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怪奇討伐部Ⅲ  作者: グラニュー糖*
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黒池の考え

第二十一話 黒池の新たな剣



 太陽が顔を出す少し前、一人の男が目を覚ました。彼は周りで眠っている人たちの方を見て、クスリと笑ったあと、彼らを起こさないようにはしごを下りていった。


____一方、僕は一階で手帳を開いていた。暗い部屋の中で読んでいたら、この建物の主であるカリビアさんがはしごから下りてきたのだ。


「なんだ、いないと思ったら下にいたんだね」

「……あ、お早いですね」

「ふふ、今から君の剣を作ろうと思ってさ」

「今からですか?!」

「うん。そうだ、どんな感じがいいか君に聞きたかったんだ。いろいろ聞いていくけど、いいかな?」

「お安いご用です!それに、僕のをやってくださるって言うのですし……」

「じゃ、工房に来てくれるかい?ま、すぐ隣なんだけどね」

「はい!貴重な体験、ありがとうございます!」

「いいよいいよ。ヘラもレインもヘッジも自由に出入りしてるしね」


 カリビアさんはニコニコしながら手招きした。よく見ると、また髪をリボンでまとめていた。


「意外におしゃれなんですね」

「あぁ、これかい?どちらかというと自分に鞭打つようなものなんだけどね」

「そうなんですか?」

「うん。眠いときとか、ちゃんと動けるようにしないとね」

「でも休憩はしないと」

「……やっぱりそうだよね」


 カリビアさんは悲しそうな顔をして呟いた。


「え?」

「……最近……体にガタが来ている。そりゃ、やりすぎだとは思ってるけど……みんなの役に立たないと」

「カリビアさん……」

「なんてね。さ、始めよう!」


 カリビアさんは道具がたくさん入った箱から溶接マスクを手に取った。これだけなのに鍛冶屋という感じがする。


「軽め?重め?」

「あ、軽めでお願いします」

「じゃあこの材料で……細くなるけどいいかな?」

「はい!あの、仕事で使うので持ち運びやすくしたいんです」

「そっか。お仕事頑張ってね」

「あ……ありがとうございます!」


 僕は思わず腰を曲げて礼をした。顔を上げると、カリビアさんは僕の顔をまじまじと見ていた。


「あの……何か?」

「いいなって思ってさ」

「?」

「社会のために尽くす。それほど素晴らしいことはない」

「は、はぁ……」

「いつかわかるときが来るよ」


 カリビアさんはウインクをし、かまどに火をつけた。そして工房に鉄と鉄がぶつかる音が響き渡った。


「ふぁぁ……カリビアさん、こんな朝から仕事してるの……?」


 数時間が経ち、太陽も顔を出した頃……。スクーレさんが店のプライベートルームから下りてきた。


「あ、スクーレさん。おはようございます。よく眠れましたか?」

「え、えぇ……。黒池さんはいつから起きてたんですか?」

「カリビアさんより先ですよ。……ヘラたちはまだ眠ってるのですか?」

「ヘラとレインは起きたわ。でもヘッジさんはヤーマイロさんとどこかに行ってしまって……」

「……大切な弟さんが捕まっているのでしょう?ここは刑事の僕が____」

「ダメです!あなたも知ってのとおり、溶けない氷に包まれているのですよ?そんなの……どうやれば……」


 スクーレさんは言葉尻を窄めて言った。


「スクーレさん……お役に立てなくて申し訳ないです……」

「そういうことはヘッジさんに言ったら?あの人は……何度もあの子と引き裂かれてきて……」


 スクーレさんは下を向いた。その目には涙が浮かんでいる。今までヘッジさんのことを見てきて、よく知っているのだろう。また巻き込まれた弟さんのことを心配して……。


「おーい、ヘラ!あの箱取ってきてくれないか?!」

「はーい!」

「ちょっと、ヘラ!叫んだら頭に響……いたたたっ!!」


 僕とスクーレさんがしんみりした空気になっていたその時、カリビアさんが工房から何やら叫んだ。プライベートルームからヘラとレインの声が聞こえる。何を騒いでいるのやら……。


「ふふ、いつもの二人に戻ってよかったわ」

「いつもあんな感じなのですか?」

「えぇ。ヘラは最初、ムジナがいなくてすっごく落ち込んでいたわ。さらにハレティって人が表情を変えれなくなる呪いをかけたの。だからとんでもなく怖かったわ。でも……根はとても優しい人なの」

「あのヘラが……」


 僕の脳内のヘラ像が音を立てて崩れていく。


「レインはただただ変で面白い人よ。ま、トラブルメーカーなんだけどね。昔、会ったことがあって……その出会いがなければ、今頃私死んでたみたい」

「……極端ですね」

「でしょ?!でもね、楽しかったの。二人とも、仲良くしてくれたわ。私の記憶がなくなっても、ずっと仲間って言ってくれた。それがすごく嬉しかった」

「……いい人たちなんですね」

「だからお願い。ヘラを許してあげて。彼はムジナを守りたかっただけなの」


 スクーレさんが赤い瞳でこちらを見つめてくる。……本当の話なのだろう。でも僕はヘラを許せない。……どうして許せないのだろうか。僕も彼をいい人と認めている。憎む理由なんてないのだ。ではどうして?


「……よくわかります。でも……まだ考えさせてください」


 僕は逃げるように店をあとにした。



__________



「おやおや……ムジナ、やはりやられてしまいましたか」


 ボクは高い高い霊界への塔の上で下界を見下ろしていた。真っ白い雪山から黒煙が見える。そこはさっきまで闇の魔法の反応があった場所。あの魔法の使用者は紛れもなくムジナだ。しかし、反応が消えた。そして数時間が経って、未だに反応がない。これは死んだとしか考えられない。


「惜しいですね。ボクの力に限りなく近い珍しい人の命をなくしてしまうなんて。人間は何を考えているのだろうか。ま、困るのは彼らなんだけどね。……あのドラゴンソウルの男が黙ってられないんじゃないかな」


 そう言ってボクは首のアクセサリーを弄る。


____あの子、とんでもなく強い運命の力を感じた。だからただでは死なないだろうけど。


 違う人が死んでしまったら特に何も無かっただろう。……何だろう、すごく楽しい。これからどうなっていくのか、すごく楽しみだ。


 ……こうして、今日ボクは黒煙を見ながら静かに弔うことにした。……決して死ぬことのないあの死神のことを思いながら。

どうも、グラニュー糖*です!


集中力がまるで無いです。

そして今日、バイト遅れる!(もう30分以上遅れてた)と言って蕎麦と天ぷらのセットを15分で食べました。

私、少食なのにね。


もちろん遅れてたよ!!


では、また!

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