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時を同じくして大野達は高橋を捜して分岐点に立っていた。


『皆がビックリ!ミラーで輝く鏡の世界“ミラーハウス”・休憩所・喫煙所』


『未知との遭遇。ジャングルゾーンの探険隊 “アクアツアー”乗り場・トイレ・売店』


と書かれた案内が右左に別れていた。


「参ったな、高橋のやつ?電話に気づいてないのか」

分岐に差し掛かり大野は高橋に電話をしたが繋がらなかった。


「取り合えず?ミラーハウスの方に向かうか、悩んでもらちがあかないしな」

大野がそう言うと桜井がモジモジしながら口を開いた。

「あ、あの、反対側にしませんか……実はトイレに行きたくて」

「あ!私もトイレいきたい。部長?今、別れるのは危ないし取り合えずなら、トイレのある方にしませんか?」


桜井と朝木がそう言うと鈴村もその提案に賛成した。

別々になると合流が困難に成りそうだとその場にいたメンバーは感じていたからだ。


吉田はどちらでも構わないと行った時点で“アクアツアー”側の矢印に向かう事に決まった。

そしてジャングルゾーンに一同は歩みを進めた。


「でもさ?廃園したのにトイレ使えるのか?」

「大野先輩は子供の頃に裏野ドリームランドに来たこと無いんですか?」

「俺は地元じゃないから、朝木さんは来たことあるんだ」

「はい、引っ越すまで此方に住んでいたので」

朝木が言うには裏野ドリームランドは昔からある遊園地で、トイレ等も汲み取り式の物が多かったらしい。


何ヵ所か改善はされたが、ジャングルゾーンの“アクアツアー”の前にあるトイレは外から汲み取れるので昔のままで一般用ではなく、職員用に使われていた。

トイレに着くと確りと板で封鎖されていたようだったが、無理矢理開けられた形跡があった。


「他の人も考える事は一緒か、仕方ないなぁ。でも背に腹は代えられない!先輩覗かないでくださいね?」


朝木が冗談を言いながら先にトイレに入っていった。

桜井も朝木の後に続いてトイレの中に入っていく。


大野と鈴村は目の前にある“アクアツアー”の写真を撮るため、吉田にその場を任せた。

吉田は気弱だがいざとなれば頼れる男だ。


「なぁ茜、この裏野ドリームランドって何で廃園になったのに取り壊されないんだろうな?どうしてもわからなくてな」

「知らないわよ、そう言うのを調べるのは大野君の方が得意でしょ?」


茜の言うとおりだったが、事故で、廃園が決まり、直ぐに取り壊さる予定だった裏野ドリームランドの工事は度々延期された、いつしか取り壊し工場すら無くなるなんて普なら、ありえない通話だった。

当時の工事を請け負った会社は既に倒産している事実が調べてわかったが、不思議なのは安定していたその会社は取り壊しを請け負った直後に経営が傾き、着工が出来なくなっていた。


