目指せオリバー村。
カイーコ村でクーワの実とメーメの干し肉を補充した。
丸っコちゃんたちも勧められたのだが、干からびた丸っコちゃんたちよ……。
OH!NO~。
流石にそれは丁寧にお断りした。
「オリバー村までは戦火を逃れてます。そこから先はひどいもんで。第三王子のアンドリュー様のお陰で、復興もだいぶ進んだのですが」
「アンドリュー様、ご無事だったんですね」
ミーナちゃんが涙ぐむ。
人気のある王子様なのかな。
「アンドリュー様はデッカイ鷹を操る。鷹王子様なんだぜ!」
自慢気にジュウが言う。
「なので、オリバー村までは安全に行けるでしょう。今は、都の方が治安が悪くなっています。お気をつけください」
トーヤさんのアドバイスにお礼を言う。
ホトちゃんが消火した果樹園は、葉はカイーコの主食に、果実は村人たちの主食になる大切な樹木だったようで、融通してもらった食糧の代金を受け取ってくれない。
暫し考えて、タオルを三枚プレゼントすることにした。
「これは珍しい触り心地ですね」
「水分を吸収します。糸のことは私も解らないのですが、何かの参考になればと思って」
トーヤさんは、タオルを気持ちよく受け取ってくれた。
村人たちに見送られ、私たちは出発した。
「オリバー村には、夕方までには着くと思います」
ミーナちゃんと手を繋いで歩きながら、オリバー村の話をする。
「オリバー村は都会です」
「村なのに都会なの?」
「都以外は全部村ですよ?」
「そうなの?ホホロ国に村は幾つあるの?」
「んー。いくつでしょう……?」
ミーナちゃんが考え込む。
「21。消えた村がなければ21ある」
ジュウが答える。
一村100人として、2100人?
そんな国ないよね。
「オリバー村は、どのくらいの規模なのかな」
「キボ?」
「何人くらい住んでるの?」
「2000人はいると思います。3000人かも」
え?2000人?3000人?
いきなり数が増えたね。
「大きな村なんだね」
「はい。織物をしている村なので沢山の工房があります。買付の人も来るので商店も沢山あります。だから仕事の数が多いんです。他の村からも出稼ぎに来ます。都はもっとスゴいですよ」
「都はどれくらいの人がいるの?」
「数えきれないくらいだよ。王様も兵士も貴族も商人も獣人も、ウジャウジャいるぜ。街の数も100以上ある」
なるほど、一都市集中型か。
「ながーい塀で、ホホロ都を守ってるんだ。オレたちもそこで暮らしてた。そこが……攻められたんだ」
そうか。
故郷に帰りたいけど、不安だよね。
「第三王子様が頑張ってるって言ってたね」
明るい話題をふってみる。
「そうだ!アンドリュー様がいる。カイーコ村でも糸の生産が出来てた。織物国ホホロは大丈夫だ!」
「そうだ!そうだ!」
シロとホトちゃんが間の手をいれる。
ヒヒ~~ン。
ポニーちゃんも鳴いた。
オリバー村に着いたのは、空がオレンジ色に染まる頃だった。
平屋作りの木の家が建ち並び、野菜や果物を置いてあるお店も、洋服や糸が陳列されているお店もある。
ガンガンと大きな音がする方へ行くと、鉄を叩いて火花が散っている。
鍜冶場だ。
職人さんたちが汗をかいている。
こんな賑わった村なら、宿屋もありそうだね。
店先で、若い娘さんが芋を蒸かしている。
「こんにちは~」
私はにこやかに声をかける。
「ここは食堂ですか?中で食べられます?」
芋をひっくり返していた娘さんが、菜箸を持ったまま固まっている。
もしもーし。
そう、村は活気づいている。
沢山の人の往来がある。
そして、ポニーちゃんの手綱を引いて歩いているモミジホシ団一行を見て、一様に驚いている。
そっと、道を譲られる。
ワヒーラのシロと白竜のホトちゃんが、珍しいのだろう。
私にしてみれば、なめくじ男やさそり男さんの方が衝撃的だったけどな。
ホトちゃんと、シロは流石大物だよ。
注目を浴びているのに、臆することもなく、むしろいつもより大きくお尻を振ったり、フワフワと高い所まで浮かんだりしてサービスしている。
「ど、どうぞ中へ。食事も出来ます」
娘さん戻ってきたねぇ。
良かった。良かった。
「もし、旅のお方。良ければお話を聞かせてもらえませんか?」
声をかけてきたのは、薄紫のワンピースを着たお婆さんだった。
胸に掛けられた青色の石のペンダントが夕日に反射して、キラリと光っていた。




