあ人間と人間の戦争みたいだ。……オレが一番嫌いなやつ」
「言えてる。ムジナは人間が好きなんだもんな。人間が大量に死ぬ戦争が嫌いなんだろ」
「あ、それは仕事が増えるから」
「……」
「何か言えよ!」
俺は頬を膨らませるムジナを見て笑った。俺はこうやって二人で過ごすだけでもすごく嬉しい。……状況が状況だけど。
「よし、行くか」
「もう行くのー?」
「こうしている間にも困っている人が増え続けている。俺たちがシフに会えば、さらに被害が大きくなるだろう。だから逃げ続けるんだ」
俺の言葉にムジナは表情を曇らせて下を向いた。ムジナも未だに信じられないのだろう。だが現実は現実だ。
「……でもいつかシフを止めないといけないんでしょ?」
「……俺は覚悟ができてるさ」
「覚悟……か。オレには縁の無い言葉だと思ってたのになぁ」
ムジナは立ち上がり、再び歩き始めた。
彼は燃えていない方に体を向けた。
「……そっち方面はエメスだ。ムジナ、やっぱり……」
「シフと戦うなら、学校がいいかなって」
「そうか。それに……どう見ても誘導されているみたいだ。あいつら、俺らの居場所を知っているのか。まぁ雨についてはさすがに予想外だったみたいだけどな」
そう言いつつ誘導されていく俺たち。本当、馬鹿だ。
……と、突然ムジナがこちらに顔を向けた。
「ヘラ……いつもごめんなさい」
「いいんだよ。楽しいことをあまり知らなかった俺に遊ぼうって誘ってくれたのはムジナじゃないか。あの時から俺はお前に尽くそうと決めたんだ。謝ることはないよ。こういうときはな……」
俺は一歩踏み出し、ムジナの耳元で囁いた。
「ありがとうって言うんだ」
「……!……ありがとう、ヘラ」
「よくできました」
俺はこの光景を見て、不意にリストのことを思い出した。彼にも親友がいた。彼だってこういう風に仲良く話していたかもしれない。内容は俺たちのことよりもっと平和なものだっただろう。なのにどうして彼はあんなに心がおかしくなってしまったのだろうか。
「どうしたの?ヘラ。怖い顔しないで」
「あ、あぁ……すまん。リストのことを思い出してな……」
「リスト……大丈夫かな……防衛戦……」
「あいつのことだ、鞭でビシバシ対抗しているだろ」
「そ、そうだよね!」
にっこりと笑いながらもその顔はひきつっている。……そうされると俺まで不安になってくるのだが……。
「ほら、行くぞ。目指すは霊界の……いや、学校だ」
俺はようやくやる気になってくれたムジナのあとを追って駆け出した。
俺もムジナもどんな結果になってもそれが運命だと受け取る。シフ……お前はどんな思いでここに来ているんだ?
__________
「スクーレ」
「何?」
リメルアが何かを思い出したように話しかけてきた。それはとても突発的なものだった。
「部下、欲しくない?」
「……は?」
私は理解不能な言葉に口をあんぐりと開けた。
「……って、問答無用で用意してるんだけどね。言うタイミングが無くってさー」
「は、はぁ……」
私はただ首を縦に振るしかなかった。
「で、用意したのがこちら!」
リメルアが自信満々に翼を向けた方向には、蜘蛛の足を持った少女と灰色の耳としっぽを持った少年だった。彼らはどう見ても人間でも悪魔でもなく、アラクネと狼男だ。……部下って……どういうことかわかってるのかな……。いや、リメルアだから感性がズレてるのか。
「……よろしくお願いします……」
「……よろしく」
アラクネ少女は頬を赤らめてモジモジしながら挨拶をした。一方狼少年は素っ気ない。私はリメルアを見て、彼女が首を縦に振ったのを確認して挨拶をした。
「よろしくね、二人とも」
「あっ、あのっ……失敗したら自害します」
「……好きにして」
____……う、うわぁ……重い……重すぎるよ……!この子達、大丈夫なのかな……。
私は後ろを向き、リメルアに慌てて話しかけた。
「やばいよやばいよ!どう接していいのかわかんない!」
「狼くんはともかく、アラクネちゃんは大丈夫だから」
「ともかくって……!」
私は言い返すためにリメルアを見ると、彼女は非常に神妙な目付きで私を見ていた。
