表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪奇討伐部Ⅲ  作者: グラニュー糖*
22/44

雪国クノリティア

第二十二話 ムジナの行方



 ……あなたは正規ルートという言葉を知っているだろうか。

 この道を通らないとその場所に行けないということだが、オレはそれを丸ごと無視していったのだ。そして悲劇が起こったのだ……。


「な、ん、だ、よ、ここぉ!!!」


 一面白、白の雪景色!もはや木も見えない最悪な事態に陥っていたのだ!


 怒りに任せて叫ぶも、声は虚しく響くのみ。そう、れっきとした迷子になってしまったのだ。

 どうしてこのようなことになってしまったのか。それは後先考えないオレのせいだった……。


____ムジナが大変なことになってしまったため、急いで洞窟の壁を上っていったが、クノリティアに辿り着くには洞窟の中を通っていかないといけない。……ということだった。


 こんなアホなことになってしまったのは一体誰のせいだ、とブーメラン発言を飛ばすが、すぐに虚しくなってため息をついてしまう。


「……今さら戻れないしなぁ……」


 後ろを振り向くが、吹雪のせいで何も見えない。このまま進んでいく方が安全だ。戻ったら……、いや、戻ることは不可能に近いと思う。だって……ねぇ、こんな吹雪の中、方向感覚なんてぶっ飛んでるんだもの。行けるわけないじゃないか。


「答えは先にある!進めば何かわかるはずだ!……多分!」


 根拠のない仮説を立て、どんどん先へと進んでいく。強風に煽られて帽子が吹き飛びそうになる。マントが激しくはためいている。……よく考えたら「吹雪の寒い」ではなく、「嫌な悪寒」がする。よく見たら雪ではなく……。


「これ、全て悪霊だ!なんでこんなに……うわっ?!」


 悪霊と言った直後、吹雪改め悪霊がオレの周りを旋回し始めた。オレは懐に手を伸ばし、鞭を掴んで凪ぎ払った。一瞬軌跡に沿って悪霊が離れたが、すぐにまた元通りになってしまった。


「くっそ……ムジナが待っているんだ、こんなところで立ち止まってられるか!」


 そう言って自分に鞭打つが、生暖かく、それでいて気味悪く冷たい悪霊に囲まれて身動きがとりづらくなってしまった。


「この秘宝は……お前らに使うには勿体無さすぎるんだ!オレは……あいつのために……!だからそこをどけぇ!!」


 オレは懐の中の小包を握って叫んだ。渦はどんどん狭くなっていく。もはやここまでかと目を瞑った。


「諦めるな!リスト!」

「今助けるわ!」


 どこかで聞き覚えのある声が聞こえる。しかしオレにはもう顔を上げる力も……。


「悪霊よ!死神王の名において、お前たちを成仏させてやる!」

「……死神王……ヘッジか?!」

「頑張って!リスト!」

「う、っぐぅぅっ……!」


 オレはヤーマイロの言う通り、耐えた。何が何でも耐える決意をしたから。


「リスト!手を伸ばせ!」

「……っ!」


 ヘッジの叫びに反応し、オレは咄嗟に手を伸ばした。ヘッジの冷たく大きな手に握られる。そして引っ張り出された。その反動で握っていた小包が手から滑り落ち、雪の上に落ちてしまった……。拾い上げようとしたが、ヘッジがそれを許さなかった。


「小包が……っ!」

「今はそれどころじゃないだろ!リスト、命を粗末にするんじゃない」

「ほっといてくれ!オレはあの秘宝を使ってあいつにもう一度____」

「バカ野郎!死んだ人にはもう会えないんだ。それは俺が一番知っている!」

「でもっ……」

「……もう遅いわよ。悪霊が食べ始めた」


 ヤーマイロが指を指す。そこには落とした小包の中身を食べている悪霊の姿があった。……食べると言うより溶かして、その力をもらっているようにしか見えないが。あれは聖者の涙といわれる珠……。悪霊になんか食べさせると、ろくなことにならない。

