Ⅵ─日常への帰還─
今回で最終回です。
短かったですね(笑)
次回はもっと続けてみたいです。
では、お楽しみいただけると嬉しいです(^◇^)
「え……」
さすがにアクアリウスも困惑する。
先程まで目の前から飛びかかってきていた穣が、姿を消したのだ。
逃げも隠れもできなかったはずなのに、どうやって?
「油断大敵、だな」
いきなりした声に振り向くが、遅かった。
何かに宝玉を奪われた。
それだけ取ると、それは離れていく。
この状況下でそんなことができる人は、1人しかいない。
「穣……お前、どうやって!?」
アクアリウスの問いに、アリスが答える。
「聞いたことがあるわ……星座の化身の子供は、普通その力を受け継いで生まれてくるの。でも、極稀に全く別の力を受け継いで生まれてくる者がいるらしいわ。それが彼小見穣……獅子の落とし子が獅子の子供……こじし座として生まれてきたようね。その能力は"スコトス"。闇に紛れる力よ」
闇に紛れて姿を消したというのか。
そんな疑問をアクアリウスは抱くが、アリスは続けた。
「さて、宝玉も取り戻せたことだし、私は今からそちらに行くわね」
言うが早いが、アリスは通信を切った。
銀色の球体がゆっくりと上昇し、発光した。
無数の光の粒子が人の形に集まっていく。
だんだんとそれはリアルなものとなり、最終的に輝く粒子は四方八方に散った。
先程まで光のあった場所には、代わりに少女の姿があった。
輝く銀色のロングヘアー。
透き通る碧眼。
しかし、片方には包帯が巻かれていた。
「穣」
名前を呼ぶ声で、不覚にも見とれていた穣は現実に引き戻された。
「本当にありがとう。おかげで死なずに済んだわ」
柔らかい笑みに穣は頷く。
「アン、リエ、迷惑をかけたわね。リエ、今治療するから。でも……泥棒は逮捕しなきゃね」
アリスは真剣な眼差しをアクアリウスに向ける。
片目の包帯が衣擦れの音を立ててほどかれた。
アリスのその目には、光がなかった。
もう片方とは比べ物にならないほど、生命の欠片も残っていなかった。
「紅の星々よ、我に力を貸したまえ!」
声に答えるように、赤い光が集まってきた。
アリスはそれらを光のなかった目に集めた。
「私の力は"カスレプティス"……肉眼に映る世界を変える」
アクアリウスめがけて、燃え盛る炎が噴出された。
アクアリウスはその後、みずがめ座から出られなくなってしまったらしい。
リエとアンはアリスが無理矢理星座へと帰した。
「穣……本当にありがとう」
アリスは何度も何度も頭を下げた。
「いいよ……そうだ、アリス」
「何?」
アリスはきょとんと穣を見る。
「……こちらこそ、ありがとうな」
穣が笑顔で言うと、アリスはおかしそうに笑った。
「変な人。私が助けてもらったのに。でもまぁ……どういたしまして」
言い残し、アリスも星座へと帰っていった。
こうして、穣に今まで通りの日常が戻ってきた。
アリスに出会う前と変わらない、普通で平和な日々だ。
変わったことといえば、クラスの男子・明坂の記憶が曖昧なことぐらいだ。
宇宙に星座の化身に関する記憶を吸いとられたらしい。
本当に平和な、普通の日々だ。
でも、何かが足りない気がした。
別にスリルとか非日常とか、そんなものが欲しかったわけじゃない。
自分の心が理解できないまま、1週間が過ぎようとしていた。
気づけば、空は茜色になっていた。
帰宅部の穣はまっすぐ家に帰ってきた。
ポストを開けると、見覚えのないメモ帳が1枚、放り込まれている。
少し水色がかった綺麗な色の紙だ。
『またお世話になるかもしれないわ』
メモ帳にはこう書かれていた。
不思議に思っていると、背後から声がした。
「協力して、くれるわよね?」
1週間ぶりの銀髪が視界に入ってきた。
いかがでしたでしょうか?
尻切れ蜻蛉ですね(笑)
これからも読んでください!