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怪奇討伐部Ⅲ  作者: グラニュー糖*
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勇者

第三十話 ゲームオーバー



「あらあら、仕留められなかったわ」

「それが部下に言う言葉ですか?……まぁ、こっちも上司に同じような言葉を言うんですけどね」

「自信満々じゃない。いいわ。その想い、ぶつけなさい。もちろん物理でね」

「わかってます、よ!」


 サメラがポケットから取り出した手のひらサイズの丸い氷に力を加えると、ハリセンボンのように大量のトゲが勢いよく伸びた。当然、リメルアはその不意打ちを華麗に避ける。


「そんな凶器、持っていいと許可した覚えはなくてよ」

「護身用ですよ」

「護身用、ねぇ……」


 すぐにトゲは無くなり、ただの丸い氷に戻った。……と思えば、今度はそこから生まれた新しい玉を豪速球で投げてきた。しかも数えきれないほど大量に。いくつかはリメルアでも防ぎきれず、こっちまで飛んでくる。それを私たちは跳ね返していった……。


「うわわ、重い!」

「これがスフィアサイズだったら最悪だったな」

「もう、バルディどこ行ったのよ!リメルア様が大変だというのに!」

「呼びました?」

「うひゃあ?!」


 ヤーマイロが叫んだ瞬間、真横にバルディさんが現れた。そのせいで狙いが外れたが、それをバルディさんは涼しい顔で、しかも片手で弾き飛ばした。


「ど、どこ行ってたの?!」

「呼ばれなかったんで、屋敷で紅茶を淹れておりました」

「えぇ……自由すぎるでしょ……」

「それで。この氷を溶かす以外にやることがあるんですよね?」

「あぁ。サメラを倒……いや、リメルアに加勢してやってくれ」

「いいんですか?」

「殺生は嫌いだ」

「死神王なのによくそんなことが言えますね」

「どうせ吸血鬼は死なん。ま、神の力がどうこう言ってるのであれば、その資質は薄れゆくけどな。……先天性ドラゴンソウルを持つバルディ、頼まれてくれるか?」

「えぇ。あなたのお望みであれば……」


 バルディさんは眼鏡を外し、ヘッジさんに手渡した。そのまま高速で戦う二人の方に歩いていく。その足取りに迷いは見えなかった。


「では……いきます」


 まず手始めにこちらに飛んでくる氷の塊を左手で全て溶かした。ヘッジさんによると、両手の力を解放するとどうなるかわからないので左手だけにしているらしい。


「一人増えただけじゃまだ足りない」

「その言葉、よく覚えておいてください。私を操り、ヘッジ様たちを攻撃させたこと……絶対に許しません」

「あら、そんなことさせたの?ますます許せないわー」

「あなたはもう少し真面目に戦ったらどうです?」

「大真面目ですとも。……あの日、ヘラと戦った時もずっと、ね」


 リメルアの目が笑っていない。ヘッジさんを見ると、どう見ても「やっちまった」というような表情をしている。ヘラの話は地雷のようだ。……というか自分で持ち出してなかったっけ?

 それはともかく……このバトル、目が追い付かない。


「……バルディ、あなたは氷を封じといて。私はそろそろ仕留めにかかるわ」

「仕留められるの間違いじゃないですか?リメルア様」

「いいえ。あなたは私に倒されるわ。あなたは私の部下。逆らうなんて許さない」

「……少しピンチかもな」


 こちらから見てもサメラがかなり劣勢だ。神の力対策のバルディさんが存在し、完全に封じた場合、残るのは吸血鬼の力。それはリメルアより劣っている。論理的にサメラは負けるだろう。


「……では、氷は封じさせていただきます」


 言い方は冷たいが、それとは反対にドラゴンが吐きそうなほど熱い炎を吹っ掛けた。溶けていく氷を一瞬確認してリメルアはサメラのところに飛び込んだ。すぐさま鉄と鉄がぶつかり合う音が響き始めた。


