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モンテカルロ王子の独白

 アステリア兵が攻めて来た時、出兵したのが私の率いる戦闘部隊だ。

 都に入られる前に食い止めようと挑んだが、頼みの魔力者たちも討ちとられていく現状に、ホホロ国としての認識の甘さが悔やまれた。

 当時魔王討伐を掲げ、各国勇者召喚をしていたが、私の父ホホロ国王は魔王に関心はなかった。

 だが、知り得た召喚術は使ってみたい。

 どうせなら、ホホロ国を発展させる美とセンスを兼ね備えた魔力者をと召喚されたのが、アミリアという9才の女の子だった。

 アミリアは少し変わっていて、食べれない物が多く、いつも頭から顔を布で覆い、美の女神が顔に傷があるのかと勘ぐられもしたが、アミリアは黒い輝く瞳と艶やかな黒髪の美しい少女だ。

 頭に巻く布がショールとして流行にもなった。

 平和であれば彼女がデザインしたものが、国中に溢れていただろう。

 彼女の戦闘能力はゼロ。

 戦場では必要の無い美の女神。

 召喚された勇者の能力は国の極秘事項だ。

 それでも秘密は漏れるもの。

 召喚した勇者が美の女神だと知った兵士たちは落胆する。

 他国の勇者の戦闘能力を噂して恐れあう。

 ホホロ国は、戦う前から負けていたのかもしれない。

 逃げ惑う兵も殺戮され、他の部隊もジリジリと敗退していく。

 国王が討たれたとの一報を受け、私は残りの兵士と共に、戦火をくぐり宮殿に戻った。

 宮殿の一室で母とアミリアが倒れていた。

 息は、事切れていた。

 母はアミリアを庇うように倒れていて、その姿は勇者と王妃ではなく、母と子のようで、母が小さなアミリアを可愛がっていた事を思い出した。

 父と第二王子のウェールズは神殿の瓦礫の下に埋もれていると、汚れ負傷した兵士から伝えられ、美しい宮殿はもう火の海で、あらゆる建物が崩壊し始めていた。

 宮殿に残っていた宮廷魔力者たちは戻ってきた私に驚き、何やら密談し始めた。

 アステリア王が、此処まで残虐だったとは、私は絶望の中にいた。

 従姉妹はアステリア国に嫁ぎ、私自身アステリア王女との縁談話があったぐらい親交のあった国。

 そんな国が街を壊し宮殿を崩壊させその屍に火を放っていくとは、想像出来なかった。

 なぜ?どうして?

 そんな久慈たる思いの中、宮廷魔力者たちに連れて行かれたのが、召喚の間だった。

 

『このままでは、王子は惨殺されることになるでしょう。ホホロ王族の血を絶すわけにはいきません。宮殿の魔力砲は破られ、もう私たちに残された魔力もわずかばかりです。今のお姿ではそれが、無理なのです。王子、五年後ならば国も穏やかになっているはず。例え我々が息絶えホホロ国は消えていたとしても、王子が復活させるのです。ホホロ国を!』


 魔力者たちが魔法陣を唱え、気がついた時には異世界に転移させられていた。

 小人のような姿で。

 

 私が転移したのは、一番平和で安全な場所が選ばれていた。

 だが、私は小人の姿だ。

 成す術もない。

 途方に暮れていたが、何処にでも親切な者は居るようだ。

 ミドリが私を保護し助けてくれた。

 篭に入れ黄色い布を被せ、色んな場所に連れて行ってくれた。

 デンシャという魔法の乗り物や、涼しくなったり暖かくなったりするエアコン魔法や美味しい食べ物が出来あがるレンジ魔法や、豊かであらゆる魔法に溢れている不思議な世界だった。

 五年が過ぎたある日、私の体は光に包まれ魔法陣が発動した。  

 気がつけばホホロ国の宮殿の中にいた。

 これが私に起こった出来事だ。

 強力な魔力があれば元の姿に戻れると告げられている。

 今はまだ、小人のままだが。


 

 

 

 

 

 

 

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