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怪奇討伐部Ⅲ  作者: グラニュー糖*
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霊界の塔

第十一話 塔の声



 オレは今一歩ずつ、一歩ずつ道を歩いている。片方の足を前に出すたび、電撃のような鋭い痛みが走る。いつも使っている剣はもう杖の代わりとなってしまっている。


 カリビアの家を飛び出してどのくらい経っているのだろうか。カリビアはずっと仕事をしているだろうからオレが外出したことに気づいていないはずだ。それに、今日はヘラに来るなと伝えておいたし、準備は完璧だ。

 それにしても、霊界への扉がある塔ってこんなに遠かったっけ?歩きはこんなにつかれるなんて……飛んでばっかりしない方がよかった。


 ……いやいや、夢の中とはいえ、あのハレティが助けを求めるなんて相当なものだろ。それに名指しだからオレが何とかしないとダメなんだ!オレがこんなところで挫けてどうする!?何かあったあとじゃ困るんだ!


 ……なーんて、この辺誰もいないから脳内で考えたりしてさ。ほんと、寂しいなぁ。


 体が重い。足が思うように動かない。一歩歩くだけでもつらい。こんな体にしたあの自称弟……絶対に許さねぇ。


「……どんだけかかるんだよ……」


 思わず弱音が出てしまうほど不便だ。最近は平和すぎてトレーニングなんかしてないからなぁ。しかも便利器具なんて出回り出したし。たまにカリビアの店にやって来るカリビアの師匠らしい人が主に作ってるらしいが……どこからそんな技術を手に入れてきたのだろうか。


 そんなことより、昨日の夢から体が少しだけ軽くなった気がする。あのノートとかいう奴のおかげだろうか。もう夢とか現実とかわからなくなってしまいそうだ。いつか夢魔のヘラに指摘されるかもしれない。


 いろいろ考えながら歩いていると、道の先に見たことある人影があった。

 黒のガンナーのようなソフト帽子を被り、同じ色のマントと灰色の着物と下駄を身に付けた背が低い男……リストだ。また宝探しの途中なのだろうか。


「……よう、リスト」

「包帯だらけで誰かと思えばレインじゃないか。怪我したとは聞いたが、まさかここまでとはな。で、こんなところで何をしているんだ?」

「いやまぁ……霊界の塔まで行こうとしてたところだ」

「あんなとこ、何もないぞ?」

「オレにはあるんだよ、でっけー仕事がな」

「?」

「じゃーな、また今度」

「あ、ちょっ、おい!」


 オレはリストを押し退けて先へと進んだ。これはきっと試練だ。オレの知り合いを道の先に居させ、オレを止めるつもりだろう。きっとそうだ。……多分。


「レイン……大丈夫かな……」


 オレは後ろから聞こえる心配の声を無視し、ボロボロの体を動かしてハレティが待つ塔へと再び歩き出した。



__________



「うっ……うぅっ……」


 ハレティさんの目が虚ろになり、ハレティさんの行動が変わった。いきなり無口になったかと思いきや、俺の首を絞めながら唸り始めた。でも何かがおかしい。まるで自我が無くなったような……。


「ハレティさん……くっ……」


 黒池さんに借りた剣をハレティさんのお腹辺りに突き刺したが、それは一時的にしか効果が無く、すぐに抜け落ちた。


 こうやって相手を殺すようなことは幽霊にとって違和感がない行動だと思うが、ハレティさんは違った。この人はこんなことをするような人じゃない。どうしてもそう思えてしまう。敵なのに。倒すべき相手なのに。まだまだ精進しないとな。ムジナとヘラさんと戦うときもこうなってしまうのだろうか?少しでも迷いがあったら勝てないのに。


 でももうそんな葛藤とはおさらばだ。なぜなら、もう『こちら側』の作戦は果たされたのだから。俺はそれを伝えるため、絞首から逃れた少しの隙間からほんの少しだけ酸素を肺に送り、ハレティさんに話しかけた。


「……ハレティ……さん。聞こえて……ます?」

「く、ぅ……うぅ……」

「周りを……見て……ください」


 俺の声が聞こえたのか、ハレティさんの目が俺じゃない方の景色を捉えた。

 その目にはさっきまでいた大勢の人間の姿は映らなかった。そしてそれを見たハレティさんは僅かに自我を取り戻した。それと同時に手の力が緩む。俺はここぞとばかりにハレティさんと距離をとった。


「これは……」

「けほっ、けほっ……。あなたのせいですよ。あなたのせいで魔界は壊れる」

「嘘……そんな……」

「嘘じゃない。あなたが我慢できずに自我をなくした間に俺以外全員を通過させました。あなたの負けです」

「でも場所がわかるはず……」

「こちらにも味方がいるんですよ。あなたがよく知る人の身内という人がね」

「?」


 怪訝な顔をしたハレティさんの姿が一瞬ブレた気がした。ハレティさんは消えることを自覚しているのだろうか。しかしそれが俺の第一のノルマだ。ハレティさんが消えてくれれば俺も魔界に赴いてムジナとヘラさんと戦うことができる。皆が倒していればそれまでだが。そして人間たちを魔界に住まわせることができる……。これが今回の作戦だ。


「サニー・ラプル。それが彼の名前です」


 絶望にまみれたハレティさんの瞳がさらに深い闇に堕ちていく気がした。

どうも、グラニュー糖*です!


最近湿度やばいですよね

喉の痛みが減るのは嬉しいですけど、ジメジメしてるのは嫌いです。


では、また!

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