その後、2社が同じように取り壊そうとした事実もあるが、どちらも工事まで行き着かないまま、手を引いていた。


話を聞ければと思っていたが、既に当時の社長は、この世を去っていた。


1つわかったのが、社長は取り壊しを請け負った直後に悪夢にうなされるようになっていったらしいと言う噂くらいだ。

奥さんも社長が亡くなってからいつの間にか姿を消した。

『借金があったから』『給料の持ち逃げ』『夜逃げよね』『息子夫婦の所にいった』『アパートに引っ越した』『自殺した』『いきなりいなくなった』


大野と高橋が数日前に調べた際に社長の奥さんも失踪していると言う事実がわかった。


近所で話を聞いてみたが、色々と噂は絶えなかったようだ。

倒産した社長婦人が夜逃げをするのは意外に珍しくないようだ。

日本では年間、約10万人が人知れず姿を消すのだから仕方がない。

結局、今、裏野ドリームランドが誰の者でどういう扱いなのかは謎のままだった。


そんな事を考えながら大野は写真のシャッターを押していた。


ジャングルゾーンの植物は手入れがされなくなり有りのままに成長していた。

鬱蒼うっそうと生い茂る草木は月明かりに照らされ神秘的な雰囲気すら醸し出していた。


「まさか、こんな近くでこれ程の写真が撮れるとはな、個展でもひらくかな?」

大野が軽く冗談を口にした。


そんな話をしていると“アクアツアー”の方から“ザボン”と水に飛び込むような音が聞こえたのだ。


「何よ今の音、着水音か?」

茜は少し怖がっているようだったが大野は少し興味があった。

茜が制止するのも聞かずに音のする方へ走り出したのだ。


「大野君、待って」

嫌々後ろを着いてきた茜と強気な大野は目の前の光景に驚愕した。


巨大なかえるだろうか?数匹の巨大な蛙が“アクアツアー”の川の中を泳いでいた。


「なによ、あのサイズ……外来種のゴライアスガエルだってあんなにデカく無いわよ!」

「しー!茜の知識力の凄さは理解してる、つまり、あれは未だに見つかってない新種の生物って事だよな?」


大野は慌てて写真のシャッターをきった。

シャッター音に反応した1匹の巨大ガエルが此方に向かってきたのだ!


「逃げるわよ!大野君」

「もう一枚だけ!」

「いいから早く!」


次の瞬間、巨大ガエルの舌がカメラに向かって飛んできたのだ!