「スクーレ……あなたはもう悪魔と手を組むのはやめなさい。あなたは人間なのよ」
「え?いきなり何を……」
「スクーレ、あなたはどうして悪魔に手を貸すの?」
「そ、それは……」
「理由がないならやめなさい」
リメルアは翼を広げ、今にも飛びそうだ。左が少し痛そうだが。
「理由はあるわ!」
「何よ」
____理由……そんなの……。
「彼らが好きだからよ。友達だもん。ずっと一緒にいてもいいじゃない」
「……友達と思ってるのはスクーレだけだとしたら?」
「私が友達だと思っている以上、友達なの」
私はリメルアを見つめ返した。しばらく硬直状態が続く。だが、先に動いたのはリメルアだった。
「……はぁ、わかったわよ。実はね、黒池が質問すべきことだったのよ。あの戦いの時、頼まれたの。どうしても聞いてほしいってね」
「黒池さんが?」
「そ。あわよくばスクーレに悪魔を倒してほしいって。一緒に戦ってきた仲間なのにそんなことするわけないわよね、スクーレ」
「もちろんよ」
私は苦笑いしながらただ一つ思った。大人は信用できない、と……。
「あの……スクーレさん、リメルア様、私たちは……」
「……放置、だな」
「そんなぁ……やっぱり自害……」
「するな」
「うぅ……」
視界の隅でアラクネ少女と狼少年が話している。しまった、放置してた。
「ご、ごめんね!」
「うーわ、部下を放置するなんて最低」
「リメルアの言えることじゃないでしょ!」
「あはは」
二人は私たちの不仲さを目の当たりにし、驚いている。
「二人には名前をつけないとね」
「え?名前無いの?」
「はい。私たちはただアラクネ、狼男として過ごしていました」
「そっか……。じゃあアラクネちゃんはフローラ!で、狼男くんは……ウィル!」
私が言い放った直後、リメルア、フローラ、ウィルはまるで置物のように固まった。この異常な光景に私はとんでもなく不安になった。
「ど、どうしたの?」
「スクーレ……なんか……すごいわね、あなた」
「え?」
「フローラ、ウィルは彼らが人間だった頃の名前よ。つまり本名」
「え……え?!うそっ?!」
「本当よ。ま、二人とも喜ぶといいわ。種族で呼ばれるのではなく、名前を……しかも本当の名前を呼んでもらえるなんて滅多にないわよ」
「そうなんだ……」
私は彼らの顔を見た。フローラは涙を浮かべている。ウィルは照れくさそうにしている。どちらも嬉しそうでよかった。
「この子達はハレティの部下のうちの二人だったの。この長い長い戦いが始まる頃、ハレティは包帯男を作る人を失ったわ。この子達はその人の弟子みたいなものよ。つまり遠い部下ってこと」
「遠い親戚みたいな言い方しないでよ……」
「その方がわかりやすいでしょ?じゃ、私も離脱しようかな」
リメルアは広げていた翼に力を込め、そのまま飛び上がった。
リメルア……まさか最初からその気で……。
「早く戻んないとライルに怒られるからね。……早くその防弾チョッキを二人に渡してやりな。もしショットガンではなかった場合……未知ね」
「ちょっと!ショットガンじゃないって……それにこれは本体じゃないんでしょ?ならここにいたって____」
「いえ、あそこは力が完全に封じられるの。そうじゃないと意味無いでしょ」
「それはそうだけど……」
私が下を向いたとき、フローラに肩をポンと叩かれた。彼女を見ると、どこかに指を指している。……あそこは?
「着いたわよ。マリフのところ」
「そう!ここはボクのお店だー!」
「うわ!?」
突然耳元で大きな声が聞こえた。女性の声で、ずっとゲラゲラ笑いながら何かをゴリゴリと噛む音が聞こえる。思いきって後ろを向くと、そこには黒髪の女性が飴を食べて立っていた。
「いやー、ショットガンだの何だの聞こえてくるから誰だと思えば人間に悪魔に妖怪ときた!多種多様でいいねぇ!」
「あ、あなたがマリフ?」
「そう!そしてこのボクがあの子に光線銃『爆散モード一号』を与えたのである!はっはっはー!」
マリフは腰に手を当てて陽気に笑う。この人が黒池さんが探していた犯人……。それに光線銃って?