 それに、どんどん大きくなってきており、寒気も増している。


「……倒すしかないか」

「手伝うぞ」

「遠慮する。これはオレのせいだし。何より……」

「?」

「この先にムジナがいるはずだ」

「何だって?!あの子は捕らえられたはずじゃ……」

「いや、さっき麓にいた人間と戦っていたらしい。爆発音が聞こえていたからな」

「カリビアの店にいたあいつの仲間か……わかった、先に行く。すまないね」


 ヘッジとヤーマイロは先に進もうとしたが、オレはどうしても気になることがあったので呼び止めた。


「なぁ……」

「何だい?」

「どうしてこっちに来たんだ?」

「……少しでも仕事をしないと、さっきみたいなことになってしまうからね」

「仕事って……弟より大事なことなのかよ?」

「!」

「お前らには夜雨対床の絆はないのかよ!?」

「……リスト……」

「これだから死神は……大っ嫌いなんだ!!」


 オレはマントを翻し、クノリティアを後にした。こんなことになってしまった原因である人間を巻き込むために……。俺は悪霊を引き付けることにした。



__________



 リストが去ったあと、俺とヤーマイロは呆気に取られていた。


「……ねぇ、行かせていいの?」

「あぁ。あいつは……故郷の人間たちに忘れ去られ、家族も親友も失った、世界一孤独な男だ」

「孤独、ねぇ」

「……恐らく親友の魂を取った死神を恨んでるんだろうな」

「あなたたちも大変ね」

「いや……まぁ、そう言える、かな」

「……行きましょ。あの子が待ってる」

「そうだな、俺たちも行こう。どうか無事でいてくれよ……!」


 そして俺たちはこの先……白狼の天蓋樹林へ向かったのだが……。


「何だこれ……木がめちゃくちゃに切り倒されている?!それに……火薬のにおい……?」

「爆弾か何かの爆風で切り倒したんじゃない?」

「なら一体誰が……あれは何だ?」


 爆心地だと思われる場所には、巨大な氷柱があった。そこを中心に木が倒れている。恐らくここにムジナが……。


「待ってろ、今助け出す!」

「無茶よ!そんな鎌じゃ……」

「でも……やってみないとわからないだろ?!」


 ヤーマイロは叫ぶ俺の横をスイーッと通り抜け、氷柱に手を触れた。


「……ったく……だからカリビアに言われるの。……これってサメラの魔力に似てるわね。でも少し違う気が……」

「確かに。本来、ムジナは氷の魔法を使わない。サメラかバルディか、それとも別の奴がやったか……まだまだ謎が多いな」

「さっきの人は?」


 ヤーマイロは後ろを振り向いて呟く。その方角はさっきまでいたところだ。


「リストは違う。あいつは魔法なんか使えない、ただの人間だ」

「人間、ねぇ。よく人間を受け入れたわね」

「受け入れたとかじゃない。昔から受け入れられていた、だ。あいつには、かなりの勇気と情熱がある」

「過大評価しすぎじゃない?」

「いや……妥当だ」


 俺は鎌をしまい、氷に手を当てた。……冷たくはない。それどころか温かな鼓動を感じる。紛れもなくムジナのものだ。兄の俺だからわかる。だが、違和感も少しある……。


「どう?サメラの?それとも……」

「あぁ、ムジナのだ。しかし、ここにはいないようだ」

「いないの?」

「あぁ。後ろに穴が開いているはずだ。……どうして俺らはいつも離ればなれになっちまうんだ……」


 ……俺は爆風でぐちゃぐちゃになった白狼の天蓋樹林の光景をまぶたの裏に映し、上を向いて嘆いた。



 ……歩き続けて数時間。全く見つからない。


「……昔もこんなことあったっけな」

「昔?何があったの?」

「ムジナが行方不明になった。今日みたいな感じでな」

「!」


 ヤーマイロは口を塞いで目を見開いた。


「昔、ずっと俺はムジナをひとりぼっちにしないように新しい親を探していたんだ。あの日も同じようにいろんな所に行ってた。そして悲劇が起きたんだ」

「?」

「この前見せた崖覚えているだろう?あの崖付近の木が折れていて……俺は嫌な予感がして駆け寄って見たんだ。そしたら……予想通り、落下した痕跡があったんだ」

「そんな……クノリティアって相当高いでしょ?大ケガしてたの?」

「いや、恐らく下の……この樹林のおかげで大した怪我にならなかったんだろう。……で、問題はここからだ。ここにはモンスターがいてな……案の定襲われていた」

「ちょっと、大丈夫なの?あの子ドジっ子っぽかったけど」

「あぁ。なんとか食われる寸前に俺が助けたんだ」

「寸前ってあんたねぇ……」

「ま、助かったんだしよかったよ」

「……!待って!あれって……」


 ヤーマイロは一際高い木を指した。そこには凍った鎌を持った男の子……俺の弟、ムジナがいた。どうやらあそこから逃げ切れたようだ。とても安心した。


「ムジナ!」

「お兄ちゃん……!」


 ムジナは呪文を唱え、立っていた木を凍らせて滑り台のようにし、滑り降りてきた。その手には氷漬けにされた鎌がしっかりと握られていて……死神として認められるときに受けとる武器を……。


「……いつからその氷を使えるようになったんだ?」

「ヘッジ、あんまり怒らない方が……」

「……今朝」

「今朝?」


 ムジナは下を向いて答えた。鎌を覆う氷がどんどん水蒸気へと変わっていく。


「今朝、急に使えるようになった。お兄ちゃん……この力のどこが悪いの?」

「お前を力に溺れさせたくないんだ。サメラと同じになってほしくないんだ」

「……お兄ちゃんが……」

「?」

「お兄ちゃんが悪いんだ!助けに来ないから……あの時……っ!この氷は絶対に溶けない!溶かせるのは……ヘラだけだ!」

「あ、ちょっ、ムジナ!?」


 ムジナは魔法で氷の鏡を作り、その中へと潜って……逃げてしまった。


「あーあ、やっちゃったね、おにーちゃん」

「……皮肉たっぷりにお兄ちゃんって言うのやめてくれないか?」

「で、どうするのよ……もちろん追いかけるよね?」

「あぁ。恐らくムジナはイリスに向かったはず。全く、なんで端から端まで行かないとダメなんだ……」

「本音出てるわよ」

「……さぁ、行くぞ、ヤーマイロ」

「はいはい」

どうも、グラニュー糖*です!


なんと、なんとですねぇ。

5、6分で新キャラが誕生してしまいました!やったね!!

ま、いつもの話なんですが!

出てくるのはだいぶ先ですが!(てか今三期リメイクしてるよね?まだ四期終わってないんだけど?!)


ノートには「モサモサ系」と書いてました。

ノートには……ね。


では、また!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