ヒロインはやってこない
『ミッション!ヒロインを探そう。
ヒロインの外見は銀髪に赤い目だ!
これをヒントにヒロインを見つけろ!』
あ…あいつ諦めやがったーっ!!
入学式から一週間、4月8日の朝。私は起きてそうそうベットの上に崩れ落ちた。
この7日間毎日ミッションは来ていた。〇〇でヒロインと遭遇しよう系のやつが毎日。しかしただの一度もヒロインは現れることはなく、私はよくその辺で意味もなく突っ立ってる人的な扱いを受けつつある。遺憾の意を表したい。
勿論指定された場所以外でも精力的にヒロインを探した。何一つヒントはないのに私は頑張った。褒めろ。
全ての部活を見て回り、士官コースの方にも足を運び、すっごい嫌だったけど生徒会にも顔を出した。結果は全滅。どうにもヒロインらしき子はいなかった。肉食系女子とかなら沢山いたけど、違う、君たちじゃあない。
この一週間の成果と言えば、園芸部のおかげでアルラウネたんがお引越しできたことくらいかな。園芸部の部長さんが王宮筆頭庭師の息子だったおかげで、非常に協力的だった。いえーい。ありがとでーす。
アルラウネたんは今、ベッド脇の出窓で朝日を堪能している。幸せそうにギュイギュイ言いながら。水差しからアルラウネたん用のコップに水を注ぎ手渡す。ゴクゴクと美味しそうに水を飲むのを眺めながら制服に着替え、部屋の真ん中――よりもだいぶあっち気味に設置されたパーテーションの向こうに声をかける。
「ジェイン、おはよう。」
「おはようございます、プレローマ様。
朝食の準備は出来ておりますよ。」
「有難う。」
この寮には食堂がない。平民や貧乏貴族は校舎一階の食堂か、早起きして街の方で食べているそうだ。安いからね。私達みたいのは別途料金を支払って部屋まで持ってきてもらう。個人的には食堂でみんなと食べるのも楽しそうで良いんだけどさ、立場がね、許さないよね。
2人で向かい合って座る。ジェイン君は「主君と同席するなんて!」とかなり嫌がったんだけど、一緒に暮らしてんのに一人飯とか寂しすぎるから無理矢理頼み込んだ。
「部活決めた?」
「はい、読書部に入ろうかと。」
「あー、ぽいね。私は情報部。」
情報部とは言っても当然パソコンなんて物はなく。言葉通り、情報を収集して分析する部活である。部員のほとんどは次男や三男の自分で身を立てなきゃいけない人達だから、将来的にクレアトゥーラに連れてっても問題なさそうだし。家臣団、ゲットだせ。
今更だけど、この国の言語には私とか俺とかの一人称がない。英語よろしくアイマイミーマイン方式なんだけど、その前にマンかウーマンがつく。
Man my name is 〜
みたいな感じだ。文法も英語と同じ。赤上げないで〜白下げない、が出来ないのだ、この国は。幼少期の私の苦労がお分かり頂けただろうか。
世間話ついでに銀髪の女の子を知らないか聞いだけど、予想通り首を横に振られた。ですよねー。兄に近寄るの嫌だし、ここはやっぱ情報部の出番かな!よーし王子頑張っちゃうぞー。




