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花祭り

 モンテカルロ王子の生還を祝って、宮殿内は騒がしい。

 ちょうど花祭りの時期と重なり、都内は狂気じみた盛り上がりだそうだ。

 花祭りかぁ~。

 それで、お花や旗が飾られてたんだね。

 オヤジ天国Bが教えてくれた。

 私も街中見物がしたいな。

 遅く起きて一際豪華なランチを食べて、ごろごろしてるだけだもん。

 オヤジ天国Bも自分のお役目に戻り、私とシロとホトちゃんとは広い寝室に取り残されている。

 う~。退屈~。

 おやつタイムまで寛いでいるように、との事だけど、食っちゃ寝ばかりも退屈なんだよね。

 

「シロ、ホトちゃん。お散歩行こうよ」


「行きたいー」


 あまりウロウロしないようにと、釘は刺されてるけど、少しならいいよね。

 そっと部屋を抜け出そうとすると、何てこった!青年兵が二人も部屋の前で待機しているではないか。


「どうかされましたか?」


「何かご用がありますか?」


 イヤ、貴方たちにご用は無いんだけどね。


「天気もいいので、庭を散歩したいんです」


「はぁ」


 困った顔で二人見合わせている。


「……私、監禁されてるの?」


「まさか!」


「とんでも御座いません。お守りするようにと申し付けられております」


「なら、いいよね。太陽に当たらないと気分悪くなりそうだし。お兄さんたちもついて来ていいよ」


 お供を連れてゾロゾロと宮殿内を散策することにした。

 はぁ~。きらびやかだ。

 白を基調としながら、細部に細工がしてある。

 これだけの宮殿を造り上げる魔力者って、すごいよね。

 ゴテゴテと成金趣味じゃないところも、センスがいい。

 

 第一宮殿を抜け、緑の芝生と噴水がある中庭へ出る。

 いいお天気だ。

 思いっきり背伸びをして、新鮮な空気を吸い込む。

 裸足でゴロゴロしたら、楽しそうだ。

 サンダルを脱いで、水に足を浸けてみる。

 ひんやりして目が覚める。


「モモちゃん。冷たいですー」


 シロとホトちゃんはもう、噴水に全身浸かって水遊びを始めた。

 青年兵たちも、微笑ましそうに見守っている。

 

 ガサガサと人の気配と音がして、緑の塀から茶色い羽が見え隠れする。

 ん?誰だろう。

 あ、もしかして。


「鷹男さんですか?」

 

 隔離された部屋で観察されてた時、鷹男さんがサーチにひっかかった。


「如何にも。私は鷹男だ」

 

 現れたのは鷹の顔と翼を持つ、まんま鷹男さんだった。

 うわー。眼光鋭いよ。

 迫力あるなぁ。

 

「白竜様にお目にかかれて光栄です」

 

 鷹男さんは私とシロをスルーして、ホトちゃんの前に膝まづく。

 

「私は、アンドリュー王子に仕えております鷹男のヨウと申します」


「フム。オレサマはホトちゃんだ。モモにつけてもらった名前だ。可愛いだろう」


 胸を反らして威張るホトちゃんに、はぁと曖昧な相槌をうつ鷹男さん。


「オレサマたちモミジホシ団は旅をしてるのだ。砂漠も歩いたのだ。スゴいだろう!」


 ホトちゃん、それ以上胸を反らしたらひっくり返っちゃうよ。

 ホトちゃんの横で、プルプルとシロが全身を震わせ始めた。

 や~め~て~。

 全部水がとんできてるよー。

 滴攻撃に鷹男さんの眼光が更に鋭くなった気がするが、プルプル出来たシロは満足げに笑っている。


「白竜様がモンテカルロ王子をお助け頂いたのですよね」


「助けたのはモモ。コレがモミジホシ団のリーダー」 


 え?私リーダーだったの?

 そしてリーダーはコレ扱い?


