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与える力。

 モンテカルロ王子の話をフムフムと聞いていた。 

 突っ込みたいところは、山ほどあった。

 ミドリ、デンシャ、エアコン。

 あんたそれ、日本でしょ。 

 日本に転移されたでしょ。

 そして帰ってこれたわけだよね。

 その魔法陣に興味深々だ。


「その転移とかする魔法陣の場所は何処ですか?」


「宮殿は崩れ、召喚の間も崩壊した」


 なんですとー。

 魔法陣は残されて無いわけか、ガックリだよ。

 私も日本に帰れるかと思ったのに……。

 ホトちゃんと目があった。

 シロもつぶらな瞳で私を見上げている。

 ……。

 ウソぴょ~ん。

 帰らないぴょ~ん

 ホトちゃんとシロの頭をワシワシと撫でる。

 モンテカルロ王子様の為に、魔力が必要な訳ね。

 私自身、この面白魔力がどれくらいあるのかわからないが、力を貸すことにはやぶさかで無い。


「王子に魔力を分け与えるだけでいいんですよね?私の魔力は特殊だけど大丈夫かな」


「兄上が魔力で満たされれば元に戻れはず。何故かどの魔力者の力でも成功しないのだ」


 成る程。

 それで、警戒しながらも魔力者を集めてるんだね。 

 

「じゃあ、ちょっとやってみますね」


 私で無理ならホトちゃんもいるし。

 軽い気持ちで魔力集中させる。

 鬼教官ダイさんに言われた事を思い出し丹田に力を入れ集めた熱を百会に持っていき、体全体に纏わせる。

 力がみなぎってくる。

 それを指先に集め、モンテカルロ王子に向けて放つ。

 指から放たれる金色の光と粉がモンテカルロ王子を包んでいく。 


「これは……」


「オー!」


 静かに感嘆の声が囁かれる。

 王子に放っている魔力は放物線を描きながらその輝きを増し、目を開けていられないくらい眩しく光っている。

 何だか疲れが急に押し寄せ、フラフラしてきた。

 あ~腰が抜けそうだよ。

 フワッと倒れそうになった私を、シガ隊長が支えてくれる。

 ありがと~。この世界、お髭の人って良い人が多いね。


「王子ー!モンテカルロ王子様ー」


「王子が元に戻れたぞー」


 アンドリュー王子とモンテカルロ王子の、美しき兄弟愛を確かめ合う姿がぼやけて見える。


「モモさん、ありがとう。モンテカルロ王子を助けてくれてありがとう」

 

「お嬢さんにありがとう」


「素晴らしい魔力者だ!」

 

 万歳!万歳!と、オヤジ天国たちが騒いでいる。

 みんな嬉しそうでよかっ、た……よ……。


「モモ殿は魔力を使い果たし、疲れているようです」


 歓喜に溢れ盛り上がっていた人たちがシガ隊長の声に我に返る。


「すぐに、寝室の用意を。医師の手配を」


 アンドリュー王子の指示がとび、シガ隊長にお姫様抱っこされたフラフラな私は、そのまま寝室へ運ばれた。

 私の意識は遠のき、初のお姫様抱っこ体験を堪能する事は出来なかった。

 無念。



 目覚めると沢山の人に囲まれていた。

 へ?ここは……あ、そうか。

 魔力を使い果たして倒れたんだ私。

 ベットから起き上がろうとすると、グ~。

 お腹の虫がすごい音で鳴いた。

 う~。何だ、この空腹感は?


「すぐに食事の用意を!」

 

 誰かの声が響きわたる。

 そうだ、モンテカルロ王子!

 姿を探すが見あたらない。

 私を包囲してるのはオヤジ天国とシガ隊長とその部下たち&シロとホトちゃんだ。


「モンテカルロ王子は?」


「異常が無いか検査を受けている。アンドリュー王子もご一緒だ。いずれ拝謁の機会があるだろう」


 オヤジ天国Aが教えてくれる。

 無事ならいいんです。


「そなたには、宮廷魔力者一同。イヤ、ホホロ国一同に成り代わり礼を言う。助かった。モモ殿のおかげだ」


 ずらりと取り囲んでいるオヤジ天国たちが頭を下げる。

 続いてシガ隊長一同も敬礼をする。

 やめてよ~。

 ムズ痒くなることしないでよ~。


「お役に立てて良かったです。私もセダレさんやアジ婆さんにお世話になりましたから」


「アジ……水魔力者のアジか?暴徒に襲われ弟子たちも殺されたと聞いたが、無事だったのか?」


「はい。果てない森の近くで暮らしています。って、言って良かったのかな?」


「そうか……。散り散りになった者たちも、ホホロ国に戻って欲しいものよ」

 

 それは頼もしい言葉だ。

 アジ婆さんたちに伝えてあげたい。

 戦時は、命からがら脱出したんだ。

 ホホロ国に心を残されているみたいだから、タタ村と行き交う事が出来るといいな。


 物凄く良い匂いが充満してきた。

 テーブルには、蒸し鶏やスープやポテトサラダやステーキ等々、沢山の料理が並んでいる。


「お待たせした。さぁ、モモ殿お食事を」


 私はシーツをはね除け、テーブルに突進する。

 モーレツに腹ペコだった。

 ガツガツと食べ続け一息付くと、涎を垂らさんばかりのホトちゃんとシロと目があう。

 ご、ごめ~ん。

 夢中で食べてたよ。


「シロ。ほら、ホトちゃんも」


 ステーキを一切れづつ口に入れる。

 幸せそうな顔で咀嚼しているよ。

 すぐさま、大きく開いた口が並ぶ。

 蒸し鶏をパクリと食べる。

 パクリを繰り返していると、並んでいた数々の料理は全て食べ尽くしていた。

 あ~。美味しかったぁ。

 大満足の私は、セダレさんとアリスさんたちのところに戻ろうと、オヤジ天国Aに提案してみる。


「セダレは今は王子たちについている。今夜は泊まるようにとのご命令だ」



 私たちは、王宮でその夜を過ごした。

 

 

 

 

 


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