「おやおや、何のことかわかんないって顔をしているねぇ。光線銃『爆散モード一号』はね……」
「光線銃はいいから、クローンについて教えてくれないかしら?」
「吸血鬼はどうしてこうせっかちなのかな?わかったよ、教えてあげる。お店においでよ」
マリフがくるっと半回転し、そのまま歩いていってしまった。私たちは少し戸惑ったが、あとを追いかけていった。
少し進むと、小屋が見えてきた。これがマリフの店……。
「ようこそ!ここがボクの店だ」
「あら、このボタン何かしら」
「おっと、それはダメだよ、吸血鬼。秘密兵器を出すためのボタンなんだから」
「……『押すな!絶対ダメだからな!』って書かれてるから気になるわよ……」
リメルアが呆れた声を出す。確認すると、本当に書かれていた。しかも赤いボタン……わかりやすすぎる。
「吸血鬼の目的はクローンでしょ?ささ、こっちこっち!」
マリフが怖いぐらいにニコニコしながら向かったのは『地下へのエレベーター』と書かれた場所だった。マリフは青いボタンを押し、私たちに入るように指示をした。
チーンと音がし、外に出ると中央に青く光るものが置いてあり、周りに大量の機械が用意されていた。
「すごい……」
「このケースに魂を入れてちょうだい。次は好きな体を選んでね」
マリフはズカズカと奥に進んでいく。私はこの異様な空間に放っておかれるのはたまったものではないので、急いで追いかけた。
「これは知る人ぞ知る、つまり裏メニューみたいなものなんだ。そこの吸血鬼はそれほどこの人のクローンを作りたいんだね」
「詮索は無しよ。体は……あ、これ瓜二つじゃない。決定ね」
「オッケー。じゃ、上で待っててよ。ボクの作品でも見てて。すぐに終わるからさ」
マリフは再びエレベーターを呼んだ。フローラとウィルは先に乗り、私はもう一度クローン技術の結晶を見て、エレベーターに乗り込んだ。
__________
スクーレたちが店に戻ったあと、私とマリフは地下に残っていた。マリフは私が何を言い出すかの見当がついているらしく、さっきの笑顔を完全に消して真剣な表情で話しかけてきた。
「……リメルア。やっぱりサメラにはバックがいたんだね」
「えぇ。やはりノートよ。めんどくさいことに、あいつ、ハレティの遺体を持ってっちゃったわ。私じゃ到底敵わない力で攻撃してくるんだもん。守り続けるなんて無理無理」
「あの体はボクも驚くほどの力の適性度だ。ノートが何をするのかは想像がつくけど、実行される前に取り返さないと本気でやばいよ。ボクはそれを阻止するためにクローン技術や人間界の技術を貰っているんだけど……どうやら犬が嗅ぎ回っているようだね」
マリフはピンク色の飴を食べながら話した。
恐らくノートはハレティの体を使って下界に干渉してくるだろう。それともハレティの体を崩壊寸前まで扱き使うか……。どういう結末にしろ、ハレティは不幸になってしまう。生まれたときから死ぬときまで不幸であった彼を最期の最期に幸せにしてあげたい。種族が違うし、ましてやハレティを殺した私が言うことではないが、ハレティの存在だけは絶対に守ってやる……!
「犬って……黒池でしょ?」
「ま、そうだな。……で、どうするの?ノートは不可侵領域にいるんだろう?でも今、ヤーマイロちゃんが行ってるみたいだけど。冗談抜きで殺されちゃうよ。またボクにクローンをつくってもらうように頼むの?」
「そうね。……そうだ、スクーレには初対面って形で紹介しちゃったけどよかった?」
「どんなのでもいいよ。リメルアの周りじゃあボクの発明品を使ってる人が多いみたいだからいずれ知ると思うしね」
「それもそうよね」
マリフは昔からの友人である。もちろん彼女の方が年上。かなり昔から魔王軍の専属鍛冶師で、最強と謳われた副隊長カリビア・プルトが弟子入りしたほどだ。
「てかさ、リメルア、独房ってどんなとこよ。寒い?冷たい?暗い?怖い?」
マリフは目を輝かせてグイグイと聞いてくる。……この人、いつも気になったらこうだもんなぁ……。とりあえず答えておこう。
「寒くないし、怖くもないわよ。あ、でも扉を触ったら電気トラップが発動するわよ。ライルが電気使いだからね。でもまぁすぐにマリフも送られると思うわよ。ライルのところか黒池のところかはわかんないけどね」
「是非うちで発電機として働いて欲しいわー」
「……怖さ知らずね……」
さらに目を輝かせるマリフ。冗談で言ったのだと思うが、いつか現実にする強さを持っている。いつだってそうだ。不可能と思われた機械たちをきちんと作っている。一匹狼として生きていた私のためにマリフはクローン技術を作ってくれた。クローン技術はできないとされていたが、マリフは実現させた。
ヤーマイロやサメラは一体何代目かわからない。だが、生まれ変わる度彼らに『そういうこと』と伝えている。そこについてはマリフはノーコメントのようだ。ただ単に興味が無いだけかもしれないが。
「今回はヤーマイロは復活させないの?まだ生きてる?」
……クローンを作るのに『復活』というのを本当にやめてほしい。
「……さっき話したでしょ?すぐに死ぬと思うわ」
「はいよ。すぐに起動できるように設定しとくから。まずはサメラだね。でも今回はノートが介入してるんだろう。何が起こるかわからない」
「それでもいいわ。何かが起きれば……きっとあの子達がやってくれる。もう私には手の届かない場所にいるんだから」
私はヘラやスクーレたちの姿を思い浮かべた。私は左手を失った。もう戦える状態でもない。この事実はマリフは知らない。
為す術は全て失った。あとは奇跡に頼るしかない。
____シフなんかに負けないで、ヘラ。ムジナが知る彼はもういないんだから。ハレティの仇を討ってちょうだい。
どうも、グラニュー糖*です!
授業で使うイラストを(自主的に)描き直すとかいうバカなことをしています。
ストーリー進まないよ!レポート書かないと!
でも小説やってるおかげで、文章力が上がって、先生に褒められました。やったね!
では、また!




