ショータイムのお時間です。
太陽が眩しいよ。
さぁ、ショーの始まりだ。
太鼓のリズムロールが流れる。
メロディが変わる。
タンターンタタターンタータタン。
サティスファクションのメロディにのせて、頭に花をつけアリスの奇抜な服に、腰からシルク布を巻いたお姉さんたちが登場する。
「腰から優美な光を放っているのがホホロ国の新しい布。シルク布です」
ちゃんとウォーキングできてるぞ。
スゴいぞ、お姉さん。
次は、おば様たちの登場だ。
頭からモモ巻きにして、異国情緒たっぷりだ。
メロディはゲットイットオンに変わる。
「シルク布はその人の美しさを引き出します。年齢も性別も関係ありません。ありのままの、その人のもつ美しさをサポートします」
リハーサルではロボット歩きだったおば様たちも、手を繋いで二人一組で歩いてもらう事にした。
買い物に行くように歩いて下さいとお願いしたけど、うん、上手く歩けてますよ。
Uターンすると、観客に手を振っている。
余裕じゃないか。
ステージまで戻ると、階段を降りて座り席にいる業者さんの近くに行ってもらう。
近くで布を見てもらうためだ。
布を触った業者のオッサンたちが、唸っている。
フフ。手触りいいでしょ~。
それが売りなのよ。
「子供たちが、はしゃいでも大丈夫。シルク布は丈夫です。水にも強いんです」
三つ子とミーナちゃんとジュウに出てきてもらう。
腰に肩に巻いた布をヒラヒラさせながらキャットウォークを走らせる。
ホトちゃんとシロが出てくる。
子供たちを追いかけ、じゃれあう。
ミーナちゃんとジュウが霧に包まれる。
水を纏ったミーナちゃんが、布を広げてキャットウォークを歩く。
風になびく布が光に反射して輝いている。
シロは体に巻いた布をアピールするように、二本足で立ち上がり体を揺らしてダンスを踊っている。
隣にきたホトちゃんも合わせてフワフワ浮いている。
ジュウと三つ子は団子状態だ。
観客から拍手が沸き起こる。
「いいぞー」
ピュ~と口笛も鳴る。
舞台を堪能した子供たちがはけ、今度はまたお姉さんたちが登場する。
ノースリーブの服に、会場が一瞬静まる。
今までノースリーブって、無かったんだって。
「動きやすく涼しい服でお出かけです。『イヤだわ、外に出るのに恥ずかしいわ』『少し寒くなってきたわね』そんな時でもシルク布のショールがあれば大丈夫。寒さを防ぎ、貴方の美しさを更に引き立ててくれるでしょう」
お姉さんたちが、腕にかけていたシルク布を羽織る。
後ろに靡かせる様にたっぷりと幅を持たせたショールが素肌を隠しながらキラキラ輝いている。
男性の視線が釘付けだ。
正直だね~お兄さんたち。
イヤ、女性の視線も集めてるぞ。
音楽はスキヤキに変わる。
「ホホロ国の発展を祈って。王子の生還も祝って!おめでとーホホロ国!」
パラソル付の座席でショーを見守ってくれている王子たちに拍手をおくる。
私の声に誘われて、王子たちが立ち上がり手を振ってくれた。
今日一番の歓声があがる。
さぁ、フィナーレだ。
モデルさんたち全員がステージにあがる。
歩いたり、ダンスしたり、お尻をフリフリしたり、みんな思い思いに動く。
アリスさんとテリィさんが、腕を組んで最後に登場する。
拍手は鳴り止まない。
「ありがとーみんな。ありがとー」
マイクをステージに置いて、幕は降りた。
ふーっ。
やりとげた感でいっぱいだ。
オリバー村のみんなはMAXハイだ。
抱き合い喜び合っている。
アリスさんは業者さんたちにつかまり、質問攻めにされている。
「ありがとうございました。おかげでショーが盛り上がました」
音楽部隊の人たちにお礼を言う。
影の功労者は彼らだ。
ワイワイお話ししていると、後光が射すオーラを纏って、王子たちがやって来た。
私の周りにいた人たちは、頭を下げながら後ずさって行く。
「楽しく見させてもらった。シルク布は本当に美しい。今後が楽しみだ」
アンドリュー王子のお言葉に、私も嬉しくなる。
国全体で盛り上げて欲しい。
「会食で話はゆっくり聞こう。皆のもの、大義であった」
私たちは頭を下げながら、心の中でガッツポーズをしていた。
後片付けをして、宿に戻っていた私たちの元に、王子様たちは馬車を寄越してくれた。
なんと、ショーの打ち上げは宮殿で行うのです。
身だしなみを整え、迎えが来るのをちんまりと待っているオリバー村のみんなは、緊張の面持ちだ。
馬車の豪華さに驚きざわめきあっていたが、宮殿が近くなると、もう誰も口を開く者はいない。
逆に青ざめているようだ。
従者さんに案内されて歩く姿はカチコチで、緊張もピークに達している。
私はミーナちゃんと手を繋いでいる。
ミーナちゃんもぎこちない。
空いた側の手をつかまれる。
ジュウだ。
不安そうな目で私を見上げる。
大丈夫だよ。
優しくジュウの手を握る。
「王子様が招待して下さったんだから、沢山食べて楽しまないとね」
明るく大きな声で言う。
「美味しいの沢山ある?」
シロが聞いてくる。
「あると思うよ~。いっぱい食べてお礼に、王子様たちに旅のお話ししてあげようね」
「シロ。モモちゃんにお風呂で洗ってもらう話してあげる」
シロ、ピンポイントでお風呂の話?
洗ってもらいたいリクエストなんだね。
ハイハイ。わかりましたよ。
従者さんに連れて行かれたのは、丸テーブルが並び、料理が山盛り乗っかってる広間だった。
立食パーティだ。
「おいしそー」
お腹がなりそうだ。
ミーナちゃんとジュウも釘付けになっている。
オヤジ天国の面々が入ってきた。
Aさんが、挨拶をする。
「シルク布という新たな布を開発し見事なお披露目をしたオリバー村の者に王子から褒美の宴だ。緊張するだろうから、村の者たちで食事をという王子からのご配慮だ。皆のもの今日はご苦労であった。さぁ、無礼講で食べられよ」
促されてもみんな躊躇している中、ホトちゃんとシロが、串焼きにかぶり付く。
「うまい~」
美味しそうに食べるね。
私も串を手に取り、ミーナちゃんとジュウにも渡す。
「ほら、食べるよ。ホトちゃんとシロが全部食べちゃうよ。おっ。この肉美味しい~」
口の周りをベタベタにして、美味しそうに食べているホトちゃんたちにつられ、オリバー村のみんなも食べ始める。
ワインも飲んじゃうぞー。
ほろ酔い気分で打ち上げを楽しんでいたら、オヤジ天国たちが整列し始めた。
王子様ご入場~。
眩しい二人が部屋に入ってきた。
にこやかに近づいてくる。
「そなたのおかげで、シルク布は生まれたと聞く」
口に頬張った果物のパイを飲み込み、慌てて答える。
「めっ、滅相もございません」
「塩で洗うというのは斬新なことよ」
「はぁ……、あ、アンドリュー王子、赤湖の塩は濃度も高くて質が良いみたいですよ」
「赤湖か……さそり族の縄張りだな」
アンドリュー王子の声が低くなった。
「真実はわからぬ。だが、母もアミリアもさそり族の刺客に殺めれたと、我々は思っている」
王子の美しい顔に陰がさしていた。




