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セダレさん。

 何となく、予感めいたものがあった。


「もしかして、セダさんですか?」


 私はリュックの中から、青い石のペンダントを取り出す。


「これをアジ婆さんからお借りしてます」


 まぁ。と、お婆さんは、目を見開く。


「アジは、元気かね?」


「はい。とても元気です」


 私はニッコリ微笑む。

 ポニーちゃんを食堂の娘さんに預けて、セダレさんと一緒に店内へ入った。

 まだ夕食時には早いのか、お客は誰もいない。

 カウンター席と、長いテーブルが四つ並べられ、背もたれの無い丸椅子が置かれている。

 私たちは、一番奥の長テーブルに席を取った。


「おススメは何ですか?」


「今日はホロ肉のステーキとクーワと卵のオムレツがお奨めですよ」

 

 愛想の良い女将さんがオーダーを取りに来る。

 どちらも、美味そうな響きだね。


「お肉ー!お肉ー!」


 ホトちゃん、わかってるから。


「じゃぁそれを人数……、セダレさんはどうですか?」


「私はオムレツだけでいいよ」


「じゃあ、お肉を4人分とオムレツ5人分とお水を下さい」


「はいよ」


 先に水が運ばれてくる。


「ミーナちゃんは、私と半分コにしようね」


「はい」


「シロも半分コにする~」 

 

 シロよ。本当にいいのか、半分で。


「ふふ。仲良く旅をしてるんだね」


 セダレさんが、微笑ましそうに優しく笑う。

 アジ婆さんより体格も良く、見た目も違うのに、笑うと雰囲気がそっくりになる。


「同じ魔力を使う人は似てるのかな?ダイさんとキラさんも似てたし……あ。二人は親子だった」


「私とアジが似てるかね?」


 声に出ていたみたいだ。


「笑った感じが似てる気がします」


「そうかい。そうかい」

 

 満足そうに頷くセダレさんに、私たちは、モミジホシ団のメンバーを紹介しあった。


「セダレさんはこの村で暮らしているのですか?」


「そうさ。アジに一緒に行こうと誘われたがね。オリバー村で働く娘が行かないと言うからね。この村に住んで五年になるよ。アジたちと別れてからずっとさ」


「水魔力の方は村にとってもありがたいのではないですか?カイーコ村は大変そうでしたよ」 

 

 井戸からのバケツリレーを思い出す。


「あの村はダラスが死んでから、魔力者がいないからね。戦争のせいじゃないよ。寿命で亡くなったのさ。水、火、造成と、三つの魔力持ちのスゴいじぃさんだったがね。偏屈でね、宮廷が嫌いで田舎に隠っちまったのさ」


 三つの魔力持ち。

 それは凄そうだ、私の面白4魔力とは重みも違いそうだ。


 女将さんが、料理を運んでくれた。

 テーブルの上に並べられる。

 アツアツの湯気があがって、食欲をそそる。

 親切な女将さんは、低い台を用意してシロ用に料理を置いてくれている。


「美味しいな。美味しいな。お肉~は美味しいな」


 もうすでに、ホトちゃんのお肉は半分に減っていた。


「ちょっとあげる」

 

 ジュウが六等分したお肉を一切れ、ホトちゃんのお皿に入れた。

 ホトちゃんがジュウを尊敬の眼差しで見ているよ。 


「目的はホホロの都かね?」


「都にも行きたいのですが、妖精の森を目指しています」


「グリーンランドのあんなとこまで!」


 セダレさんは本気で驚いていた。


「せっかくなので、オリバー村で織物の見学をしていこうと思っています」


 そうかね。と、セダレさんが頷く。

 

「それなら、娘の仕事場に明日連れて行ってあげよう」


 私たちは、とろ~り卵のオムレツもジューシーなホロ肉のステーキも完食した。

 宿屋をたずねたら、泊まってお行きと、誘われる。

 もちろん遠慮したが、アジ婆さんの話しがもっと聞きたいからと、強引に誘われた。

 私たちは、感謝しながら、セダレさんのお家に向かった。

 

 あ。料理代は私が払いましたよ。

 お金は大切にしな!と、固持するセダレさんの分も合わせて300ペニ。

 残金は、1110ペニになった。

 懐が一気に寒くなったね。

 旅の途中で商売でもするかな。

 物々交換も可能だと、さそり男のレイザさんは言ってたし。

 そんな事を考えながら、セダレさんの後を歩いていると、石造りの大きなお家の前に着いた。


「ここが、私の家だよ。娘と娘婿と孫たちと弟子たちと、大勢が住んでいるから。さぁ、遠慮しないで入りな」


 セダレさんに促されて、アーチー型の門をくぐった。


「おかえりなさいましー」


「おつかれさまでしたー」


 茶色い上下を着た色白の小柄な男性と丸顔の女性が出迎えてくれる。

 二人共、若く見える。

 10代後半くらいかな?


「内弟子のソボロとココノだよ。こちらは、アジの知り合いのお客様だ。魔力者さんだよ。滞在している間、お前たちも勉強させてもらいな」


 ソボロさんとココノさんが、深くお辞儀をする。

 私もペコペコやり返す。

 セダレさん、スゴい眼力だね。

 私の魔力がわかるんだ。 

 感心していると、フフフと笑われた。


「モモさんたちが、村に入った時から感じていたよ。膨大な魔力の塊が近づいてくるんだ。驚いたよ。行ってみれは、白竜様とワヒーラさんとモモさんが居たからね。なる程と思ったよ」


 そっか、三人分合わさると凄い魔力になるんだろうな。


「今は、ダダ漏れだよ。強い魔力持ちには関知されるだろう。それは決して良いことばかりじゃないよ。アジから魔力コントロールの仕方は習わなかったのかい?」


「ダイさんに指導頂いてました」


「そうかい。それなら、すぐマスター出来るだろう。コントロール出来るようになって、都を目指した方がいい。まだ都は荒れてるからね」


 セダレさんの提案に感謝する。


「よろしくお願いします」


「シロもガンバルよ~」


「オレサマには、コントロールなど屁でもない」


 ん?

 こうして私たち一行は、セダレさん宅にお世話になることにした。

 





 



 

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