凄まじい力でカメラを引っ張られていく。

茜はカメラ紐に付いていたジョイントを解除すると瞬く間にカメラは蛙の口の中に姿を消した。


「あああ!カメラが!」

「いいから逃げるわよ!」

茜が大野の手を引いて逃げようとした次の瞬間、蛙はいきなり胃の中のモノを全て吐き出したのだ。


その中に信じられないモノが混じっていた。


「う、嘘でしょ……」

茜はその場で腰が抜けたように膝をついた。

それは紛れもなく、“村谷かずき”だった。


皮膚はドロドロに溶け始めていたが、いつも着けていた特徴的な指輪とデカイ腕時計は、見間違える筈がなかった。


「逃げるぞ!茜」

「無理、腰が抜けちゃった……」

大野は泣きそうな茜を抱き抱えると、吉田達が待つトイレの方に向かい走り出した。


「イヤァァァァ」


そんな二人の元にトイレの方から悲鳴が聞こえたのだ。

大野達が到着すると朝木と吉田がトイレの中で必死に桜井を引っ張っていた。

「おい!どうした」

「大野さん!早く手を貸して桜井が」

何がなんだか分からないまま急ぎ桜井を引っ張りあげた。


桜井はあまりの恐怖に泣いていて何があったか話せない様子だった。


トイレから桜井を外に連れ出すと朝木と吉田に何があったかを確かめた。


桜井と朝木は普通にトイレを済ませ、手をウェットティッシュで拭いて外に出ようとした時だった。


一番奥のトイレの扉が独りでに開いたのだ。

二人は振り向かないようでに急ぎ出ようとした次の瞬間


『ねぇ……おねえちゃん……遊園地すき……なの?』

小さな女の子の声がした。


桜井はその声に後ろを振り向いてしまっ

たのだ。

「みーちゃった……あそぼ……オねエチゃン……」

次の瞬間、桜井は何かに引っ張られるようにトイレに引きずられていったのだ。


「イヤァァァァ」


その声に吉田が中に入ると朝木が桜井を必死に押さえていたのだ。


「もう嫌だよ……帰りたいよ……」

泣きながらそう桜井が呟いた。

「皆も同じ意見だ、高橋とも連絡がとれないし、一旦外に出て助けを呼ぼう」


大野達は自分達が見た蛙の事を話そうか迷ったが口にするのをやめた。

そして出口に向うため立ち上がった。


何処からか声がした。

「まだ……だよ……かーごめ……かーごめ……籠の中のとりは……いついつ……デアウ……」


背筋が凍り付いた。

トイレの中から小さな女の子の声で唄が聞こえてきたのだ。


次の瞬間


「え、」

茜は自分の足にまとわり着く不快な感触に気付いた。

足元を見ると地べたを這うように上半身だけの女の子が足を掴んでいたのだ。


「ツカマエタァァァァァ……」


「嫌ァァ」

鈴村 茜は凄い勢いでトイレの中に引きずり込まれたのだ。

「茜ーー!」

その場にいた全員が急ぎトイレの中に戻るが鈴村の姿は既に無かった。


「あ……茜……」


吉田が動揺する大野先輩をトイレから引っ張り出し直ぐに皆でその場から走って逃げたらしい。

途中の分岐まで走り抜けると汗だくで座り込む高橋の姿を吉田は見つけた。


「高橋先輩!大変なんです、鈴村先輩が……」

合流した高橋は別人の様になった安堂の事を大野先輩と吉田達に話した。

そんな中、暗闇にちらほらと小さな人影が見えはじめたのだ。

高橋は目を凝らして、よく見ると小さな子供だった。

しかし、その人数はゆっくりと増えていっているように見えた。

更にそれは此方にゆっくりと近づいてきていた。


「なんかやばそうだな、畜生……」

皆が異変に気づき走り出すとソレも走り出したのだ。


俺達は必死に走るが後ろから着いてくるソレは更にスピードをあげているように感じた。

「早く!いけよ後ろからまだアイツが追ってきてんだよ!」

速度が落ち始めた吉田に高橋はそう叫びながら桜井と朝木をサポートして広場まで走り抜けた。


「はぁはぁ、どうやら追ってこないみたいだな」

高橋は煙草を吸っている事を後悔した。

体力が落ちていること確りと痛感しながら、やっと一息ついたのだ。


だが、広場の奥に明るい綺麗な光が見えたのだ。

真っ暗な廃園の裏野ドリームランドを照らしていたその光はメリーゴーランドであった。

「おい、何で電気が……」

高橋がそう言うと大野先輩がゆっくりとメリーゴーランドに向かって歩き出したのだ。

「大野先輩、まってください!」

だが、大野に高橋の声は聞こえていなかった。

急ぎ大野の元に高橋が駆け寄り止めようとするが大野の眼は虚ろで、まるで高橋が見えていないようだった。


「手を降ってる茜が見えたんだ……今行くからな……茜……」

高橋の事を凪ぎ払うと大野は“メリーゴーランド”に向かって走り出したのだ。


メリーゴーランドは大野の為に止まったように見えた。

「大野先輩ーー!ダメだ!」

叫んだ高橋の声も虚しく、大野先輩はメリーゴーランドに吸い込まれるように乗るとメリーゴーランドは再度、動き出した。

スローな音楽は少しずつそのリズムを早めていく、それに合わせて、ゆっくりとメリーゴーランドはその回転を早めていった。


やがて、音楽と共に光がゆっくりと消え、動かなくなったメリーゴーランドの中に大野の姿は無かった。

いつも身に付けていたロケットの中には、大野先輩と茜さんの笑顔の写真が納められていた。


高橋は急ぎ吉田達の元に戻ると大野先輩がいなくなったことを伝えた。


「はは……噂は本当だったんだ。俺達は終わりだよ……はは、クソォォォォ!」

吉田は大声を上げて取り乱し、隣にいた桜井と朝木の二人はその場に膝をつき泣きじゃくっていた。

「私達、出られないの‼ねえ!出られないの」


高橋達は出口を目指し歩き出した。

桜井と朝木は既に精神的にボロボロのようだった。

吉田も少しおかしくなり始めていた。


高橋達は、まるで悪夢でも見ているようだった。

もし悪夢ならば早く覚めてほしい、高橋は柄にもなくそんな事を考えていた。


だが、そんな高橋達の頭上からは更なる絶望が顔を覗かせていたのだ。


カボチャのホラーどうでしょうか?御意見や誤字などありましたら教えてくださいね。(*≧∀≦*)それではまた

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