「なんと!」


 やっと鷹男さんが私を見てくれたよ。

 眼を細める。

 ヒー。恐いよー。


「……かなりの魔力を感じるな。これは失礼した」


 改めて頭を下げられる。

 いいんです。

 オーラも何も無いものね、私。


「アンドリュー王子は、鷹王子様と呼ばれていると聞きました。鷹男さんが近くにいるからですか?」


「アンドリュー王子は、鷹使いだ」


 鷹使い?

 

「戦にも使える、伝達手段にもなる。鷹は唯一無二の優れた生き物だ」


 成るほど。

 鷹師ということか。

 

「モンテカルロ王子の件は礼を言う。そなたが、我が主に害を成すことが無いなら、我々は敵対することも無いであろう」 

 

 はぁ。

 敵対する予定はないですけどね。

 えらく勿体つけた言い方だね。

 ホトちゃんとはまた違った、偉そうさ加減だよ。


「モモ殿!探しましたぞ。王子たちがお待ちです」

 

 お。王子たちにお目通り出来るのね。

 オヤジ天国Bに急かされて、鷹男さんと別れる。


 宮殿の大広間に通された私たちは、ずらりと並んだらオヤジ天国たちと、兵隊さんたちの人数に萎縮する。

 何だ。

 どうしたの?

 太鼓が叩かれ、ドラムロールが鳴る 

 私たちは、促され赤い絨毯が弾かれた真ん中を歩いていく。

 はるか先の高座に居るのが王子たちだよね。

 これは、何かの儀式なのかな?

 王子たちの前まで着くと、とりあえず頭を下げてみる。 

 どうすれば良いのか、所作は全くわからない。


「このたびのそなたの所業、礼を言う」


「モモ殿。ありがとう」


 顔をあげると、髪の毛を布でくるんだ麗しの美青年アンドリュー王子と、黒髪短髪がサラサラとなびく精悍なモンテカルロ王子が鎮座している。

 おー。これは麗しい。

 一人でも眩しいのに、二人並ぶと圧巻だねぇ。。

 見惚れてしまうよ。


「褒美をとらせたい。何か希望はあるか?」


 褒美ですか?

 う~ん。

 ちょっと考えてしまう。

 欲しいものは沢山のあるはずなのに、思い付かないよ。

 ウンウン唸っている私に、モンテカルロ王子が笑う。


「フフ。ゆっくり考えるが良い。なければ此方で考えよう」


 あー、笑顔も爽やかだなぁ。

 私はコクコクと頷いていた。


「暫く王宮に滞在するが良い」


「え?あ、あの。有難い申し出なのですが、ショーのお手伝いもありますし、セダレさんやアリスさんたちの所に行きたいんです」


「セダレは何処にいる?」


「王子、作業場に向かわれました」


「作業場って、何処ですか?」


 アリスさんたちはホホロ都の工場を借りて作業をしているらしい。

 とりあえず私もそこに行かねば。

 作業場まで送って貰えるように、アンドリュー王子が手配してくれた。


「モモたちを晩餐会に招待したいのだが」


 晩餐会=御馳走ですよね。


「御馳走を食べるのはやぶさかでない!ちなみにオレサマはバーベキューが好きだ!」


 私よりも先にホトちゃんが、キーワードを読み取って返事している。


「御馳走?」


 シロも可愛い目で覗き込んでくる。

 誰が断れましょうか。


「フフ。では明日の夜では、いかがかな?迎えをよこそう」


 真っ白な私のスケジュールも埋まる事になった。

 ホホロ都の作業場までは、シガ隊長率いる一行が馬車を警護してくれた。

 ホホロ都の街は、踊り狂う人たちと、酔っ払いで溢れている。

 どこかで、爆竹の音がする。

 チンドン屋のような人達が扇動して、街中大騒ぎだ。

 警護なんか大丈夫だよーと思っていたが、もみくちゃ状態で馬車も一向に動かなくなっている。

 シガ隊長が通れる道を作ってくれなければ、永遠に作業場へは着かなかっただろう。

 花祭りなめてました。

 &モンテカルロ王子の生還を祝う気持ちが大きいんだろうな。

 めでたい事だもんね。

 国民としてはっちゃける気持ちはわかるよ。

 馬車は何とか、セダレさんたちが居るという作業場に着く事が出来た。




 

 

 











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