 途中までは明らかに優勢だったが、変化が見られたのはバルディさんの周囲に溶けた氷の霧やら水蒸気が立ち込め始めたあたりだった。


「周りが見えにくいですね……」

「前見て!バルディ!」

「え?うわっ!?」

「バルディ!きゃっ!」


 氷の玉がバルディさんのお腹にクリーンヒットした。そのまま膝から崩れ落ちる。リメルアが助けに行こうとよそ見した瞬間、彼女にも氷の玉がぶつかった。

 バルディさんにはドラゴンの鱗があるので軽傷だが、リメルアの左手が氷の玉のせいで吹き飛んだ。


「いったいわねー」

「申し訳ありません……この目眩ましも作戦だとすれば、相手は相当なやり手ですね……」

「ヘッジさん!私……見てられません!」

「あっ、スクーレ!!」

「ちょっと、何考えてるの!?死にに行くようなもんじゃない!今のサメラはほぼ暴走してるようなものよ?!」

「いいの!少しでも隙を作らないと!」

「すぐに死なれたらハレティたちが悲しむでしょ!」

「でも……!それでも二人をサポートしないと!」


 私は叫びながら三人のもとに駆けていく。氷の玉が飛んでこようが、お構い無し。死んだら死んだでいい。


「……愚か者」

「それっ!」


 サメラが氷の玉を飛ばすと同時に私は斧を水平に凪ぎ払った。先端の星のオブジェが反応し、斧の刃に魔法がかかる。そして氷の玉を真っ二つにした。


「なにっ?!」

「隙あり!」


 彼が狼狽えた一瞬、ヘッジさんの声が聞こえた。直後、サメラの背後に鎌を振り下ろすヘッジさんの姿が現れた。


「しまっ____」


 後ろを振り向いた時、鎌はすでに彼の魂を捕らえていた。


「……死神王の名のもとに命ずる。永遠に眠っていろ、サメラ。お前の魂は封印させてもらう。ゲームオーバーだ」


 ヘッジさんが宣言し、サメラの姿は闇に包まれる。闇が晴れたとき、サメラは気を失っていた。


「やった!」

「さすがヘッジ様ですね」

「体は大丈夫なの?」

「はい。あなたこそ腕はどうするのですか?」

「これくらいすぐに治るわよ」

「モンスターですね……」

「誰がモンスターよ、誰が!」


 二人が言い合いしてる間、ヘッジさんはこっちに戻ってきた。……ヘッジさんというか、彼の霊体が。霊体を放つだけでもかなり体力を使う。そのため、彼は立て膝をついた。


「ヘッジさん!あの……ありがとうございました!」

「いや、スクーレの勇気がなければ実現しなかった。スクーレ、君は本当に勇者だ。……ぐっ……」

「ヘッジさん!?」

「俺は大丈夫だ。早く……早くリストのところに戻ってやれ……」

「はいっ!」


 ヘッジさんの真剣な眼差しに圧され、私は一度も振り返らずに回れ右をして走り出した。いつの間にかヤーマイロが消えている。その代わりに赤い蝙蝠が服の中に入っていた。


「……ノート、か……確かあいつも同じことを言ってたような……」


__________


「はっくしゅん!いたたたたっ!!」

「くしゃみ?その状態で風邪なんか引いてみろ、最悪だぞ」

「しょうがないじゃないか!いぎゃっ?!」

「どうどう」

「オレは馬じゃねぇ!」


 皆がそれぞれやるべきことを果たしに行っている間、オレとレインは店に残っていた。しかし、客が来ない。いつもは一日に二、三人ほど来るのだが、全く来ない。それもそのはず……。


「ほらそこ!雨入ってる!あーもー、窓が割れたせいで寒いったりゃありゃしない」

「お前はずっと布団に入ってるだろ。……それにしても雨が降ったと思いきや、地面からわけわかんねぇ建物がたくさん生えてくるとはな」

「普通の人が聞いたら、生えてくるってのはおかしいけど……さすがにこの状況じゃあ納得しちまうよなぁ」


 オレとレインは割れた窓の外を見ながら呟いた。雨が降ったのと同時に、ものすごい地鳴りと共に巨木と作りたてとほぼ同じようなレベルの保存状態の建物が生えてきた。

 その他にも変化はあった。それはレインの夢にハレティが出てこなくなったこと。昔から天気は亡くなった者の力に比例して変化するようになっているが、こんなに降る雨は珍しい。それにハレティは水を使う。どう考えてもハレティが消えたということが正しい。


「……そうだ、聞いてくれ。夢でハレティの代わりに初めて夢を見た日に出てきた胡散臭い奴がまた出てきたんだよ」

「胡散臭い奴?」

「あぁ。なんか……ノートとか言ってさ。ま、あいつのおかげで怪我が治りやすくなったわけだけどよ。でも……なーんか嫌なんだよな。お前の妹は預かった!ってなこと言ってきたし。オレに妹なんていないっつーの」

「ノート……か」


 オレはレインと正反対の方向を向いて考え始めた。

 レインには言っていないが、現在、ノートのせいで問題が起きている。そんなノートがレインの怪我を軽くしたなんて。一体何を考えているのだろうか。


「でもま、オレには弟がいるようだし、一緒に頑張るって手もあるだろうよ」

「……そっか」

「こんな暗い話は置いといて、もっと明るくいこうぜ!オレらが暗くなっててどうする!」

「ふふ……そうだな」

「もう、カリビアってばちゃんと聞いてる?」

「あ、あぁ……」


 そうしてレインは笑顔でいろんなことを話してくれた。しかしそれは全て一人での話。弟と妹の話は出てこなかった。


「……でも風邪の時は弟が治してくれたんだろう?」

「オレより力が強いからな」

「ふん……もっとしっかりやれよ、『お兄ちゃん』」

「こっ、これは才能の問題だ!そうに違いない!」

「はいはい」


 頬を膨らませて怒るレインを尻目に、オレは再び窓の外を見た。

 城の方に王宮のようなものが見える。それに、この辺りにも綺麗な建物がたくさん見える。ここは城下町となっているからだろう。今みんながいるクノリティアは無事だろうか?あの人間は無事だろうか?とにかく今はオレができることをしないとならない。負傷しているレインのためにも人一倍頑張らないといけない。


 ……オレは眠ってしまったレインの顔を見て、気合いを入れるために黒池に教えてもらった珈琲というものを飲みに仕事場へ戻った。

どうも、グラニュー糖*です!


直球すぎですよねぇ。題名!勇者て……勇者て!!

……で、本題に。


次のストーリー開いたら、文字数多すぎて動作が遅いんですよ!!

あのですね、表紙、(pixivにて確認可能です)pixiv関連のサイトで出会った心優しき方にデザインしてもらったキャラを使わせてもらったんですよ。そして一言。


>>ヤーマイロ愛が強い!!!(誉め言葉)<<



☆編集もクソもなく投稿してしまいました


では、また!

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