表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/26

in内陸砂漠

 サボテン擬きが点在して、赤茶げた土が目立つようになってきた。


「あの砂山を越えたら、内陸砂漠は近いと思う」

 

 ジュウが小高い丘を差す。

 真っ青な空に、白い雲が浮かんでいる。

 暑くなったなぁ。

 ジュウから言われて、頭から顔全体を覆うように、布を巻き付けている。

 

 硬い砂山を登ると、そこから見える景色に圧倒される。

 見渡せば180度、一面黄土色の砂だ。

 何もない、ただ風が波打って形を変える黄土砂が広がっているだけ。

 その先には青空と地平線が、くっきり二色に分かれている。

 

 さぁ、行きますか。

「スーパー体力バカー」を叫ぶ。

 文字通り体力がみなぎって元気になる。

 与えられた面白魔力その2だ。

 ちなみに、面白魔力は4つある。

 

 この砂、踏みしめてみると、思ったより硬い。

 足が丸ごと砂に取られる感じはないが、ひたすら熱い。


「シロ。熱くない?」


 シロは背にミーナちゃんと、ジュウを乗せている。

 踏みしめる足の裏も熱いだろう。


「このくらい、へっちゃら~ぴ~」


 頼もしいなぁ。

 サンダルを脱いで、靴下を履いておく。

 ミーナちゃんとジュウにも、はかせる。


「先を急ごう」


 ポニーの手綱を取って、駆け足で行く。

 乾いた風に、砂が舞い上がる。

 布をしっかり、口元まで覆う。


「ポニーちゃん、頑張ってね」

 

 サバクポニーを励ましながら、駆ける。

 白竜のホトちゃんは、プクプク浮遊していたのがウソのような力強さで、空を飛んで行く。

 

 私たちの影が、黒く伸びる。

 風紋も、今は眺める余裕がない。

 絵で見れば美しい砂漠の風景。

 現実は埃と砂まみれで苦しい。

 熱さが刺すように痛い。

 どのくらいの距離続くのだろう。

 ジュウやミーナちゃんの体力のある間に砂漠を渡り切りたい。

 


 半日も駆けると、ポニーちゃんの足並みが鈍くなってきた。

 シロの息も上がっているような気がする。


「そろそろ休憩しようか?」


 サボテン擬きや岩影を探したが、それらしきモノは全く視界に入らない。

 砂漠の真ん中で休憩するのだ。


「コンビニーズ」


「モモだめだ!」


 私の脅しを丸ごと信じている可愛いホトちゃんが、止めに入る。

 

 イイ子だねぇ。ホトちゃん。

 脅かし過ぎてごめんね。

 ここは、コンビニで休憩しようよ。

 私も少し、バテてきた。


「大丈夫だから。さぁ、入ろう」


 現れた店内はクーラーは入っていないが、灼熱の暑さからすれば天国だ。

 

 まず、ミネラルウォーターをとる。

 コンビニ店内には入れない、弾かれてしまうポニーちゃんに、お水を用意する。

 鞍を外して、荷物を降ろす。


「ちょっと休んでてね」


 背中を撫でて、店内へ戻る。

 ぐったりしたミーナちゃんとジュウが寝転んでいる。

 シロとホトちゃんも随分と大人しい。

 体力強化している私が、太陽の熱にやられてこのザマだもの。

 そりゃあ、みんなバテバテだよね。


「夜に移動した方が良いのかも……」


 昔、夜の砂漠を進むキャラバンのお話を、読んだ気がする。


「私、小さくてホホロ国からの旅はあまり覚えて無いんですが、馬車の荷台で星空を見ました。凄くキレイだった」


「オレも布でぎゅうぎゅうに巻かれて、とーちゃんの前に座らされて、サバクポニーで夜も走った」

 

 ミーナちゃんとジュウの記憶に間違いないだろう。

 私は所詮素人旅人。

 先人に学ぼう。


「じゃあ。今日は結構進めたし、ここで休んで夜に移動しよう」


 各々が好きなものを選んで、腹ごしらえをする。

 タオルをひいて横になる。

 私もアイスを食べながら座り込む。

 眠るワケにはいかない。

 私の意識はコンビニと繋がっている。

 意識が無くなると、コンビニは消えてしまう。

 灼熱砂漠に、ポンと放り出されてしまうワケだ。

 

 大丈夫。

 まだ、いける。

 休んで必殺「体力バカー」で再強化すれば、砂漠を抜けるくらいの力は出るはず。

 

 布を巻き付けて、サンドイッチを手に握ったまま眠っているジュウとミーナちゃんの布を取る。

 

 外に出て、砂ぼこりをはらう。

 スースーと寝息をたてる、ミーナちゃんのおでこが赤い。

 

 日焼けしたんだね。

 アロエーネぬっておこう。


 顔を拭こうとタオルを濡らしに行った洗面所で、鏡に映った私の鼻の頭も、赤くなっていた。


 ミーナちゃんとジュウの顔を優しく拭く。

 新しいタオルに代えて、シュークリームにかぶりついている、ホトちゃんの顔も拭く。


「サッパリする~」

 

 体をクネらせる。

 そうでしょうとも。


 シロ用にはバスタオルを濡らしてくる。

 耳も目元も丁寧に拭く。


「オオオォォー」

 

 ん?それは感嘆の唸り声?


「モモちゃーん。もっとして欲しいです」

 

 うん。そうだね。

 前はシロの体も洗ってあげてたよね。

 今だと、一苦労だろうな。

 でも砂漠を抜けてお風呂を見つけたら、洗ってあげるからね。

 タタ村みたいな銭湯があるといいね。


「少し眠りなよ」


 シロの広いお腹を撫でる。

 ホトちゃんがフワフワ飛んで、私の隣にちんまりと丸まる。


「夜まで、おやすみなさい」


 ピピピピピ

 さそり男、横断中


 データーが入ってくる。

 ん?さそり男?

 不吉な名称に身構える。


「ふんわりテレパシー」


 アンジェリーナさんから頂いた面白魔力その3だ。

 サーチする力を唱える。

 この魔力は、ふんわりだからか、色々とルールがあるようで、まだ私も完全に使いこなせていない。

 

 それ以上、データーは入ってこない。

 近くを通り過ぎたのかな?

 フーッと、重い息を吐く。

 砂漠の長い一日は、まだまだ続きそうだ。



 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