レッツ爆発?!
第二十話 ムジナvs.イリア
手元の端末がアラームを響かせる。投げた爆弾は雪を纏いながら爆散する。相変わらずムジナさんはすべて避けていく。
……お姉ちゃんとの電話から十分以上過ぎている。タイムリミットはすぐそこだ。
「……あと……三つ……」
僕は鞄の中の爆弾を見て呟いた。どれだけ小さくても、入る数は決まっている。これで決めないと……。
一つはノーマルな爆弾で、残りの二つが最初にダメージを与えたロケット花火をイメージした弾ける爆弾だ。
……どちらも大ダメージは期待できない。威力が強いものは投げ切ってしまったからだ。
「はぁ……はぁ……スケートには慣れてないんだよ……」
「じゃあ降参したらいいじゃないですか!」
「そんなことできるか!」
「おりゃっ!」
僕はノーマルの爆弾を投げた。ムジナさんは避けようとしたが……足がもつれ、直撃した。
「よしっ!……あっ」
「……そんなことで喜ぶな」
ムジナさんの手には氷の盾があった。盾には大きな穴が開いている。それで咄嗟に守ったというわけだ。
「くっ……」
手元には一種しか爆弾は残っていない。チャンスは残り二回だ。僕は画面を見た。すでに二十分から十分以上過ぎている。にらみ合いや、ムジナさんの魔法から避け続けていたら時間を忘れてしまっていたのだろう。……早く、早く決着をつけないと!
「イリア!オレはお前を亡き者にしたくない。言っただろ?オレは人間が好きだって。だから……いつか、一緒に____」
ムジナさんが叫んでいると、上空から何かが飛んでくるような大きな音がしてきた。それはどんどん大きくなっていき……ムジナさんの言葉が聞こえないほどに……。
「……うわあああっ?!」
大きな何かがムジナさんをめがけて落ちてきた。僕は手元の爆弾が生み出す爆風より何十倍もの爆風に煽られ、遠くまで飛ばされた。
「う、ぁ、あがっ……」
冷たい雪の上を転がっていく。手から端末が離れた。拾おうとしたが、勢いは止まらない。
「がふっ?!」
木に背中を打ち付けながらも、やっと動きが止まった。骨が折れたのか、体の自由が利かない。頭がフラフラする。必死で開いた目に銀色に光る爆弾が映った。震える手を伸ばそうとするが、刺すような痛みのせいで伸ばすことができなかった。
「ムジナ、さん……っ」
さっきまでいたところからは黒煙がモクモクと立ち上っていた。きっと大きな穴が開いて……ムジナさんは……。もしかしてお姉ちゃんのせいなのだろうか……?
辛うじて働く頭をフル回転させていると、背中の方からバキッと音が聞こえた。……え、バキッ?
「?!」
背後の木が折れ、その根を支えていた地面も割れていく。そしてついに……。
「!!!!!」
崩れていった。
「危ない!」
僕は咄嗟に目を閉じ、もうここまでかと覚悟したが、最期は訪れなかった。……代わりに、誰かの声が聞こえた。
「うわっ、重っ……ぐっ……」
「……あ、あなたは……?」
落ちた僕を抱き止めてくれたのは、見知らぬ男の人だった。彼はぎこちない笑顔を浮かべている。……僕を安心させてくれているのか?……どちらにせよ、見たことのない顔なので人間ではないのは確かだろう。
「オレか?オレは……いや、名乗るほどではないな」
帽子を被り、マントを羽織っている、日本の本で見た服……着物の男は僕を地面に下ろしてくれた。もちろん立てないので横になっている。周りを見ると、落ちた岩が散乱している。僕は……助かったのか。
「大丈夫か?立てるか?」
「あ……ぅ……」
「……しゃべることも難しいか。……知り合いは?」
「爆……発に……」
「さっきのアレか。……誰がいたんだ?」
「ムジナ……さん……」
「ムジナ?!……ここで待てるか?」
「う、うん……」
彼は懐から鞭を取り出し、近くの木の枝に巻きつけた。そして木と岩の壁を交互に足場にして飛び移っていった。
下駄の音を響かせ、姿が見えなくなっても音のみが耳に残った。
「す、すごい……!」
「イリア!こんなところにいたのね!」
聞き覚えのある声が聞こえ、ほとんど動かない首を動かす。するとモコモコの上着を着たお姉ちゃんが走ってきているのが見えた。後ろに戦車などが控えている。なるほど、これなら短時間で動ける……いや、動いてほしくなかった。
「お姉ちゃん……」
「あぁ、こんなにボロボロになって……。でもミサイルは効いたわよね?」
「ムジナ……さんに……ミサイル……撃ったの?」
「そうよ。これであとはヘラを倒すだけね」
嬉しそうに笑うお姉ちゃんを見て、僕は自然に涙が溢れてきた。あの時、ムジナさんは確かに僕に攻撃してきた。しかし、最後のミサイルが落ちてくるとき……あの人は僕に水蒸気を吹っかけ、ミサイルから少しでも遠ざけようとしてくれた。そんな人をどうして……!
「うぅ……ひぐっ……」
「ど、どうしたの?!何か嫌なことされた?!」
「……いたたっ!」
「大変、腫れてる!きっと骨折したのね……あっちで治療しよう」
お姉ちゃんは戦車を指す。
でも僕は自分のことよりムジナさんのことが……。
だが、現実は無慈悲だ。僕に何も言わさず、戦車から出てきた大人たちは僕を運んでいった。
……だから僕は最後の抵抗として、壁の上を見た。
どうも、突然「山登りしようぜ!」と言われたグラニュー糖*です!
予定が埋まりました。
では、また!




